第211話 女神様と愉快な仲間たち

 クロエをぎゅっとして癒されまくったので改めてムバシェの処遇を考える。一番良いのはこのままベノプゥに引き渡すことだが、こんな状態の連れていって大丈夫なのか? 俺がこれ引き渡されたらドン引きなんだけど?


 ずっとクロエの方物欲しそうな目で見ているし、セルフ緊縛プレイの最中だし触りたくないし割りとやばい光景だと思う。俺たちの視線を浴びて息荒くなってるし変態レベルが高すぎるんだがどうしたものかね。


 ……放置で良くないこれ?


「お兄ちゃんも迷える小悪魔も何を考えてるかまるわかりですよ」


「だってなぁ?」


「ねえ?」


 俺達は顔を見合せマジでどうしようかと頭をひねる。このまま放置でも実際問題は起きないとは思うけど貴族的には問題大有りだと思う。なんだかんだで結構でかい邸宅だしメイドが三十人くらいいたなら権力も結構あったはず。落ちぶれたとはいえ貴族は貴族だ。


 つまりムバシェの親が戻ってきた時とか絶対何か起こるだろ。最悪王女様の権力を悪用したいところだけど王女様絶対今大変。王様と政治的にも暴力的にも親子的にも大喧嘩必至。


 間違いなく色々な意味で戦ってる最中だからこれ以上の負担をかけるのは可哀想かもしれない。王都のほうに何も話が来てないから情報統制もしているっぽいし王女様相当なやり手だと思うわ。


「よし放置しよう」


「それが良いわね」


「見なかったことするのが一番」


 だがみんなの意見は一致したので館を出ることにした。


 すまん王女様、こんなに貴族が腐ってしまったのは国の責任ということで放置していく。俺はロリ達と過ごしたいからこれ以上の面倒はごめんだぜ。


 外に出るとベノプゥが玄関まで来ていた。あの罠の中を抜けてきたのか。実は相当な実力者だっていうのがこのことからも良くわかる。流石一人で誘拐騒動をなんとかしようとしていだけはある。


「ああキミヒト君! よくぞ無事で……何もなかったか!?」


「ええ特に何も。強いて言うならムバシェがメイド達洗脳してSMプレイを楽しんでいたり地下にある魔方陣を使って他人から魔力を吸い上げて最強の個体を作り出そうとしていたりその企みを阻止するために俺の仲間が既に潜入して無力化してたくらいですね」


「情報が多すぎるんだが!?」


 仕方ないのでそれなりに事情を説明してあげた。主にムバシェをぼこした所とか魔力を吸い上げてた所とかムバシェが最強になりたがってた所とか。


「……本当に君達は何者なんだ」


「ただのロリコンとロリ達ですよ。もしくは女神様と愉快な仲間たち」


「そう言う所が既におかしいんだが……」


俺が真面目に受け答えしないと思ったのか、ベノプゥはやれやれと肩をすくめてため息を吐いた。明らかに怪しいからな俺達。言ってることは全部本当だけど。


 もし勇者召喚が普通に行われて街の人達に知られていれば正体がばれたかもしれない。だが今回は勇者召喚されていても街の人達に知られていないから推測しようもないしばれる心配もないだろう。


「この屋敷に幽閉されていた、魔力を奪われていたのはエルフ達でした。もしかしたら子どもたちを誘拐していたのもムバシェの指示かもしれません」


「ほう? なんでだ?」


 なんでかって言われたら、あなたがこれからムバシェに捕まって魔改造される予定だったからです。前の世界では誘拐阻止をするために動いていたベノプゥが捕まり実験材料になっていたからそう考えてもおかしくはない。


 実際前の世界では俺が活動し始めた時誘拐活動は全くと言って良いほどなかった。盗賊たちが人さらいをしていたのは確かだが、あいつらの行動と今起きてるのは違う。


 もし盗賊が人さらいをしているならギルドがもっと大々的に動いていても良いはずだ。それなのに動いていないと言うことは、盗賊じゃないか、何かしらの圧力がかかっていた可能性が高い。


 そして今の情報だけならムバシェの所でやろうとしていた実験、人体実験の材料として子どもをさらっているところをベノプゥが発見したってところだろうな。ムバシェの親も悪事を働いていたようだしギルドに隠し事をしていたのだろう。


 というところまで細かく説明しておいた。人体実験するとはさっき説明してなかったからここでようやくベノプゥは納得したようだった。すまんな言葉足らずで。


「そういうことだったか……」


 ベノプゥは一人納得した顔でうんうんと頷いていた。俺達には良くわからないがベノプゥ的には納得のいく何かがあったようだ。誘拐が起きるのがわかる何かの能力的にわかったことがあったのだろうか。


「そうだな、どうやら心配事が無くなったようだ。君たちにお礼がしたい。今度我が家へ来てくれないか? そこでこっちの事情も全部話そう」


 なんだかよくわからないが解決したらしい。だがお呼ばれされていいならぜひ行こう。貴族の家というのも興味あるしなにより美味しい料理ならうちのロリ達が喜ぶはず。


 しかし、ベノプゥお金ないって言ってなかったっけ。大丈夫か俺達呼んでしまっても。めっちゃ食うぞこの子ら。あ、そうかそれならイリスに頼んでくるか。前は一緒に出来なかったしちょうどいい。


「ありがたい話です。質問なんですけど腕のいい料理人がいたりしますか?」


「ん? あぁいるぞ。王都の中でも片手に入るほどの料理人だ。王城へ呼ばれていたらしいが家で働いていたいと言ってくれた変わったやつだ。使用人もほとんどいなくなったのにずっといてくれる変わったやつだよ」


 やったぜ。これなら食料調達という名の魔物討伐をみんなで行ける。前は俺とあかねは置いてけぼりだったからな。ユウキのせいで。


「じゃあ材料大量に持ち込むんで大量に作ってください」


「君たちは全部で五人……いやもう一人いるって言ってたから六人だろう?」


 ベノプゥは不思議そうな顔をしているが俺にはもう少しやってほしいことがあった。


「捕まっていたエルフ達も連れて行きます」


 エルフが街でも過ごせるように働ける場所、そしてギルドで安定的に働いて街の防犯強化をしてほしいという勝手な気持ち。美味しい料理が毎日食べられて住む場所も借りられるとなれば彼らはきっと真面目に働くだろう。


 イリスが言えば納得するだろうし、エルフがいれば盗賊たちもむやみやたらと近くに拠点を持つこともなくなるはずだ。森はエルフのホームだからな、罠があったとしても逆に利用されてしまうだろう。


 盗賊と言えばあの盗賊のベイルを先にやっちゃいましょうかね。リーベン近辺にいるだろうし、クロエとイリスがシオリ倒しに行くついでにやっちゃいそうだしな。

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