月のうさぎ

勝利だギューちゃん

第1話  バニーガール

夜空を見上げた。

ここは、大都会のど真ん中。

星は見えない。


ただ、月だけは輝いている。

その月の光が、とても冷たく感じる。


世の中というには、実に非情だ・・・

弱い者にではなく、嫌われ者に・・・


俺は嫌われ者だ・・・

友達がいない。

でも、それを寂しいとは思わない。

昔からそうだったので、それが当たり前だった。


月にはウサギがいて、餅をついているという・・・

昔話だが、本当だったら食べてみたい。

不味いと思うが・・・


今日は満月だ・・・


自宅に帰る。

アパートの一人住まい。

引っ越しの挨拶はしたが、それ以降は交流がない。


面倒くさいだけだ・・・


玄関のドアを開けると、女の子がいた。

「お帰り」

「すいません。間違えました」

ドアを閉める。


確認したが、間違いなく俺の家だ。


「お帰り」

女の子がいた。

バニーガールの格好で・・・

上から下まで、バニーさんだった。


「あのう、どうしてここに・・・」

ぶっきらぼうに訊いた。

「君が呼んだんでしょ?私を・・・」

「俺は、あんたを呼んでないが・・・」

「食べてみたいんでしょ?月のウサギのお餅を」

「えっ?」

わけわからない。


「あんたが、月のウサギというのか?」

「そうよ、でも普通じゃ怪しいから、この格好出来たの」

いえ、余計に不審です。


「さあ、何でも作るわよ」

「何でも?」

「餅料理ならね」

まさかこねる気か?


「大丈夫、月でこねてきたから・・・」

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