第232話 仲良くなったから全力で

「ふぅ……」


 次の日の朝、俺は一人で目が覚めた。実際には横にイリスとあかねがくっついて眠っているが、二人とも一向に目を覚ます気配はない。完全に体力を使い果たし、それでもなお俺がお仕置きと称してずっとしていたからだ。


 正直イリスの結界もどきがなかったら全員に乱入食らってるレベルで激しくしていたし声も出ていた。精力剤を俺一人で飲んだのは失敗だったかもしれないと思うほどには。


 しかし中々見れない二人の姿に歯止めが効かなくなったのは仕方ないと思うんだ。薬飲んでなくても結果はあんまり変わらなかったと思うよ。


 でもずっとみんな起こさないのはそろそろまずいのでとりあえず起こしてみるだけ起こしてみるかな。


「二人とも、もう朝だぞ」


「……今日は動けない」


「私も~」


 イリスは完全にグロッキーでうつ伏せのまま動こうとしない。あかねもそれに便乗……いやこっちも限界っぽい感じになってるな。数時間前までやってたし無理もないが。


 そんな姿にまたムラムラと来てしまいまたしようかなとも思う。精力剤の効果が残っているのか、ただただ二人が可愛いから俺が暴走気味なのかは判断がつかない感じ。


「よし、俺も今日は休むか!」


「……キミヒト、えっち」


「もー、仕方ないなキミヒト君は」


 これ完全にハマっちゃってもう抜け出せない気がするんだけど良いかな? だって俺ずっと我慢してたし体若返ってるから毎日しても大丈夫なんだよ。あ、フラフィーと毎日は勘弁してください。あいつは別格。


 精力剤があればなんとかなるかもしれないけどなんとかならないかもしれない。この二人を完全に落とす事は出来るけど、フラフィーを完全に落とすにはまだ何かしらの薬物を摂取する必要があるだろう。


「ねぇキミヒト君、私とイリスちゃんは別に良いけど……そろそろみんな起きてくるんじゃ」


「びびってる?」


「……びびってないし」


 あかねが顔を赤らめてそっぽを向くのが可愛い。照れ隠しのつもりなのか俺の頭を抱えて胸に抱き寄せるの愛しさ溢れてしまうわ。あかねのヒロイン力の上昇がとどまるところを知らない。


「むぅ。キミヒト私にも」


 イリスは俺の腕を両手でむにむにと触ってくる。本当に体に力が入らないのだろう、いつもの元気よくアタックする感じがない。でもその控えめな感情表現、俺は大好きだよ。なのでこっちからもほっぺたをむにむにしてやる。


「幸せだなあ……」


「キミヒト君可愛い」


 俺の呟きを聴いて、あかねが俺の頭をよしよししてくる。そういえば誰かに甘えるの久しぶりだなぁ。イリスに膝枕されながら呪い解いた時以来かな。皆がいる前だと全力で甘えられなかったけど、この三人は別の意味でも仲良くなったから全力で甘えて良いだろう。


 本当に幸せだなあ。もうずっとあかねに抱き締められながら一生過ごしたいと思うほどには。世界が変わってから、初めて本当の休息が取れた気がする。今だから思うけど気を張りつめすぎてたかもしれないな。


「……ね、ねえキミヒト君? 私も、その」


「……そうだな、イリスは眠そうだから二人でするか」


 俺がほっぺたをむにむにしていると、イリスはまた夢の中に落ちていったのでそのまま寝かせておく。スヤスヤと眠るロリに半端ない欲情を感じるが、物欲しそうにしているあかねの表情はそれ以上に俺の感情を沸き立たせる。


 夜通ししてかなり解消されはしたけど、まだまだ足りない。少し寝て体力はがっつり回復してしまった。女神様にもらったこの体は本当に色々な意味ですごすぎる。あかねがそれなりに回復してるのもきっとそれが理由だろう。


「あー、やっとキミヒト君が私の事女の子として認めてくれた気がするなぁ」


「皆がいたからな。だから今日は思う存分……」


 コンコンとドアがノックされる音が聞こえる。


「……誰だと思う?」


「前はフラフィーが包丁持って入ってきたな。あの時は声かけてきたから今回は別じゃないか?」


 どうやらイリスが精霊にお願いしていた結界は解けてしまったようだ。俺の防御スキルでは精霊に干渉出来ないので、精霊が先に魔法を使っていた場合その効果は消えない。あかねの分身が消えたのは魔力があったからでその違いだ。


 ……現実逃避してる場合じゃあないな。鍵がかかっているとはいえ、開けなかったら何をしていたかなんてすぐにばれる。俺はめちゃくちゃ寝起き良いからノックされたら普通に起きるし。


 かといってこのまま扉を開けた所でナニをしていたかは明白。つまり完全に詰み。もうこの際だし完全に開き直ってしまおうかなって思うレベル。しかたないので扉ごしに声をかけることにするか。


「はいはい、誰だ?」


「キミヒトさん、お連れの方たちにお食事を運ぶよう言われて来たんですけど開けてもらえますか?」


「理解」


 なるほど、そういえばここは食事を部屋に持ち運んでも良い制度があったな。普通は食堂から自分たちで持ってくるが、昨日予約の時にかなり多めにお金を払っていたようでティティ自ら持ってきてくれたということか。


 ギリギリセーフ。……セーフかな。まあいいか。開けよう。


 上は脱いでても良いからとりあえず下だけ履いて扉を開ける。あかねとイリスはそのままだが布団をかけて隠しておく。そもそもイリスは寝てるから服を着せると結構時間かかるしな。


「ティティ、ありがとう」


「どういたしまして。……って私名乗りましたっけ?」


「この宿屋の看板娘のティティは有名だからな。みんな噂してるよ」


「もう! おだてても何も出ませんよ。じゃ、確かに渡しましたからね。他の皆さんは下でお食事してて、終わったら部屋に行くと言っていました。それではごゆっくり」


 俺の上半身裸を見てもなんの反応も示さずティティは行ってしまった。ちょっと恥じらった感じを見たかったから若干口説きモードに入りたかったけどそれもカットされた。鍛えられてるな。全裸でよかったかもしれない。


 このままあかねともう一度と思っていたが、このおいしそうな匂いを嗅いでしまったらものすごくお腹が空いてきた。肉体的じゃなくお腹的に食べるしかないという気持ちにさせられるわ。


 俺が食事を部屋の中に運んでいくとあかねも俺と同意見なのかお腹がすいたと言い出す。


「先にご飯たべよっか」


「そうだな。イリスも起こしてくれ」


 あかねが小さく丸まっているイリスをちょっとゆするとすぐに目を覚ました。


「おいしそうな匂いする……」


 どうやらイリスもだいぶお腹が空いているようだ。これはあかねとの続きは無しになりそうだな。ご飯を食べたらみんな来ちゃうだろうし、流石に時間ぎりぎりで行おうという気持ちにはならない。


 でも、それでもいいか。左右にぴったりくっついてくるこいつらめっちゃ可愛いし。ハーレムって素敵だな。


 もしくはこのまま三人でしてみんなが来た時にしこたま怒られるというプレイ。それも悪くはないかもしれないな。今回に限り問題児イリスとあかねは敵にはならないだろうしお腹に穴が空くだけで済む。


 ……せっかく食べたご飯がもったいないことになりそうだしやめておくか。

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