第25話 すまんな、頼りになりすぎて

 というわけで食事をとって準備を万全にしてまた屑鉄のダンジョンに向かうことにした。みんなのやる気も上がっていたし昼でも夜でもダンジョンの中ならあまり関係ないからな。


 ちなみに夜なので鍛冶屋はまた行くとしよう。


「さて、どこまでいけるか」


「目指すは最下層」


「私が全部消してやるわ」


「みなさん強気すぎる……」


 俺たちは馬鹿みたいにハイテンションだがフラフィーだけは正気を取り戻しひよっていた。また強化スケルトンが出てきたらどうしようと思っているのだろうが、今回は『鑑定』と『トオシ』を使ってごりおす。


 つまりは出てきた瞬間即叩く。ダンジョンの中に入ると前よりもずっと視界がクリアだった。呪いが解けた影響かはわからないが情報量に違いがありすぎた。


 罠の場所はもちろん敵の潜んでいる位置、そして次の階層までの道順まではっきり見える。前に通ったから見えている可能性もあるから過信はできないけど、明らかに強化されているだろう。


「ここから進むと右からスケルトンが二体出てくる。次は壁から一体くるぞ」


 とサクサクと出会いがしらを叩き潰す。フラフィーが防御をする必要は一つもない。一応隊列はフラフィーと俺が前衛、クロエが中衛、イリスが後衛となっている。


 ヒーラーだから本当はクロエが一番後ろだが、全員にバフをかける都合上と、クロエ自身も敵を消滅させられるのでこの形だ。


 それに攻撃力が一番あるのはイリスなのでもしもの時の温存ということもある。


「私することないんですが……」


 緊張感のないダンジョン攻略を三階層まで進んだ時フラフィーがぼやいていた。


「すまんな、頼りになりすぎて」


「それは……いいんですけど」


 なんだか半歩くらい距離を取られる。あれか、俺が女の子として意識したから距離感迷って照れてる感じか。愛い奴め。


「巨乳が憎い」


「ひぃっ!」


 いつの間にかイリスが接近しフラフィーの背後からぼそっとつぶやいた。それネタかと思ってたけどそろそろ本気の殺意を感じてきたよ。


 ただまぁ……余裕すぎるな。




 と思っていた時期が俺にもありました。そういえば五階層で引き返したとかそんなこと言っていたことを思い出す。


 そこは通常の人型のスケルトンじゃあなくゾンビとさらにでかいドラゴンゾンビまでいた。鑑定をかけてみた結果、明らかに俺よりも強い。そして土に埋まってないから奇襲も出来ない。


 ゾンビだけならなんとかなっただろうがドラゴンゾンビとか初心者の対応する魔物じゃねえ。


「なあイリス、あれやれるか?」


 冗談交じりで声をかけてみると不思議そうな顔をされた。どういう心境だよ。


 そしてイリスは杖を取り出し詠唱を始める。


「火の精霊、我が呼びかけに応え灼熱の炎を生み出したまえ。あ、出来るだけ強めでお願い、インフェルノ!」


 あれ、今普通に精霊に声かけてた? と思った瞬間凄まじい熱風が吹き荒れた。目を開けてられないくらい強い風だが、イリスはやり遂げた顔で平然としている。どことなくドヤ顔に見える。


 そして岩陰から顔をだし確認してみると地獄が広がっていた。


「余裕」


「おいおいまじかよぱねぇ」


 地面が溶けていた。もちろん魔物の残骸なんてない。しかしイリスの足元にはドロップアイテムが転がっていた。


「回収した。偉い?」


「お、おお。優秀すぎて言葉も出ないわ」


 どうやら敵がドロップアイテムを落としたのを確認して魔法で回収したらしい。そのままだと焼けちゃうからね、仕方ないね。でもドロップはほとんど屑鉄だけって寂しいな。


 こんな強い連中倒して屑鉄だけとか確かにだれも来たがらないわけだわ。ドラゴンゾンビだけは『腐食竜の骨』を落としたが使いづらそうな素材だな。


 『トオシ』を使って……いやこれももう透視で良いな。読み方違うし実際は視線を通してるんだろうけど使い方としては透視だしおっけーおっけー。


 透視を使って階層を確認しているが今のところ隠し部屋は一つも見つかっていない。五階層を突破し前人未到の六階層に行けば何かあるのだろうか。


 というか五階層で引き返した理由屑鉄じゃなくてドラゴンゾンビとかだろうな。かなりやばい敵だったし秘密裏にされたんだろう。屑鉄しか落ちないこととスケルトンが出るだけで普通の冒険者は近寄らないし。


 鑑定をかけて覗いたところ、スケルトンの強さは冒険者基準のB級くらい。探索者基準にすると特性と厄介さ混みでAに届くかもしれないくらいだ。


 つまり熟練の冒険者じゃなきゃ立ち寄ることすらしなくなる。そしてゾンビはどちらの換算でもB級、ドラゴンゾンビはS級に届くんじゃないか? ちなみに強化スケルトンは確認してないけどドラゴンゾンビよりやばそうだった。


 あれ? このダンジョンもしかしなくてもまだ攻略きつくね?


 ただ行けるところまで行ってみよう。イリスがでかいのは処理してくれるしやってやれないこともないと信じるしかない。


 しかし俺の予想は裏切られることになる。


「上と変わらんな」


「そうですねぇ」


 六階層からはまたスケルトンに戻っていた。というか上のやつらよりもろい。なんだこれ。こっちが普通のスケルトンの強さならC以下だな。まともに戦っても倒せるだろう。


 衝撃を通して倒すんじゃなく普通に叩き壊せる。潜れば潜るほど弱くなるってことなのだろうか。わからん。


「あれ、キミヒトさんこれは?」


「ん? おお、これは銀だな」


 八階層まで行ったときにドロップアイテムが変わった。今まで屑鉄ばかりだったが、銀がドロップした。これなら売れるだろうけどこの階層で銀って採算あわなさそー。


「銀は拾っていくか」


 屑鉄のドロップは全部は拾わずほとんどそのままにしてきたが、銀が手に入るなら拾って行った方がいい。鍛冶屋で見た時は結構なお値段がしていたしドロップ品売ると探索者としてのランクも上がるしな。


 銀なら珍しくもないしギルドに売っていいだろう。というか金策もしないと四人で暮らすのちょっと怖い。


「ドロップも切り替わったしここらで休憩入れるか」


「簡易結界はりますね」


「私は食事の準備をするわ」


「私も手伝う」


 みんながきびきび動き出したので俺のすることはなかった。階層をまたぐところで安全地帯とはいえ、何があるかわからない。透視を使って付近に怪しいものがないかをもう一度くまなくチェックする。


「しかし本当になにもないなこのダンジョンは」


 屑鉄のダンジョンは岩場をメインにしたダンジョンだ。しかし通路らしい通路もあって鍾乳洞とかそういった雰囲気を感じさせる。炭坑のように整備されているかのような場所もあったがかなり稀だ。


 ダンジョンの構造は切り替わったりするのでこれで固定というわけでもないが、歩きづらい形状じゃなくて助かった。


「ねえキミヒト、あなたスキルとったら?」


「え? ああそういえばそんな話あったな」


「忘れてたの? レベルは上がってるしスキルポイントもそこそこ入っているはずよ。もしあったらで良いけど収納スキルが欲しいわね」


 四人で潜っているためそれなりに大荷物になっている。それに今回は五日分くらいの食量を持ち込んでいる。三日で帰る予定ではあるが、予備無しで挑むのはあまりにも冒険がすぎる。


 それが収納があればその荷物問題が解決できるというわけだ。テンプレものだと次元収納とかアイテムボックスとか色々あるが、正直ないときつすぎるわ。


 ローグライクのダンジョンとかにすると半分も持てないだろうな。戦闘の事を考慮するとかなりきついし。


「おお、収納あるわ」


「すごいじゃない。収納の適正もってる人なんて全然いないのに」


 残っているスキルポイントの残高はぶっちゃけかなりある。女神特典のおかげもあるだろうが、スキルにポイントが振られていなかったのもでかい。


 俺の記憶は作り物だったため、スキルにポイントを振っていたと思ったが縛りプレイをやらされていたようだ。たしかに変に派生して呪い解かれたら面倒だしな。


「よっしゃとったぜ。たぶん全部入るわ」


「助かりますぅ……」


 荷物の量的にフラフィーが一番担いでいたから疲れていたんだろう。ロリ二人はポーションの類と水と食料を持ち歩き、俺は攻撃しやすいように最低限の食料と回復アイテムのみ。テントやかさばる物を全部フラフィーが背負っていた。


 盾は軽量化があるとはいえ非常に重いし全部で相当な重さになるはずだ。よく持ち運んだよマジで。貴族とかの冒険者で荷物持ちがいる意味がよくわかるよ。


 その後食事をして順番に仮眠を取ることになった。イリスと俺は今回は別々にするということでクロエと共に見張り番だ。

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