第124話 違反のオンパレード

「いよいしょおおお!」


 ゴーレムが本格的に動き出す前にもう一度肩付近まで上り詰め、剣が引っ掛かっているところまで駆け抜ける。


「どっせーい」


 そしてその部分に収納からミスリルゴーレムの残骸を取り出し透過を発動。重力に逆らって落ちる残骸に触れてアダマンタイトゴーレムに重なるようにすることですり抜けさせる。


 ミスリルゴーレムの残骸はギルドにいくらか提出したがバカみたいに余っていたので活用しない手はない。受付嬢に受け入れ拒否されたのが役に立つとは。


「うわー」


 物量で殺しきるというアホみたいな作戦にあかねは呆れたような声を出していた。正攻法という言葉は俺にはない。というかこのゴーレムに対する正攻法ってなによ。


 ドバドバと出して投下しては透過させて解除。いい感じに腕の面積は削れていきついには腕が外れる。


 ミスリルはかなり無くなったしもう一度やるほどの分量はない。うまくすれば倒せたかもしれないが、無理やりやったから倒しきるのは無理だな。それに攻略するなと言われてる。


 そのまま肩から飛び降りてアダマンタイトの腕と拾えそうな散らばったミスリルを回収しながらあかねの元へ走る。


「キミヒト君! 急いで!」


「うおっ!?」


 アダマンタイトゴーレムが逃がすまいと残った腕を振り回し俺をとらえようとするがそれは空振りに終わる。


 もしも普通に避けようとしていたら巨大な手に捕まっていただろうが俺には透過がある。


 目の前というか体を圧倒的な質量が通りすぎていく様は恐怖以外の何者でもないがなんとかやり過ごすことが出来てほっとした。


「今のこわかったよー」


「俺はもっと怖かったよ。早く帰ろう」


「うん!」


 そして俺たちは探索の目的をこれ以上なく達成し街に戻った。あかねのダンジョンテレポートは便利すぎるぜ。


 門番さんに軽く挨拶して俺たちは宿屋に戻る。その時の門番さんは凄く嫌そうな顔をしていたが全く後悔していないぜ。帰り際街の様子を見てみたがスタンピードはまだっぽいことがわかった。


「ただいまー」


「キミヒト、おかえり」


「おかえりなさい!」


「二人ともおかえり。その顔を見ると良いの見つかったみたいね?」


 宿屋に戻るとロリたちにお出迎えされてこの世の幸せと神秘を感じて昇天しかけるが真顔を保つ。ロリ達を堪能するのはまたあとでいいからな。今はフラフィーだ。


「おう、フラフィー喜べ、アダマンタイトあったぞ」


「ううう、キミヒトさん。ありがとうございますうう」


 フラフィーは泣きながらここぞとばかりに抱きついて来ようとするがイリスに止められる。首根っこをつかんで止めてるけどイリス結構力あるな?


「イリスさん……今は良くないですか?」


「巨乳は危険」


 イリスはあの仕立て屋の一件からフラフィー敵視が激しすぎて可愛い。嫉妬心を煽りまくって精力剤飲ませてめちゃくちゃにしたい衝動にかられる。


 そういや惚れ薬はどんだけ効果あるんだろうな? 魔王女の子だったりしないかな。


「じゃあ早速ゴンズのとこいくか」


「休んでくださいよ。こんなに早く戻って来てくれたのは嬉しいですけど無理しちゃだめですよ?」


「俺は好きな子のために無理するのは無理だとおもってないから諦めろ」


「キミヒト、たまにかっこいい」


「私はねるー」


 あかねは精力剤ブーストが切れてしまったのか四人部屋の方に向かっていった。一人部屋にはショウとサッキュンがいるから四人部屋を使ってもらう。この子らもなにもいってこないしショウ達も問題ないだろう。


「んじゃいくか」


「はい!」


「キミヒト、今度は私たちとも出かけてよね」


「じゃないと処す」


 何に処されるかはわからないけれど任せておけ。ロリたちと触れあう機会がなくなっていて非常に辛いのは俺も一緒だ。言われなくとも好き放題にさせてもらう。


「でもキミヒトさんほんとよく取ってこれましたね?」


「簡単に言うと脅して不法侵入して禁止事項のダンジョンボスと戦ってぼこしてきた」


「違反のオンパレードじゃないですか!?」


「あかねができちゃうのがいけない」


 あるものはなんでも使え。この世界では腰が引けたものから順にやられていく。だから俺は進み続けてロリを救うし勇者も倒す。


 必要なら人殺しだってやってやるよ。みんなを守るために。


「やってるー?」


「誰じゃい。早かったなキミヒト。まともな素材は見つかったのか?」


「こいつをみてくれ、どうよ!?」


 テンションが上がって擬音を口に出してしまうくらいの勢いだ。しかしそのくらいレアな素材だと思うんだアダマンタイトゴーレムの腕は。


 やたら重いしでかいから加工難しいかも知れないけどゴンズならやれるだろうと言う確信を持つ。


「はっ! こいつは驚いた。アダマンタイト鉱石、しかもこの量! おい嬢ちゃんこっちにこい!」


「はい!」


 ゴンズはフラフィーを引き連れ奥に引っ込んでしまった。これからどんな盾を作り上げるかの作戦を練るのだろう。


 俺の仕事はここまでだ。出来ることは最大限やれたとおもう。だから今は少し休むためにも宿屋に戻りたい。精力剤の効果も切れたしあり得ない疲労感に襲われていた。


「フラフィー、おっちゃん、先に戻ってる。支払いとか全部フラフィーにいっといてくれー」


 返事を聞く前に宿屋に戻る。


 そこには俺の帰りを待っていてくれたイリスがいた。何だかんだで防衛で頑張ってくれていたし魔法もだいぶ使っていた。しっかりと休憩を取っただろうか。


 クロエも多くの怪我人の治療、勇者との戦いで暴走寸前の魔法を使ってくれた。お陰で命が助かったし無事にここにいるのもロリ二人のおかげだ。


「おかえり、キミヒト」


 この笑顔を見るために、俺は勇者との戦いを終わらせなければならない。決意を新たにイリスと手を繋いでクロエとあかねの待つ部屋に戻った。

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