第221話 友情

 異世界に来てからの初めての男友達、友情という熱い気持ちを思い出させてくれた連中。そして前の世界で相談に乗ってくれて励ましてくれた。どんなことがあっても仲間と言ってくれた事を俺は忘れないぜ。


 そう、例えロンドの連中が俺達の事を忘れていたとしても俺はお前たちを仲間だと思っているよ。だから彼らの目的のために俺は出来る限り力を貸したい。


「というわけで治療代は街の案内とかダンジョンについて説明してくれることで返してくれればいい。あと探索者登録もしに行こうと思ってるから案内よろしくな」


 俺がそういうとロンドの連中は顔を見合わせ不思議そうな顔をする。友好的すぎる俺を疑っているというよりは、そんな事でいいのかという感じだ。それをアイコンタクトで確認し合っているのはイケメンと相まってかっこいいわ。


 いやあの別に男に目覚めたとか言う意味ではいのでそういう目線で見ているわけじゃないです。普通にイケメンが目配せし合ってるのかっこいいって思うのは男でも普通にあります。だからあかねはこっちをじっと見るのをやめろ。


「そんなことでいいのか?」


「手持ちが少ないから実際かなりありがたいが……」


「なんだったら兄さん凄く怪しくみえるぜ」


 うんそうだろうね。俺はマジで怪しい人物に見えると思うわ。急に街に現れてイケメン三人衆にヒールをかけて治療してさらに幼女を多数連れているというこの現状。怪しくないと言い切るのは難しいものがあるだろう。


 ロンドの連中が人を疑っているのを見るのはなんだか新鮮だがそれはそれで面白いからいいかなって感じだわ。なんていうんだろう、若いというかまだ駆け出しっぽい初々しさを感じさせる。


 たった数か月で何があったんだまじで。


「俺達が怪しくてもそこは気にしないでくれ。案内してくれるだけでいいからさ。ほら、別に損するわけじゃないしいいだろ?」


「……そうだな。とりあえずよろしく頼む。俺はイチロウ」


「ヒールしてくれたお礼はしなくちゃいけないしな。俺はジロウ」


「お前たちの名前はなんていうんだ? 俺はサブロウ」


 うん、やっぱ見分け付かないわこいつら。でも武器を持っていないのがイチロウなのでそいつだけはしっかりわかる。あと相変わらずの名乗るタイミングな。懐かしいわ。


 俺達もロンドのメンバーに軽く挨拶と名前を伝えて行く。お互い初対面という体なので少し寂しさが募るが仕方ない。友情はまた育んでいけばいいし、そうなれると確信が持てるくらいにこいつらはいいやつらだ。


 街の中を案内してもらっていくと、見慣れた場所に見慣れたものがなかった。このダンジョンの多くあるケイブロットでも一際目立ち異彩を放っていたというのにどうしてしまったというのか。


「なあ、あそこのダンジョンは誰も行かないのか」


「あぁ……あそこか」


 イチロウはそこのダンジョンを見る目が少し寂しそうというか辛そうになっていたが、意を決したように語りだす。


「あそこは、俺達が攻略するダンジョンだ」


「俺達三人で初めて最後まで挑んだ場所で、ボスに返り討ちにされた」


「人数三人以下でしかボスに挑めない特殊なところだし他の人たちは入る事はほとんどないな」


 どうやらそこのダンジョンはボスまでは普通のパーティで攻略が可能だが、ボス戦の時のみ三人以下にされてしまうらしい。なので普通のパーティは四人以上で行動しているので誰も攻略に行かない。


 難易度自体は低いので誰でも挑戦は出来るが、攻略したところで何のメリットもないダンジョンらしい。怪我をする確率が高いだけの場所に行くのは本当にロンドの連中みたいに酔狂なやつだけだろう。ロマンを求めてるとかそういう感じの。


 基本的にこの街にいる人たちは安定志向だからな。わざわざ危険を犯すことはしない。ランクの高い人たちはダンジョン攻略するならもっと割の良いダンジョンにいくし。


「悲しい」


「俺は嬉しいよ」


 イリスがつぶやくが俺は正直言って今そこのダンジョンがからっぽの状態で助かった。もしそこが前の世界と同じように栄えていたら間違いなくみんなで行くことになり、俺はひどい目にあったことだろう。


 いや、というかあわされるというのが正しいけども。


「とまぁ美味しくないわけだが、俺達にとっては因縁のある場所なんだよ」


「キミヒト達も行ったとしたら分割されてしまうだろうな」


「四人以上で行くと最悪全員バラバラになるからおすすめはしないぜ」


 と忠告してくれる。うん、今の姿のダンジョンは行かないよ。変わっても行きたくはないけどフラフィーは行きたそうにしてるんだよな。あとめぐにも楽しくなっていてほしい。


 そしてそんな二人をクロエと共に眺めていたい欲求に駆られてしまう。あかねはボーイズハントに行くから別に大丈夫です。あかねいつもはぶられてるな。


「トラクションのダンジョン、攻略頑張ってくれ」


「あぁ、絶対に近いうちに攻略してやる」


「応援ありがとな。じゃあギルドはここだから俺たちは鍛えに行ってくる」


「ヒールまじでありがとうな」


 トラクションのダンジョン。攻略され後にアトラクションのダンジョンに様変わりするケイブロットのおすすめデートスポットだ。つまりあいつらが攻略して変化するわけだが、その後男女の恋愛事情が大きく変わっていくということだ。


 奴らはどんなスキルに目覚めるんだろうな……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る