汚れたイエイヌを見つけたので虐待することにしたヒトの話 その後 イエイヌ視点


このお話は前話

『汚れたイエイヌ(雑種)のフレンズを見つけたので虐待することにしたヒトの話』

を読んだあとにお読みください


まだ読んでないかたはそちらを先に





…いいですか?






では本編どうぞ



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そんなことがあったのがもう五年も前の話です


あの人は突然、私の所に来たかと思うと嘗てヒトが暮らしてた、今は私とあの人が暮らしているこのおうちの『おふろ』に連れて私の体を洗ってくれました


その時、毛皮が脱げることを知りました


そしてキュルルさんをビーストから守った時に出来た怪我を手当てしてくれたり


汚れた私の毛皮を洗ってくれたり


葉っぱをお湯にいれたもの、紅茶というそうですが、それの美味しい淹れ方を教えてくれたり


一緒にお布団で寝てくれたり


遊んだり、お出かけしたり、じゃぱりまんを食べたりしてくれました


そしてそんな日々が続いたある日


ナナさん…私と昔一緒にいたヒトが戻ってきました


私はナナさんに飛び付きました


彼女のことは覚えてます


いえ、忘れたことなんてありませんでした


彼女も私が待っていたヒトでしたから


ナナさんと会話を交わしてるとあの人は私たちに声を掛けてきました


ナナさんのことを紹介していると

あの人は私達を気遣ったのでしょう


『良かったな、昔一緒にいたヒトと再会できて。もう俺がここにいる必要はないな。

その人と幸せに暮らせよ』


そう言って私達に別れを告げ、この場を去っていきました


それからというものの、ナナさんと一緒に暮らしましたが、時折どこか満たされないような感覚になりました


あのヒトがここから居なくなった翌日からずっとです


ナナさんとまた暮らせて嬉しい筈なのに…


楽しい筈なのに…


どうにも満たされない…


そんな不思議な感覚…


ナナさんに相談してみたらナナさんはこう答えました




『それは恋だね』…と




ヒトは好きな相手、自分が気に入った相手と『こい』というものをするのだそうです


その特別な相手と一緒にいたい、

その特別な相手に寄り添いたい、

その相手のことを気にかけ、

いてもたってもいられないもやもやした気持ち


そんな気持ちが『こい』なのだと…


ナナさんは私にどうしたいか聞いてきました


その時の答えは今でもはっきり覚えてます


『あの人と一緒にいたい』


ナナさんはあの人を探すのを手伝ってくれました


そして探し始めて暫く経ったある日、

『けんきゅうじょ』というところにいる、

博士と助手と一緒にいるかばんさんというヒトにあの人のことを尋ねました


そしたらあの人のいる場所を教えてくれました


何でも、かばんさんがあげたおうちをひとつ、あの人はそこで暮らしているんだそうです


私はそれを聞き、すぐにその場所へと向かいました


あの人が住んでいるおうちに着くと、後から追いかけてきたナナさんが『ちゃいむ』を鳴らしました


あの人が出てきました


私は気持ちを落ち着かせて自分の想いを伝えました



『私はイエイヌのフレンズとしてではなく

女の子としてあなたのことが好きです!!

私と一緒に暮らしてください!!』



それを聞いたあの人は私にこう聞いてきました



『またあの日々が戻ってくるんだぞ、それでもいいのか』



もちろんそれは承知の上でした


あの人との温かな日々が戻ってくるのは

私自身が望んだことでしたから




それから私たちはずっと二人で暮らしています


いえ、もうすぐしたら四人での暮らしになりますね


だって今、私のお腹には赤ちゃんがいるんです


しかも双子です


ナナさんによれば私たちイヌ科は少なくとも一度に2~3匹ほど子供を産むみたいです


あの人は今、私をソファーに座らせて


自分は私たちのごはんを作ったり、洗濯したり


私の分まで色々やってくれています


もし誰かに聞かれたらあの人はきっとこう答えるでしょうね


『俺がイエイヌのやる筈の仕事までやることでイエイヌという動物の尊厳を奪ってるのさ』


って


あの人は少し素直じゃないようで


あの人からすればこれも『ぎゃくたい』なんでしょうね


でも、私には分かります


あの人は


優しくて


暖かくて


ちょっぴり子供っぽいところもあるけど


そんなところが可愛い



そんな素敵なヒトなんだって



「おーいイエイヌ~。ごはん出来たぞ~」


「はーい!」



さて…それじゃあいただきましょう


あの人が私に作った葉っぱばかりの味が薄めのりょうりを




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作者から豆知識というなの補足


少し調べたところ

妊婦さんの食事には塩分や糖分が控えめな物

あとは野菜を多く摂取するのがいいみたいです

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