散文集(151~175)

ごこちゃん

151_母の味

母を見送ってからしばらく経ったある日のことだった

ふと母の味が食べたいと思い立ち、台所に立った

母がよく作ってくれたのは安いソーセージと野菜の切れ端の炒め物

醤油とみりんと少量の砂糖で作る甘めな味

普段から料理を作っている僕には朝飯前な難易度の料理

もちろんすぐにできた

うまそうだ


今までに何度もこの料理を作ったことはある

母が作っているのを見てレシピを覚えて

母が帰ってくる前に一人で作ったこともあった

けどやっぱり母が作るほうがおいしかった

今日はどうだろう

超えられるだろうか



母が作ってくれたものよりもおいしいと感じてしまった



いやそんなはずはない

まだまだのはずなんだ

母の味はこんなもんじゃないはずなんだ



おもいっきり塩コショウを振って味を濃くする

塩辛くて食べれたもんじゃないなこれは

そうだこのまずさが私の味なんだ

まだまだ私は母の味には遠く及ばないんだ

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