第262話 凶悪な存在

「んと、これで大丈夫かな」


 めぐがイリスに少しの間触れていると、イリスの髪の色は徐々にいつもの銀色に戻っていった。ぶっちゃけかなりダメもとで頼んでみたけど流石のめぐである。大体の事なら何でもどうにかしてしまう凶悪な存在だということを再認識できたわ。


 もう勇者とかいらないんじゃなかろうか。めぐを直接ぶつけたほうが魔王にプレッシャーもかけられるしすぐに終わりそうな気がする。めぐの事守りたいからそんなことしないけど。女神様にはどっちかっていうと見守っていてもらいたいので相当な事が無ければ戦闘に参加してもらうことはないだろう。


「それでこっちも……」


 そのままめぐはフラフィーにも触れる。何かしら神聖な力を放出していると、フラフィーから出ていた濁っている守護の光は収まっていった。めぐなら加護を与えた本人だし戻せると思っていたけどまじで戻せるとは流石のめぐである。


 俺、女神様の事一生崇め奉るわ。毎日感謝を言いたい。一日の内二十時間くらいは感謝捧げる時間で残りは一緒に睡眠とるみたいな生活を繰り広げたいわ。


「ふぅ、おわったよお兄ちゃん」


「まじでありがとう。めぐのおかげで惨劇は回避されたよ」


「流石にそれは大げさなんじゃないかな……?」


 めぐはそう言うけど俺は絶対大げさじゃないと思う。普通に考えてこいつら頭おかしいし俺にダメージ与えるのを悪いとも思っていないし暴走してたからたぶんやる。死にかけるのは慣れたけど根に持つよ俺は。色々な意味ですぐ癒されるからトータルプラスで嬉しいから正のループだけど。


 なんかもう情緒が安定しなくなってるのは良いんだけど肉体的にも結構どうでもよくなってきてるな。悟りを開いてもおかしくない境地に達してると思う。


「ところでお兄ちゃん、このあとみんなでダンジョン攻略を続けるの?」


「そうだな……」


 俺がダンジョン攻略をするのは一応みんなのスキルを強化したかったからというのがある。実際にルカのパーティは順調に強くなっているみたいだし俺達も少しくらい強化しておいた方が良いような気もする。


 しかしだ、前の世界で最後にダンジョンを攻略した時スキルの強化のアナウンスが聴こえなかった……ってそういえばあれってめぐに聞けば何かわかるんじゃないのか。


 というわけであのシステムメッセージみたいな音声や文字についてちょっと聞いてみる。


「へぇ……うん、でもそれは言えないんだごめん。物理的に言えなくなってるんだよね。女神の力を無理やり取り戻してはいるんだけど、天界に関わる話については喋れないようになってるの」


「その割には天使みたいな後輩普通に色々喋ってたな?」


「それはそれ、これはこれ」


 これめぐ喋るのめんどくさいだけじゃないだろうなまじで。この女神様はさぼる事にかけてはだいぶ本気だしめんどくさいことはすっ飛ばしたりするからな、もうほんとどうしようもない。でもそんなところも好き。


 なんだかんだで決めるところは決めてくれるし、俺達の害になるような事だったらちゃんと教えてくれるだろう。言えないと言うなら素直にそう受け取って置くか。あと一応めぐは知っているという裏はとれたからそれもよし。俺の幻聴じゃなくて良かったわ。


「それなら一応ダンジョン攻略……屑鉄の所だけちゃんと攻略終わらせておくか。スキルが強化されるなら嬉しい話だし、されないなら他の連中に譲ろう」


「そだね」


 ルカは言っていた。フラフィーもイリスもやばすぎると。転生特典と女神の加護の力が勇者の力を上回っているなら、他の勇者達の強化にダンジョンは使ったほうがいいだろう。


 ダンジョン攻略を目的として俺達は活動しているわけじゃあないし、俺は勇者達のリーダー扱いされてるけど前線で戦うようなスキルじゃないからな。俺のスキルは囮になるとか相手の情報読むとかくらいだからみんなに任せたほうが手っ取り早い。


 囮なら前線に立てるって? ユウキとかショウとかいるのに必要ないだろ。囮を使うのは戦術的に必要だから使うのであって、めちゃくちゃ強い近接タイプの奴らがいる中に囮が混ざってたら完全に邪魔。俺はみんなに守護かけて守るぜ。必要なら出るけど。


 あと純粋にダンジョンにこもるんじゃなくてみんなで色んなとこいきたい。船に乗って海を渡るというのが前回出来なかったから是非とも堪能して遊び回りたい所。


「それでこの二人はこの後どうするの?」


「そらもうこうよ」


 俺は二人の手を握り、同時に不屈を流し込み寝ている状態から無理やり起こす。握っているというか透過して触れている感じだけど。


「ん……あれ、解けてる」


「……私もすっきりしてます」


「おはよう二人とも」


 状態異常になっていた二人を同時に起こしたら即刻戦闘が始まってもおかしくなかったが、落ち着かせた状態であればこんなもん。片方ずつ起こしたら惨劇回避は出来るか分からないので、両方の状態異常を回復できそうなめぐに頭を下げたのはそう言う事。


 まじでめぐは俺の天使。いや女神。


「イリスさんどう思いますこれ」


「……よろしくない」


 俺がめぐの頭をよしよしして可愛がっていると問題児コンビがひそひそと話し始める。こいつらはほんと俺がめぐ可愛がってると邪推するよな。ここまで邪な気持ちのない愛情と感謝を持てる人間なんて俺だけだよ?


 めぐはめぐでまたあわあわしてるし、そろそろちゃんと問題が起きないことを理解してほしいわ。俺がロリコンだから全く信用ないって言われたらそれまでだけど。


 でもたぶんこれはめぐのことまじもんの女神だと信じ切れてない所が問題だと思うんだよな。納得はしてるし実際に女神だった証拠みたいなのもみんな一応見ている。イリスは精霊で、フラフィーはケットシーで、他のみんなは天使も見てるし。


 でもとりあえず今はそんなことより。


「お前らとりあえず反省する気くらいみせろや」

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