そして闇を抱く

歌舞伎ねこ

第1話 小白

 わたしが最後に見たのは、お兄ちゃんの胸にナイフが刺される光景でした。

 刺されたお兄ちゃんがその場に倒れると胸から血が溢れ出しました。

 その近くにはお父さんとお母さんも血を流して倒れていたんです。

 それを見て気を失った私を、誰かが優しく抱きしめてくれました。

 その誰かの腕はとても暖かくて、わたしはほっとして眠りにつきました。

 あの事件のことで覚えているのはそれだけで、あとはすっかり忘れてしまいました。

 でも不思議ですよね。

 家族全員を失った最後の記憶が、嫌な思い出じゃないなんて。


 あれから三年経ってわたしは高校生になり、そして恋をしました。




















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