Chapter 12 鑑定

パーティー申請を終えた俺とアナスタシアは承認されるまでの間に装備の鑑定をしてもらう為、鑑定課を訪れる事にした。

鑑定課は俺が思っていたものとはまた違っていた。他の課の役所感満載の様式とは打って変わって、骨董屋のような少し敷居が高い空間が形成されている。周りには剣や槍、杖に弓などの武器や、鎧や盾などの防具も置いてある。ここは店でも兼ねているのだろうか。


「ここって売ってるの?」


「販売はしてないと思います。鑑定待ちの分じゃないでしょうか?」


「え?すぐに鑑定してもらえるんじゃないの?」


「あ、ごめんなさい。ここに置いてあるのは買取希望の鑑定待ちなんだと思います。武器屋や防具屋でも買取は行っているんですがギルドよりは安いんです。なので必然的に順番待ちになってしまうからこうやって溜まってしまうんです。鑑定だけならすぐにやってもらえます。」


「なんだそういうことか。」


この後にダンジョン入る予定なんだから武器が無いなんてありえないからな。それだったら鑑定なんて必要ないし。ダンジョンで不要な武具を手に入れたら俺たちも売りに来る事になるだろうな。レートはどれぐらい違うんだろう。そういう情報も集めないといけないな。

俺たちが店内を見ていると奥から店主らしき爺さんが出て来る。


「買取希望の方ですか?」


「いえ…!鑑定をお願いします…!」


アナスタシアは爺さん相手でも男だと過度に緊張してしまうんだな。むしろその方がいい。他の男とヨロシクやってるアナスタシアを見ると気分悪いからな。


「わかりました。それではお品を見せて頂けますか?」


俺は腰に差してある剣を鞘ごと爺さんへと手渡す。この爺さんにパクられたらどうしよう。剣が無くても俺は戦えるのだろうか。


「これは…?」


俺の剣を見て爺さんが唸りだす。なんだ?偽物とかはやめてくれよ。なんちゃら鑑定団みたいに、ジャカジャン、千円!とかみたいな展開は嫌だぞ。

続いて爺さんは剣を鞘から引き抜き刀身を見ている。


「うぅむ…」


だから一体なんなんだよ。早くしてくれよ。アナスタシアまでオロオロし出したじゃないかよ。

すると爺さんは両の掌を開き、剣の前まで持って来ると突如青白い光を放ち始める。暫くして発光が終わると爺さんの背後にあるコピー機みたいな機械から何か書類のような物が出て来る。ファックスか?異世界にもファックスあるの?異世界感台無しだなオイ。

爺さんは鑑定をやめて書類を取りに行く。おい爺さん、さっさと鑑定やれよ。ファックスは後にしろ。


「うぅむ…!!やはり…!!」


もういい加減にして。もっと若い職員いないの?爺さん少しアレなんじゃないかな。


「鑑定結果が出ました。こちらになります。」


それ鑑定だったの!?爺さんとコピー機って連動型なんだ!?そもそも最初に剣を見てたのってなんなの!?初めからその青白い光出せば良かったよね!?

なんだか疲れた俺はさっさと結果見て帰ろうと思い、書類に目を通す。




・鑑定結果


ランク S


種別 剣


名称 神魔の剣


特殊効果 自身の身体能力上昇(中)、敵の身体能力低下(中)、剣の技能上昇(中)、魔力上昇(中)、敵を攻撃した際のHP吸収(中)、敵を攻撃した際のMP吸収(中)、敵に対し一定確率で麻痺の効果、敵に対し一定確率で即死の効果。




「お。Sじゃん。結構良いんじゃない?」


Sならまあまあ良いだろ。王国にある総本数と比べて当たりだと思うし。リセマラ出来ればSS出るまでやるけども死んでここに戻って来れるとも限らないしな。及第点ではあるが妥協しよう。


「け、結構どころじゃないですよ…!?相当凄い剣ですよ…!!こんなに特殊効果が付いてる武器なんてありません…!!」


「そうなの?」


「王国にあるS武器は特殊効果が2つ付いてます。SS武器ですら5つ付いているのと4つ付いているのしかありません。それなのにリンちゃんのは8つ付いてます。これは大変な事ですよ…!!それに即死持ちなんて初めて見ました…!!」


やたら興奮しているアナスタシアが可愛いが今は後にしよう。

数で考えれば確かにそうだな。でも効果が中上昇、中低下ばっかりだからな。いくら即死があっても、SSは恐らく効果が大なんだろう。そう考えるとどっちが上なんだろうか。効果をそれぞれ対比させてみないとわからないな。


「そちらの猫人族のお嬢さんの言う通りです。これはかなり凄い発見ですね。どちらのダンジョンで入手されたのですか?」


ゲッ…。困ったぞ。なんて言えばいいんだ?異世界転生の初期装備です、なんて言えるわけないよな。どうしよう。

俺が困っているとアナスタシアが手を差し伸べてくれる。


「あ…リンちゃんは東方から来たのでそこで手に入れたんだと思います。ですから王国管理下のダンジョンでは手に入れていません。ですよね、リンちゃん…!」


「うん、そうだよ。」


ナイスだアナスタシア。流石は俺の第二夫人。俺は聡明な女は大好きだぞ。褒美として夜はたっぷり可愛がってやるからな。


「なるほど東方からですか。それならば納得です。ギルドにいらっしゃるということは冒険者ですよね?」


「さっき申請して承認されました。それでパーティー申請をさっき出して来て、待ち時間に鑑定に来たんです。」


「そうでしたか。それならば問題無いと思いますが、王国で冒険者をされる方は装備に関しても王国付きとなります。」


「どういう事ですか?王国に没収されるって意味ですか?」


おいおいおい。そんなんなら黙ってないぞ。タダで何でそんなレア装備をやらにゃいかんのだ。


「いえいえ、そうではありません。他国と争いになったりした場合は王国軍として戦って頂くか、装備を貸し出ししてもらうという事です。」


「つまりは冒険者っていうのは実質王国兵って事ですか?」


「そうではありませんよ。争いに参加したくなければ装備だけを王国に貸せばいいだけです。もちろん貸出料はお支払い致します。」


なんか気に入らないシステムだな。装備奪って後から約束を反故にしたり、装備無しなら何らかの罪を着せて捕らえる事だって出来るじゃん。その制度には裏があるような気がして仕方がない。この王国の裏の顔も今後の調査対象にしなきゃならないな。


「わかりました。」


今は大人しく従うフリをしよう。ここで通報なんてされて拘束されたら洒落にならん。実力をつけて抗う術を身につけよう。


「防具の鑑定はどうされますか?あなたが身につけている服はただの服では無いように思えます。」


この中二の衣がか?ただのアニメ系制服の中二の衣じゃBにすら届かないんじゃないか?まぁ、タダなら損はないから鑑定するだけしておくか。


「ではお願いします。」


「脱がなくても袖だけ触れさせて頂ければ大丈夫です。」


当たり前だろ。何で俺が脱がなきゃいけねぇんだよ。このジジイ邪な事を考えてやがるな。超絶美少女に触りたくて仕方ないんだろ。このスケベジジイが!!

そうは言いながらも俺は我慢しながらジジイに袖を触らせる。何だか手つきがいやらしく感じる。何の拷問だよコレ。

程なくして先程同様に青白い光が現れるとファックスが届く。それを取りにジジイが退席し、ファックスを手に取り内容を確かめているとまたジジイが唸り出す。


「ま、まさか…!?こ、このような事があるなんて…!!」


もうこのくだり嫌。早く話を進行させて。

ジジイが急ぎ足でこちらへと戻り、凄い剣幕でファックスを渡して来る。


「ご、ご確認下さい!!!」


「あ、はい。」


心臓止まって死んじゃうんじゃないかこの爺さん。俺は面倒見ないからな。

俺は手渡された書類に目を通す。




・鑑定結果


ランク SS


種別 鎧


名称 神々の衣


特殊効果 自身の身体能力上昇(大)、各種武器の技能上昇(大)、魔力上昇(大)、物理ダメージ減少(大)、魔法ダメージ減少(大)、状態異常無効、即死無効、HP自動回復(大)、MP自動回復(大)




すっげーな。このSSのチートっぷり。素人でもぶっ壊れ性能なのわかるわ。あ、わかった。特殊効果のお陰で俺ってあんなに強かったんだな。納得。


「な、なんですかこれ…SSまで9個も特殊効果が付いてる…」


アナスタシアも開いた口が塞がらないって感じだな。その開いた口に俺の卑猥なモノをぶち込みたい。


「ふーん、結構凄いよね。」


俺は至ってクールに努める。努めるというか喋るとこんな感じになってしまう。この超絶美少女の身体に相応しいテンションに自動で矯正されてしまうのかもしれんな。


「結構どころじゃないですよ…!!国宝級ですよ…!!」


「そうなんだ。」


もうその話はいいよ。効果がわかれば十分だ。俺はダンジョン行きたい。ダンジョンでアナスタシアとイチャイチャしたい。この爺さんと一緒の空間はもういいって。飽きたよ。俺はアナスタシアとイチャイチャ出来ればなんだっていいし。

俺の興味なさげな態度を察したのか2人がなんとも言えない顔をして固まっている。


「で、では、装備の登録をさせて頂きますので所有者様の冒険者IDをご提示頂けますか…?」


興味を無くした俺はさっさと鑑定を終わらせて店を後にした。ちょうどパーティー承認もタイミング良く終わったので俺の初めてのお役所訪問はこれにて幕を閉じた。王国から呼び出しがあるかもしれないと爺さんが言っていたがどうでもいい。早くアナスタシアと暗がりダンジョンに行ってイチャイチャするんだ。

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