第143話 幸せを感じる
数日は特に何事もなく過ぎていった。そう、本当に何事もなく過ぎていた。
「キミヒトさーん、これ作ってみたんですけどどうですか? 美味しく出来たと思うんですけどどうですか?」
今日の献立はエビっぽい食材や海の幸をふんだんに取り入れ、お米のようなものと一緒に炒めたパエリアだった。
細かく刻まれた弾力のあるイカやタコのようなものに加えて噛めばはじけるような新鮮なエビのようなもの。味付けは塩をベースにしたさっぱりなものが非常にマッチする。
「めちゃくちゃうまいわ」
「ありがとうございます!」
フラフィーは嬉しそうにはにかんでお礼を言ってくる。その笑顔が見られるし美味しい料理食べられるしお礼を言うのはこっちの方だよ。
みんなで食卓を囲み和気藹々と過ごすこの時間は最高に幸せを感じる。クロエとイリスのロリ二人は料理を無言でおいしそうに食べまくってるし色々な意味で満たされていくよ。
麺類が出回っていたら俺の理性は飛んでいた可能性もあるな。なんで麺類を食べている女の子達を見ていると性的な気持ちが湧き上がるのか誰かに教えてほしい。
めちゃくちゃ語られても引くかもしんないけど。
「こっちこそありがとう。お店で食べるよりもフラフィーの料理の方がおいしいよ。これが愛情ってやつかな」
「うわキミヒト君真顔でそういうの寒気がするからやめてくれる?」
「お前はベッドから起き上がれや」
フラフィーを褒め殺してめちゃくちゃ赤面させようと思ったらあかねから茶々が入る。俺もちょっと言い過ぎた感あったと思ったからちょっと恥ずかしくなるからちょっと強めに言う。というかあかねは俺と一緒にひきこもっているがまじでこいつはひどい。
ケイブロットの街でもそうだったがこいつはひきこもる機会があるとベッドから起き上がる気配すらない。前回は俺も出かけたりしていたから少しは起きたりしているのだろうと思っていたが本当に動かない。
今も俺達に料理を作ってくれたフラフィーにご飯を食べさせてもらっているというなにその全身不随にでもなったのかというくらいの介護されっぷりにドン引きである。
「フラフィー、あかねにそんなに構わなくてもいいぞ」
「いいえ、私よりぞんざいに扱われる方は丁重にもてなしておかないと……」
「何その理由!? どういうことなの!?」
フラフィーの言葉にあかねは飛び起きる。
「簡単な話ですよあかねさん。キミヒトさんは誰かをいじっていれば満足することが多いので、その対象をあかねさんに固定してしまえば私は普通に接してもらえるかなと」
「フラフィーちゃん前はもっと素直ないい子だったのになんだか考え方がおかしくなってきたね? キミヒト君の影響だね?」
「フラフィーは元からおかしいよ」
「そうね、フラフィーは猫なのにかなり常識的よね」
「猫は気まま。フラフィーはお姉さん」
「褒められてるのか褒められてないのかよくわかりません」
もぐもぐとずっとご飯を食べていたロリ達も突っ込みを入れてくる。実際このパーティにおかしくない奴はいないだろうという開き直りをしたいところだが、それを言ってしまうと何故か俺のせいにされそうなので黙っておく。
俺は至って普通だよ。ちょっと欲望に忠実なだけで。
「もういいですよ慣れました。あかねさん、あーんしてください」
「あーん」
あかねまじで病人みたいだけどこれ頭大丈夫なんかな。ちなみにあかねを放置してご飯を食べているとやたらと視線を飛ばしてくるのでフラフィーが構ってしまう。
自分からこいよとずっと思っていたが、フラフィーも一応理由があるにはあるのでこのままでも別にいいだろう。フラフィーには不憫な属性が付与されているのは前からだし、ケイブロットでも同じ感じだったし。
実際は全く良くないが良いと言うことにして納得しておこう。あかねに関してはもういろいろと諦めた。
「キミヒトさん、明日は何かしてほしい事とかありますか?」
「そうだなぁ、フラフィーの料理美味しいしここの食材食べつくしてみたいな」
「もう! 褒めても料理しか出てきませんからね!」
「それを求めてるんだが?」
何かおかしいことを言ったのかと自分の言葉を振り返ってみるが特におかしいところはない。色々といじられてテンパってるのかフラフィー。でもそのままでいてくれ。
「じゃあ明日は狩りする」
「食材という名の魔物狩りね。ふふ、腕がなるわね」
ロリ二人もガチで食材確保の体制に入る。明日からはもっと大物が出てくる可能性もあるし、海の幸と山の幸を合わせた料理が味わえそうな予感がある。
山の幸と言っても新鮮な魔物の肉だが。というか収納持ちの俺がいなくても持ち運び出来るのかそれは。
お腹もいっぱいになったのでみんなで布団に入る。元から入りっぱなしの奴もいるがあかねは布団にいるだけで起きてはいるんだよな。よくずっと布団に転がってて寝ないものだとある意味関心する。
俺だったら布団に一日中いたら気づいたら寝落ちしてるだろうし、ずっといたら疲れ果てるだろうなとも思う。あかねはそういう意味では凄いと思う。まったく関心出来ないけど。
「じゃあみんなおやすみ」
みんなであいさつをしてから就寝する。サッキュンは夜型なのでこの時間に見張りをすると自分から言い出した。夜に勇者に襲撃されると割とどうしようもないので正直助かっている。
あかねの使い魔として優秀だが、ぶっちゃけあかねよりもちゃんと活動している。いやあかねの情報収集能力は凄いよ? でもあんだけ動いてないとこう釈然としないものがあるというかなんというかね。
そんな日々を過ごしていて俺は気づいてしまったんだ。
「なああかね」
「んー?」
みんなは予定通り外に出かけて狩りやら何やらを楽しんできている。そして食材やお金を稼いできてくれている。手持ちもかなりもあるしお金は必要ないと言ったが、みんなは何もしてないと鈍ると言って散策だけでなく結局狩りまでしている。
要は勇者と鉢合わせなければいいのだからそれは問題ない。というかロリ達は別に出会っても普通にスルーすれば問題ないので楽しんでもらうことにした。
そして俺とあかねはそんなロリ達にかいがいしく生活の世話をしてもらっているという現状である。出られないから仕方ないとはいえこれはもうあれだ。
「俺達ってヒモみたいだよな」
「みたいじゃなくてそうだよ」
あかねは何をいまさらみたいな顔で見てくる。うん、わかってたけどさ、このままじゃ精神的におかしくなりそうなんだけど。
というか思ったんだけどこれ外に出ること可能なんじゃないか? 万全を期すためにひきこもってたけどみんなとバラバラに行動すれば実際目立たないし、勇者の情報をあかねに探してもらえば街の外に行ったとかわかるだろう。
建物に入るときとかは俺が透視を使って覗いておけばかち合うこともないだろう。
という話をあかねにした。
「やだ」
「なんでだよ」
「フラフィーちゃんに甘えるの幸せを感じる」
俺は無言であかねの頭をつかんで引きずりながら宿屋を出た。
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