Chapter 48 初めてのデート

セバスチャンの店で装備を整えた俺とルナは店を後にし王国内を闊歩する。傍目では呑気に歩いているように見えるが俺の心は穏やかではない。外套で隠れてはいるがルナは今童貞殺しの服を着ている。このエロい身体にあの服だよ?もうたまらんよね?早く拝みたい。堪能したい。ていうかアナスタシアたちと約束した2時間よりもまだ全然早い。装備があっという間に揃ったから時間がたっぷり余っている。これなら安眠屋に戻ってルナを襲っても大丈夫なのではないだろうか?別に風呂なんてどうでもいいし。ていうかさっき入ったからな。何より少しぐらい臭った方が興奮する。そもそもルナは助けに行った時だって臭わなかったしな。なんかいい匂いしかしなかった。拷問されてた時のルナ思い出したら余計ムラムラしてきた。よしヤッちゃおう。初めてのレズセックス。


そんな事を悶々と考えているとルナが一瞬とある店の前で立ち止まった。でも俺と歩幅を合わせるようにすぐ小走りで歩き出す。俺はそれを見逃さなかった。だがどうでもいい。変なイベントを発生させて時間を取られたら堪らない。早くルナをホテルに連れ込むんだ。助けてやったし装備も買ってやったし金もやった。俺の誘いを断れないだろう。デュフフフフ。ルキナには悪いがルナから可愛がってやろう。なあに心配するな。ちゃんとルキナも可愛がってやるさ。



「ルナ?どうしたの?」



俺がトリップしていると、キレカワが勝手に足を止め口を開く。

おいてめえ!!何やってんだ!!!やめろ!!!イベント発生させんな!!!



「ううん…、なんでもない。」



俺はルナが見てたであろう店をチラリと見る。スイーツ店だ。こんな店あったんだな。俺は甘い物とか興味無いから眼中になかった。なんだルナは甘い物が好きなのか。そうか。また後で買ってやるからな?とりあえず安眠屋急ご?



「装備揃えるの早く終わったからまだ1時間以上時間余っちゃったね。それじゃ時間つぶしにココ入ろっか。」



そう言いながら軽快な足取りでキレカワは、スイーツ店の前まで来て左手の親指で店を指している。

おいやめろマジで。せっかくのチャンスを潰す気か。お前だってルナとヤリたいだろ?気持ちよくなりたいだろ?な?悪い事言わないからやめとけ。誰も幸せにならない行動はやめろ。



「いや…でも…」



ルナは落ち着かない感じでスイーツ店と足元を交互に見ている。お前そんなにスイーツ食べたかったのかよ。確かに美味屋には甘いものはなかったな。アナスタシアもルキナもそんな事は言わなかったから気にもしなかった。女はやはり甘いもの好きなのだろうか。いやいや、今はそんな事どうでもいい。ルナがハッキリしないならスイーツはいらないって事だ。はい、話は終わり。ホテルへゴー。



「食べたいんでしょ?なら入ろうよ。」



テメエマジやめろ。しつこいって。しつこい奴は嫌われるって。な?やめろ?頼むから。



「でも……今は……」


「あーもう。」



キレカワはルナの元へと近づき手を掴んで強引に引っ張っていく。



「ちょっ…!?リン…!?」


「そんな食べたそうな顔してるのをスルーしたり出来ないでしょ。」


「そ、そんな顔してない…!!」


「本当にルナは素直じゃないよね。お姉ちゃんは大変だよ。」


「う、うるさい…!!それに何がお姉ちゃんよ!!」


「食べたいんでしょ?なら食べようよ。私も食べたいし。」



いや、俺は食べたくない。俺はルナを食べたい。ルナの甘い蜜なら吸いたい。



「……食べたい。」


「まったく。ほら、行くよ。」



ルナは頷くだけで下を向きながらキレカワに連れられてスイーツ店に入って行った。


……マジかよ。




********************




俺はがっくりと項垂れている気分なのだがキレカワはピシッとした姿勢でメニューを見ている。ルナに至っては前のめりになってメニューを見ているからフードが浅くなって顔が見えている。可愛い。いやいやそうじゃない。ダメだろ。ピンク髪も見えてるよ。ちゃんと深く被れ。バレるだろ。


つーか美味屋でもそうだったけどメニューにある料理名から実物が想像出来ないんだけど。この【 フェラリーナ 】とかヤバそうじゃない?なにこれ。ここっていかがわしいお店なんじゃないの?お口でしてもらえるお店なんじゃないの?

こっちの【 パイパニアン 】もヤバくない?絶対ここヤバい店だって。


美味屋よりひでえや。もう何頼んだらいいかわからない。逆に変なの頼んだら屈強な男が現れてこっちがサービスしなきゃいけなくなったらどうしよう。その時は俺がなんとかしよう。ルナにそんな真似はさせられないし、させたくないし、見たくもない。それでこの剣で首掻き切って死のう。



「ねぇ、ルナ。コレさ、どんな料理かわかんないんだけど。」


「え?あー、そっか。リンはここの世界じゃない所から来たんだもんね。えっと、リンのいた所でこういう店ってあった?」


「あった。」


「じゃあ、リン的にはどんなものが食べたい?」


「私はパフェが食べたいかな。」


「ぱふぇ?それってどういうの?」


「冷たい甘い白いのが縦長で細い感じのグラスみたいな容器に入ってて、その上から甘い黒い液体がかけられていて、果物とかが乗ったりしてるやつ。」


「あー、パラポラーナね。」



なんかパスタみたいなネーミングだな。



「甘い黒い液体って固形になってるのとかもある?」


「あるある。」


「それはトットだね。トットパラポラーナ。」



チョコの原型すらないな。



「パラポラーナは他にもベリリがかかったものや、ニガミドビッシーを混ぜたものとかもあるよ。」


「それは向こうにもあったよ。それじゃ同じなんだね。なら私はトットパラポラーナにしようかな。」


「なら私はベリリパラポラーナにするわ。」



俺は店員のお姉ちゃんを呼んで注文をする。パフェが来るのを待っている間、俺はルナとレズセックス出来ない事を思って黄昏ているがキレカワは呑気にルナとおしゃべりをして楽しんでやがる。コイツ、ルナとヤリたくねえのか?やっぱり俺とは別人格なのだろうか。いや、仮にそうだとしてもコイツだってヤリたいはずだ。現にルキナとは結構ヤバい事だってしてるしアナスタシアにだって手は出している。それなのにこのチャンスを棒に振るとか意味わからん。


しばらくするとテーブルにパフェが届いた。地球というか日本と同じパフェだ。俺のはチョコレートパフェ。ルナのはストロベリーとブルーベリーの二種のソースがかかったベリーパフェ。



「ふーん。私の故郷と見た目は同じだね。フフッ、ルナ、何その顔。子供みたい。」



ルナは目を輝かせて幸せそうな顔をしてベリーパフェを見ている。スイーツ女子だな。将軍の雰囲気は皆無だ。



「う、うるさい…!」


「帝国では食べられなかったの?」


「仮にも将軍だからね。甘いもの食べてるの見られたら舐められる。だから隠れて甘いもの食べてたわよ。」


「じゃあこれからは堂々と食べられるね。」


「……うん。」


「フフッ、素直じゃん。」


「リン…!!」


「さ、食べようよ。」


「うん。いただきます。」



ルナは更に目を輝かせ幸せそうな顔でスプーンを持ちパフェを掬う。そしてそのままその卑猥な口へと運んだ。一瞬の間の後、目を瞑りニヤけ顔になる。



「ん〜!!美味しい〜!!」


「良かったじゃん。じゃ、私も食べよ。」



俺はあんまり食べたくないんだが。


それでもキレカワは容赦なくスプーンでパフェを掬って口へと運ぶ。

甘っまー!!甘すぎー!!チョコまであるから胸焼けする甘さなんだけど。



「ん、美味しい。」



美味しくねえよ。一口で胸焼けだわ。しょっぱいもの食べたい。ポテチ食べたい。



「でもちょっと甘すぎかな。三分の一も食べたら口の中甘くなってきた。」


「リンはそんなに甘いもの好きじゃない感じ?」


「んー、どうだろ。程々には好きだけど。」



いや好きじゃねえよ。俺は辛党なんだよ。



「このトットが甘すぎかな。」


「トットも色々な種類あるからね。ここのは砂糖多いのかも。」


「ルナのやつちょっとちょうだいよ。」


「いいよ。はい。」



ルナが容器ごと俺に渡してくる。お前甘いっていってるのにルナのも食う訳?やめてくれよ。感覚は共有してんだからな。もう胸焼け起こしすぎて吐きそうなんだけど。



「そんな面倒くさい事しないで食べさせてよ。あーん。」



そう言ってキレカワはルナに向かって口を開ける。貴様、それが狙いだったのか。恋人気分を味わいたいと。なるほど。だがそんなつまらない事よりレズセックスの方が価値あるだろうが愚か者め。



「急になに甘えてるのよ。」


「いいじゃん。ほら、早く。」


「まったく、しょうがないわね。はい、あーん。」



ルナが俺の口にパフェを持ってくる。もちろんルナの使ったスプーンでだ。間接キス。ちょっと前の俺ならこれでもドキドキしたと思うがルキナとヤバい事してるから特に何も……アレ?俺ってまだキスしてなくない?え?してないじゃん?この間接キスが初キスなの?え、なんか恥ずかしくなってきた。



「あ、美味しい。酸味がいい感じ。」


「でしょ?リンのもちょうだいよ。」


「いいよ。はい、あーん。」


「あーん。」



お互いに何の躊躇いもなく恋人のようにパフェの食べさせっこをしているキレカワとルナ。恥ずかしいの俺だけかよ。女ってこんなもんなのか。超恥ずかし……あ、やべ。見ちゃいけないもん見ちゃった。



「リンのも美味しい!でも確かにちょっと甘いかな?」


「だよね。もう少し控え目ならよかったんだけど。でもルナのと交互ならちょうどいいよ。」


「あ、本当だ。食べる?」


「食べる。あーん。うん、美味しい。ルナも食べる?」


「食べる。あーん。うん、いい感じ。」



……おい、キレカワ。もうやめとけ。お前わかってんだろ?


俺たちが座っている席は窓側の席。そこからは当然大通りが見える。という事は大通りからも見られているんだ。当然それを気にしなければいけなかった。



「北の方にもこういう店ってあるのかな?」


「あると思うよ?ていうより北はここより料理美味しいらしいから期待出来ると思う。」



というより俺はアイツの嗅覚というか執着心を甘く見ていた。大いに反省しよう。



「へー。それは楽しみかも。プリンとかあるかな。私、プリン大好きなんだよね。」


「ぷりん?なにそれ?」


「卵で作る甘いものだよ。上にキャラメルソースっていう苦くて甘いのがかかってるんだ。」


「なにそれ、美味しそう。北にあったら行ってみようよ。」


「そうだね。」



もう本当にやめておけキレカワ。話しながらナチュラルにお互い食べさせっこするのはやめろ。わかってるんだろ?窓の外にいるのが。窓一枚隔ててハイライト無くした目で両手を窓につき、ぶち破らんばかりのオーラを撒き散らし、呪文のようにブツブツ何かを言ってるヤンデレヴァンパイアガールがいるのが。




ーー




ーー





「なんで?なんでリンさんは他の女とそんな事してるの?私だってしてもらった事ないしした事もないのに。そもそもなんで私はこんな所を見させられてるの?私なんかした?リンさんに嫌われるような事した?リンさんはもう私の事嫌いなの?ねえ、どうなの?ねえ?ねえ?ねえ?」




その背後でアナスタシアが凄い顔をしてヤンデレヴァンパイアガールを見ているのを確認して俺はそっと目を瞑った。

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