第267話 来世は絶対お兄ちゃんになる
女神様と二人っきりになるのはクロエを見つけた時以来だろうか。柄にもなく緊張しておりますが女神様の可愛さが留まる事を知らないので俺のテンションは非常に高まっている。推しと一緒に歩けるって天国と地獄感あるよね。
めぐとしてじゃなく女神様としてだったらたぶん一緒には歩けなかっただろう。恐れ多くて流石に一歩引かねばならない。三歩後ろを頭を下げて地面を見ながら歩く必要がある。しかしめぐである以上、そして女神様という立場からも認められてしまっている以上、俺は隣を歩くのを義務であり権利であると思っている。自意識過剰かもしれんが。
初めて会った時は弱弱しくて手つないだり肩車とか平気でしてたけど、こうやって元気になっためぐと二人きりで歩いていると意識しちって照れますわ。
「お兄ちゃん?」
「可愛いよ、めぐ」
「……そういうの私には言わなくていいです」
ぷいっと顔背けるの可愛いなめぐ。なんか最近めぐが俺に対してだいぶフランクになって来てるの凄く嬉しい。本当に妹出来たみたいで心がぽかぽかします。俺、来世は絶対お兄ちゃんになる。
とかなんとかめぐを可愛がりながら歩いていると目的の場所に着く。そこにはやはりノイズが走りまくっているダンジョンの入り口があり、俺の目からするとやたらと浮いている。めぐにはどう見えているのだろうか。
「お兄ちゃん……これは……」
そしてそれはめぐの目から見ても同じようで結構ガチな感じで驚いている。具体的には顎に手を当ててかなりの思案顔、そして何やら周りの状況を窺っている。え、そんなにやばいのこれ?
めぐはそのまま近くにあるダンジョンも外から覗いてみてなんかめっちゃうろうろしてるけどどうしたの? これ見つけちゃいけない系のダンジョンなの?
疑問は尽きないがめぐがする行動に無駄などあるはずがない。というわけでめぐが落ち着くのを待っていると気が済んだのかマジな顔でこちらに話しかけてくる。キリっとしためぐ可愛い。ぶっちゃけ服装がそれを台無しにしてるけど。
「お兄ちゃん、これ、ダンジョンじゃないよ。あと普通の人には見えないし私達しか見えない」
「まじで?」
「まじまじ。いや正確にはダンジョンになるけどまだダンジョンじゃないっていうのが正しいかな? でもこれここに出来たらちょっと難易度高すぎるし危ないからつぶそう」
「お、おう」
めぐがいつにもなく好戦的。これはめぐっていうより女神様的な考えによって行動してる感じがするな。じゃなきゃぁこんな真面目顔しない。基本的に女神様は今まで見ていたようにさぼりたがりだったし、めぐになってからもそれは変わっていない。気の抜けた顔も可愛いよ。
なのにこんなに積極的に動いてやばいものを排除しようとする動き、完全に人類保護するムーブですわ。凛々しいめぐも好き。でもめぐ戦える? あかねに守ってもらってたって言ってもたぶん少しは戦っただろうし、俺を殴った時のような技は使えないんじゃなかろうか。
その疑問を投げかけると女神様はきょとん顔をしてこう言ってきた。
「お兄ちゃんがいてくれれば私はいつでも元気だよ?」
俺のヒットポイントはゼロです。
えぇ……? みんながいなくなるとこんなにデレてくれるのぉ……? 俺もうめぐと二人きりになる時間いっぱい作る!
という感じでだらしない顔をしているとめぐは自分が何を言ったのか理解してちょっと顔が赤くなる。そして言い訳を始めた。
「えと、あの、信者一号が私に力をくれるのは前の世界でも一緒で……その、近くにいれば信仰心が心地よくて神気がたまるというかですね……なんというかそんな感じなので、うん、行こ」
「はい」
なんだこのヒロイン、デレデレやん。ぶっちゃけ言い訳というかただの補足説明であってむしろこっちが照れるわってくらいの勢い。そして何言って良いか分かんなくなって先に進むところとかポイント高いわ。めぐじゃなくて女神様として発言してるのも照れ隠し感あってグッド。
まじ愛おしいわ。絶対どこにも嫁にださねえ。めぐの面倒は一生俺が見る。
「ちょっと本気で行きますね」
「そんなに? じゃあ俺もそうしよう」
しかしダンジョンもどきの中に入るとめぐはうっすらと体に神気を纏う。それだけで周りの空気は正常化され俺達の周りに清浄な空間が出来上がる。もし魔物が俺達を見つけてもこの空間に近づくことはないだろう。近づいた瞬間溶けるくらいの力強さを感じる。
なので俺も守護も不屈もほぼマックス状態まで高めておく。めぐにも守護の光を使って守ろうとしたが、神気がそれを上回っているようで発動出来なかった。あれ、もしかしなくてもめぐやっぱ最強なのでは?
めぐが先行しているのでちょっと不安を感じるが、その頼もしすぎる小さい背中に人生を捧げたくなる。神気と相まって俺の信仰心は限界突破して大気圏を突き破りこの世界全てを包み込んでしまいそう。
「……」
「いかがなさいましたか?」
「女神様じゃなくて、めぐとして接して欲しい、かな」
「おっけ」
いかん。そう言えばそういう設定だったな。あまりの神々しさに精神トリップを引き起こしてたわ。ちょっと寂しそうな目で見られたから正気を取り戻したけど、俺の女神様への信仰心は欠片も減っちゃあいないぜって言うのを体感してもらえたみたいでちょっと嬉しい。
でも寂しそうなのはどうしてなのか。俺が一線引いてるような態度だからか、それとも同じ仲間として認められていないとでも思っているのだろうか。決してそんなことはないのに。守りたいと感じるこの気持ちは皆に対する気持ちと一緒だ。ただ、それが皆に向けるのよりちょっと強いだけで。
悶々としながらも二人で警戒しながらダンジョンもどきを進んでいく。想像通りに中は魔素が濃いが、どうにも工事中感が否めない。これからダンジョンになるってところにいるのは貴重な体験かもしれない。
とか考えながら歩いていると奥から声が聴こえてきた。
「なんでわしがこんな事をしなくちゃならんのじゃ。全く番犬はどこに行ったのやらって感じじゃが、もう少しで終わりじゃな」
若干舌足らずな感じで聴こえてくるのはまごう事無き幼女の声。しかし、のじゃロリか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます