第26話 恋愛テクニックの一つ

「それでキミヒト、あなたイリスとどこまで行ったの?」


「どこまでとは」


 クロエと二人で見張りをしていると唐突に声をかけられた。それなりに無言の時間が続いてドキドキしてたらこの発言ですよ。


 あれか? 私も好きだったけどイリスの事が好きなら私は引きますよ的なあれなのか? クロエの好感度もそれなりにあるけどそこまでじゃないか。


「ほら、昨日、抱きしめ合ってたじゃない」


「ああ、そうだな。マジな話するとイリス可愛すぎて理性保つの大変すぎて死にそうだったわ」


「そ、そう」


 どことなく無理やり平常心を保っているように見える。あれ、これまじでフラグ立ってたの。ロリを二人とも落としていたとか罪深すぎない?


「いやでもまだ何もしてないぞ。それに説明しただろ? 抱きしめただけだし、それ以上の肉体的接触はしてない。キスもしてないし」


「ば、ばかじゃないの! いやうんそうだろうとは思ってたけど」


「してやろうか?」


「魅了かけて言う事きかすわよ」


「望むところだ」


「望むところなの!?」


 というかぶっちゃけ常に魅了状態でいたいまである。理性保つの大変だしそれだったらもう何かぶっ壊れた状態で活動したい。幸いスキルの力で完全に魅了にかかるわけじゃないから上手くしたら完璧な忠誠を誓える。


 俺が元からロリ大好きだしクロエにかけてもらえるなら害もないだろうし良い事尽くめなのではないか? そうすれば下手に手を出してしまう事もないしお互いにwinwinな関係が築けそう。


 さらに魅了状態なら二人を守るためにより強い力も発揮できるしデメリットというデメリットが存在しないじゃないか。


 あれ、これまじでありなんじゃね?


「というわけでやってくれ」


「何がというわけなの!? やるわけないでしょ!」


 怒られてしまった。


 イリスがクールビューティかっこわらい状態だからクロエがツンデレっぽくてとても楽しい。いや全然デレてないからまだツンの状態だけど。


 バランスの良い姉妹だな。ロリで性癖にも刺さるし性格も相性抜群とかもうどうしていいかわからん。マジでどうしたらいいの。


「なんでクロエとイリスってそんな可愛いの」


「は!? 何言ってるの!?」


 クロエは褒められ慣れてないのか突然の俺の口説き文句に赤くなっていた。だが強気。良いね。


「だってさ、クロエはお姉さんって感じだしイリスは妹って感じ。支え合って生きてきたんだなぁってほのぼのするし見た目俺のめちゃくちゃ好みだし。タイプは違うけど二人とも可愛いよ」


「なんなの! 褒めても何もでないわよ!?」


 最近は突っ込み役をフラフィーに取られていたせいかあまり喋る事のなかったクロエ。女性陣のまとめ役としてパーティを支えようとしていたのがわかる。


「俺の前では別にお姉ちゃんしなくていいぞ」


「は? なにそれ」


「クロエはもっと甘えて良い」


「なによ……それ」


 俺が思ったよりも真面目に言っているせいかクロエも真に受けてしまっていた。うん、お姉ちゃん役してる子って人に中々甘えられないよなって言ってみたんだけど効果ありすぎて俺が困る。


 いつも強気なクロエの横顔に不安と安心を感じて若干不安になる。すまんクロエ、そんなに考え込まないでくれ。


「私がしっかりしないとって思ってた。里にいた時は二人で協力して生活してたし甘えるなんて考えた事もなかった。でもイリスと二人で逃げた時から、ずっと誰かに甘えたかったのかも」


「親には、甘えられなかったのか?」


「私の親は、族長だったから。娘の私たちに愛情を注いでくれたことはなかったわ。私は家のこととイリスの世話をずっとしてた。時々誰か手伝いに来てたけど、族長の娘って事で距離を置かれてた」


「そっか、寂しかったんだな」


「寂しい……? そうかも。イリスは私に甘えて来てくれたけど私はイリスを守る事ばかり考えてた。結局へまして捕まっちゃったけど」


 クロエは村にいた時の事、そこから逃げるまでの事、前に話した内容の細かい部分を話してくれた。


 イリスと二人になってからは大変だったみたいだけど、それなりに幸せを感じてもいたようだ。村での立場がクロエとイリスを苦しめていたんだろうな。俺には偉い人がどういう考えをしているかはわからない。


 でも子どもが甘えたいなら甘えさせてあげるのが大人だと思う。たとえ本人が言い出さなくてもその機会くらいは作って良いんじゃないだろうか。


「じゃあ俺がクロエの父親代わりって事でどうだ?」


「あはは、キミヒトじゃ無理よ。甘えさせてくれるなら恋人のほうが嬉し……あ」


「……」


 最初の沈黙とは違った沈黙が訪れた。


 気まずいだろこれ。


 なんだこのロリ達。俺をもてあそぼうってのか! ドキドキが止まらねえよ……。


「えと、なんでもないわ」


「そうか、恋人か」


「何でもない風装ったんだから流してよ!?」


 流せるわけないんだよなぁ。告白みたいなことされて黙ってるなんて俺には出来るわけがない。いじり倒すか、負けていじられ倒されるかだ。


 この流れなら勝てる! 勝算ありだ!


「なあクロエ。俺は大切な人がいないんだ」


「え?」


「俺異世界から来たって言っただろ。向こうでは死んだことになってるし実際死んだ。そしてこっちの世界に来てからはあれだろ」


「う、うん」


 相手がひるんでるうちに攻撃あるのみ。人は言う、一度交渉の余地をちらつかせれば簡単に相手を落とす事が出来ると。


 ならば俺は相手のガードを下げるために卑怯だが重い話を使うぜ。


「それでこっちに来てから初めて会ったまともな人ってクロエとイリスなんだ。とても感謝してるよ。こんな俺についてきてくれて。あんな話しても一緒にいてくれて」


「わ、私も感謝してるわよ……」


 そして褒め殺す。重い話をして相手の同情を誘い、そこから好感度を上昇させることを言う事で相手の懐に入り込む。恋愛のテクニックの一つだ。


 この技は親身になってくれる女の子であればあるほど告白した時の可能性が上がる話術だ。恋愛術の基礎は相手の心情をよく読み、上手く自分の望む方向に持っていく事だ。


「だからかな。俺にとって一番大切な人ってクロエ、お前なんだ」


「ば、ばかじゃないの」


 ちょろいと思うかどうかは人による。この技は最初からある一定以上の好感度が無いと成功しないし、強い言葉で語る事はご法度だと思っている。


 勢いのある言葉は確かに強い。しかし相談事をしている時に強い言葉を投げかけると引いてしまう事も多くある。その匙加減が難しい。


 今回はかなり上手くいっているしクロエの好感度が最初からマックス近いから成功したようなものだ。あとはフィニッシュを決めるだけ。


「なあクロエ」


「なによ……」


 俺が顔を近づけると、最初は少し下がったが途中から大人しくなる。近距離で目を見つめるとクロエは観念したかのように目を閉じる。


「三人でどうだ?」


「は?」


 俺は元の位置に戻り何食わぬ顔でのたまう。


「俺、クロエ、イリス。三人でどうだ?」


「は? 何?」


 クロエの顔が困惑に彩られる。俺が何を言っているのか本当にわかっていない顔だ。当然だ、キス待ちしてたのに途端に三人でとか意味が分からないだろう。


「三人で一緒にならないか」


「……」


 少しの沈黙のあと、クロエは意味を理解したのか真顔になる。怖い。


「つまりあんたはこう言いたいわけだ。3Pしたいと」


「どこでそんな知識仕入れたの?」


「うっさい!」


 クロエからやくざキックが飛んできて顔面に突き刺さる。思いっきり吹っ飛ぶが今度は意識を手放す事はしない。まだ言いたいことがあるからな。


「なあクロエ、何を勘違いしたのか知らないが、俺はクロエとイリスとずっと一緒にいようって言っただけだぞ。それなのに蹴られるとは。あと3Pって?」


「え!? いや、え!? 何!? どういうこと!?」


 よし勝った。ここまでくれば俺の勝ちだ。


「イリスが甘えたい時は甘えさせてあげればいい。俺はクロエが寂しい時、何か苦しんでる時に側にいてやるよ」


「ええ……? う、うん?」


 下げて、上げて上げて限界まで上げて、思いっきり落として初期位置に戻す。好感度の位置は変わっていないのに上げた感情の分だけ好感度が上乗せされる作戦だ。


 人をからかう時のテクニックの一つだな。実用性は皆無に等しいが。あと良い雰囲気をうやむやに出来る。別に逃げたわけじゃない。戦略的撤退だ。


「で、3Pってのを詳しく教えてくれよクロエ」


「ば、馬鹿じゃないの!!」


「なんなら実際にやってもいい」


「意味わかってるでしょそれ!?」


 こうして俺とクロエは前よりもずっと仲良くなることが出来た。親睦を深めることが今回の完全勝利の道のりだ。この仲間たちを俺はずっと大切にしていきたいのだから。


 別にへたれたわけじゃない。本当の本当に。

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