152_何もない僕でも英雄になれる気がして

生まれて見たこともない誰かが殺されて

いつの間にか憎悪が脳裏に焼き付いてて

今僕が殺そうとしてる目の前の人は

おそらく生まれてから見たこともない

誰かを殺した人のせいで殺されるだろう


これで国に帰れば僕は英雄で

これで国に帰れば彼は英雄で

生きようが死のうが皆が英雄になれる


英雄っていう称号は何もない僕にとって

国から貰える最大の祝福なのだろう

僕もまたその祝福を振りかざして

彼の分まで人生を全うするなんて言って



そしてやがて何もできない

身動き取れなくなってきて

僕は英雄でもなんでもなかったと気づく


でもその頃には僕の周りが英雄でいろと

どこかで見たことのある目で訴えてきて

それに抗う力も気力もないから

最後まで英雄を演じて死んでいく



そんな話を誰かがいろいろ加えて書き残して

海を超えて山を越えて時を超えて

ある国では英雄と褒め称えられて

ある国では英雄として憎悪の材料




また何もない誰かが英雄になりにいくんだろう

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