第90話 そういう性癖

「キミヒトさん、あれ……」


 肉のダンジョンに向かう途中だった俺達はその道すがら倒れている人物を発見した。肉のダンジョンはそれなりの距離があり街中でありながらも森を経由するため、人気スポットだが危険は多い。


 街からの目が届きにくい場所であり自己責任という意味合いがとても強くなる。しかし肉のダンジョンに行く人たちは基本的に食料を卸す人たちばかりなのでそこまで危険になる事はないと聞いている。


 それなのにこの場所で倒れているというのはとても珍しい。


「おい、大丈夫か?」


 近づいて声をかけてみるが反応は無い。正直放っておいても良いんだが見つけてしまったのなら面倒を見るべきだろう。


 別に見た目が幼いからってわけじゃあないよ。正直このサイズは本物の子どもすぎて庇護欲オンリーだから決してそういう邪な気持ちを持って接しているわけじゃあない。


 抱き上げる手がやたらと震えているのは緊張しているからじゃあなくて何か病気の可能性もあるからだってそういうことだよ。しかしめちゃくちゃ柔らかいし軽いのたまんないな。


 意識を失っているので魔力の流れを確認する。服を透視することは出来ないが、魔力の流れで妨害されているからこそ問題がある場所が見えたりする。


 特に問題はないようだな。


「見た感じ怪我も無さそうね。そっちに開けた所があるから移動しましょう」


「ああ。フラフィーは病人でも食べやすい食事を頼む。クロエはこの子を寝かせたらヒールを頼む」


 とりあえず問題が無いならヒールをかけて様子を見るという事が出来るのが魔法の素晴らしい所。応急処置の方法が誰でもわかりやすいって本当に素晴らしい世界だよ。


「キミヒト、私は?」


「イリスは俺の応援をたのむ」


「……キミヒト、がんばれ」


 ありがとう。


 森の中で開けた場所に移動し、テントを張ってその中に幼女を連れ込みヒールをかけて様子を見てみる。うーん、幼女にヒールをかけるって言葉がなんだか卑猥に聴こえてしまうなぁ。


 穏やかな寝顔だし服に乱れも無いことから乱暴されたという感じでもない。しかし荷物が全くないため俺みたいな収納持ちか、もしくは盗られたか最初からないのどれかだ。


 もし俺がこの幼女を襲うんだったら仲良くなってお兄ちゃんとか呼んでもらいたい欲求に駆られる。襲うよりも仲良くなりたい。


「キミヒト、最低」


「ちょっと見過ぎじゃないですかね……」


「下に守備範囲広すぎよね」


 うちのパーティーメンバーの暖かい言葉を聴きながら幼女の様子をじっくり調べる。本当なら触診とかして体の違和感も確かめたいがこんな場所でそんなことしたら包丁と魔法と撲殺天使に襲われることになるだろう。


 とりあえずガン見するにとどめておくのが賢明だ。


「ううん……」


 幼女の寝顔をじっと見ていると小さい口から可愛らしい声が漏れ聞こえた。うむ、女の子らしい可愛い声だね。


 幼女はそのまま目をゆっくりと開け、俺と目が合う。


「大丈夫か?」


「あれ……わたくし……」


 幼女はゆっくりと体を起こし、お腹からぐぅと鳴き声を発する。ああまじで行き倒れか。これはご飯食べる姿も見られるからお互いにラッキーな出会いだったな。


「お腹空いてるんですね。これどうぞ」


 フラフィーは病人でも食べられる薬草入りのおかゆのような物と水を渡した。芋を小さくなるまで溶かし、ほとんどスープみたいになってるが食べやすく飲みやすいものだ。


「あ、ありがとうですわ」


 幼女はそれを受け取り少しずつ飲んでいく。これが麺類だったらあまりにもいかがわしくて俺はこの場にいられなかったかもしれないな。


 麺類とか食べる時に髪かきあげて耳にかける姿エロいと思うのは俺だけでしょうか。それを幼女がやるというこの非日常感がとてもたまらないのですよ。


 その状態から麺をすするために口をすぼめる幼女とかもうそういう性癖あるだろって確信を持って言えるくらいエロいと思うんだ。


「おいしい……助かりましたわ」


「おそまつさまです」


 幼女は満足したのかフラフィーにお礼を言って器を返した。喋り方といい人当りといいもしかしたら良い所のお嬢様かもしれない。それにしては一人っていうのはおかしいけど。


「キミヒト、幼女どう?」


「イリス、その聞き方はどうかと思うわ」


 とても目の保養になりましたとか答えたいと思ったけどロリ二人がテント覗いてる方が目の保養になるの最高かよ。幼女は最高だし二人は天使だよ。


「あ、あなたたちは! ふふふ、わたくしにも運が向いてきたようですわね! 助けてもらってありがとうですけど使命を優先させてもらいますわ」


「バインド」


「ちょ、きゃあああ!」


 幼女がいきなり立ち上がり啖呵を切ったと思ったらクロエに拘束された。しかも今回は足元に移動を束縛するやつと同時に縄も発動させ縛るという徹底ぶりだった。


「緊縛プレイも良いな」


「キミヒトさん?」


 おっと本音が漏れてしまった。


 しかしここまで頑丈に拘束するという事は何か事情を知っているのだろうか? クロエに尋ねてみると簡潔に答えが返ってきた。


「人間の波長に似てるけど、こいつはサキュバスよ。さっきは弱ってて全然わからなかったけど」


「ほう?」


 ロリサキュバスとな? おいおいまじかよ異世界最高だな。いや何しに来たのか知らないけど俺の前にロリキャラで登場するとか色々とよくわかっててやばいな。


 クロエの魅了すらも抵抗出来る俺からするとロリサキュバスがガンガン攻めてくるのとか美味しさしかないだろう。完全抵抗出来るけど場合によっては無抵抗でもいい。


「さてサキュバスさん? お話し聞かせてもらえるわよね?」


 クロエが色っぽく語りかけているが、その手にはファンシーステッキがあるのでいまいち決まらない。こういったシリアス展開の事考えるともう一本まともなもの作るのもありか?


 いやでも場を和ませるために使って相手の緊張感を奪うっていうのもそれはそれで有用な気がするからいいか。可愛いし。


「ふふふ……残念だけどこの拘束はわたくしには効きませんわ! 変身!」


 幼女はそう叫び辺りは一瞬煙に包まれすぐに晴れる。そこにいたのは大人の姿になり出るとこが出て引っ込むところが引っ込んだ大人サキュバスだった。ついでに服装も町娘風からボンテージのエロ系に変わっている。


「まさかあなたたちの近くに男がいるなんてね! 私にも運が向いてきましたわ! さあ二人を捕まえなさい!」


 大人サキュバスから謎の魔力が俺の中に侵入し、意識を刈り取りクロエとイリスに襲い掛かるように命令が下った。

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