第15話 令嬢、メロウ・セレナーデ
「なんや、はーでぃはん。ごみぶたどもの調教から今度はがきのお守りに転職したんどすか? 相変わらず似合わん事しますわ」
ハーディらがマーリーから広場に出ると、そこには、オラトリオの刑殺官、レイラが待ち伏せていた。
ハーディとララが着たときには広場は受刑者で溢れていたと言うのに、今は人っ子ひとり見当たらない。
レイラは手首を慣らすように抜いた細剣でひらひらと八の字を描いて見せ、刀身が太陽を反射し目に眩しく突き刺さる。
ハーディとキリシマは突然の事態に「下がっていろ」とキャリーとララをマーリーの店内へと下がらせた。撃鉄と柄に手をやった両者は、瞬きひとつせずレイラと対峙している。
「……邪魔をするな、レイラ」
「あんたのしている事は正しいんだろうが……。悪いが俺も引く気はねぇぜ?」
ララは目立つ。言わずもがな、レクイエムで子供は珍しいから。もしもレクイエムで子供が発見されたなら、職員が迅速に外の世界へと連れ出すのが規則であり、原則であった。
ハーディがララを連れていると目撃情報を受けたレイラはただ職務を全うしに、刑殺官として二人の前に立っている。決して真面目とは言えないレイラが早急に駆け付けたのが、ハーディへの私怨が混じっていたのからなのか、知る術もない。
「困りますわぁはーでぃはん。あんた今受刑者や。れくいえむの規則は守ってもらわな。我儘言わんとあの子、こっちに渡してもらいましょか?」
「レイラ、俺は教えたはずだぜ? 受刑者に頼み事なんかするなと。如何なる時でも、刑殺官は相手を力づくでねじ伏せる者だとな」
それを聞くとため息をつきながらレイラは二人に背を向け天を仰いだ。
「なんでこないなったんやろなぁ。ほな――」
話途中に振り向き、レイラはハーディを見据える。
「――いかせてもらいましょか!!」
瞬間、レイラの細剣がハーディの首元目がけて突き出される。細剣の軽さと鋭さを活かしたなによりも速く正確な突き。レイラの得意とする一撃必殺の突きに、本人すら自覚を持たないまま命を奪われた受刑者の数は数えきれない。
――キィン!!
ハーディは左手に構えたハロルドでそれを受け流す。
細剣が目指す切っ先の方向を変えると、右手のデイトナをレイラに目がけて発砲した。
合わせるようにレイラが首をかしげると、弾丸は紙一重でレイラの頬を掠めていく。
発砲音が遅れて聞こえ、鳴りやまぬ間にハーディは距離を取った。
――ビーッ! ビーッ! ビーッ!――
ハーディの腕途刑から警告音が鳴り響く。
「はーでぃはんがおらんくなってからも……。うちは毎日毎日受刑者相手に揉まれてたんどすえ? そんな下手な鉄砲は打っても当たらんわ」
「――後ろががら空きだぜ。お嬢ちゃん」
――ガキィイイン!
死角に入っていたキリシマがレイラの背後から刀を斬り落とすが、レイラは即座に反応し、振り向きもせずそれを細剣で受けた。
キリシマの刀とレイラの細剣がぶつかり合い、高い金属音と一瞬の火花が散った。剣士同士の真剣勝負。それは一瞬の火花が散る刹那の間に互いの生死が決定する、瞬刻の油断が許されない見切りの境地である。
「二対一だけど悪く思うなよ。お嬢ちゃん――」
キリシマは踏みしめた地面を蹴り飛ばし、全体重に加え全脚力を刀へと伝わせ、一気にレイラをふっ飛ばした。
レイラは這いつけようと足こそ地面に踏ん張るものの、キリシマの怪力によるその勢いを止められずにマーリーの壁に叩きつけられる。
「がはっ!!」
壁に叩きつけられた衝撃でレイラの肺は一瞬呼吸を忘れた。
その機を逃がすまいと、再びキリシマが縮地し追撃の二打目を斬りかかる。
レイラは壁に背をつけながらも、咄嗟に細剣で再びそれを受けたが、今度は後ろに逃げ場はないうえ、細身のレイラはキリシマの腕力には到底敵わない。ギリギリと必死で細剣を前に押し出そうと鍔迫り合いをするがまるで動かず、その隙にレイラの頭にハーディはデイトナを突き付けた。
「ゲームオーバーだ。レイラ。ここが引き際だぜ」
「……はは。流石にこん二人には分がわるいなあ。堪忍やではーでぃはん」
レイラから発せられた降参の言葉を聞き、キリシマは刀入れていた万力を引いた。
潰されるように圧し掛かっていた力が抜けたレイラは、一瞬目を離したハーディに細剣を突き出す。
即座に対応しハーディは避けようとしたが、それは間に合わず、わき腹からポタポタと血が滴ってくる。
「おい! 大丈夫か!? ハーディ!」
「心配するなキリシマ。かすり傷だ」
「あきまへんなぁはーでぃはん。受刑者相手に手段を選ぶなと言っとったんはあんたやんなあ?」
――ハーディはああ言ったが、あの出血量……。致命傷にはならなくても、もうレイラの洗練された突きを避ける事は容易ではないだろう。キリシマは即座に判断し、早期に決着をつけるべきと、不意にレイラに斬りかかった。
しかし、今度のレイラは剣筋を受けなかった。レイラ自身も常人と比べれば人並外れた腕力を誇っていたが、キリシマとの二度に渡る鍔迫り合いで腕力に圧倒的な差があると学習していたからだ。レクイエムにおいて学習能力の有無は自身の生存に大きく係わってくる。力で勝てないなら決して相手の土俵で勝負せず、自分の領域に相手を踏み込ませればいい。キリシマの刀を細剣で水を斬るように受け流し、そのまま流れるようにキリシマの肩に突き出した。
キリシマは上半身を捩ってそれを躱そうとしたが、無駄を一切排除した神速とも呼べる突きの軌道を避けきれず、細剣は肩をかすめて出血した。
「ぐっ!」
キモノの切れ間から血が滲む。
レイラの細剣を避ける事に集中し、瞬時体勢を崩したキリシマをレイラは見逃さなかった。
キリシマは刀を合わせたのでは間に合わないと咄嗟に判断し、細剣を潜りそのままレイラに体当たりした。
再び突き飛ばされたレイラは一旦キリシマから目を離し、そのまま突き飛ばされる先にいたハーディに向けて細剣を突き出す。
ハーディはその突きに合わせるように腕を引き、細剣を握るレイラの右手首を自身の左手でがっちりと掴んだ。
「まだや!!」
自由の奪われた右手を捨て、レイラは左手で腰に掛けたナイフを抜き、ハーディに突き出した。
ハーディは無情にもそのナイフを右手に持ったデイトナではじき飛ばす。
――キィーーーン……
オラトリオにあるどの建物よりも高く宙を舞ったナイフが、レイラの背後にただ空しく落ち、周囲に乾いた音を響かせた時には既に決着はついていた。
「ぐっ! 離せ! 離さんかい! 汚い手で触るんやない!」
レイラは左手で自身の右手首を掴み、力を入れてなんとかハーディから振りほどこうとしたが、腕途刑が課されたその腕がそれを許さない。
腕途刑から発せられるけたたましい警告音に、レイラの焦燥感がかられる。
「レイラ。てめぇの腕力じゃ一回俺に捕まったらもう振りほどけねぇ」
「それがどないしたんや! どんな状況でも諦めるな言うたんはあんたや!」
レイラの必死の抵抗も、腕途刑の警告音にかき消されつつあった。まるで力なき子虫が子供の手に握られているように、その足掻きは無意味だとレイラもわかっていたはずである。
「仕事は絶対にやり遂げろ言うたんはあんたや! 敵が誰だろうと必ず勝て言うたんはあんたや!」
先とはうって変わって、今度はキリシマがレイラの背後に立つ。
レイラは振り向き、刀を大きく振りかぶったキリシマの姿を目にした。
「刑殺官は死ぬまで受刑者に弱み見せたらあかん言うたんはあんたやないの!!」
ハーディは必死で抵抗し続けるレイラをただ静かに見つめていた。
レイラはその事に気付きハーディの顔を見つける。目が合った瞬間にレイラからは力が消え、全てを諦めたのか、虚勢の仮面が剥がれたのか、刑殺官としての威厳が揺らいだ。
「……なんで。なんで何も言わずに! いきなりうちの前からいなくなったんや!? はーでぃはん! うちはあんたの部下やろぉ!? あん時約束したやないか!」
「……すまなかった。レイラ、俺はエウロアに会いに行ったんだ。どうしても、行かなくてはならなかった」
それを聞くとレイラは薄っすらと涙を浮かべて膝から崩れ落ちた。
レイラから敵意が消えた事を悟ったハーディは掴んでいた手を離し、キリシマはいつの間にか刀を鞘に納めていた。
「……ずっと不安やった。はーでぃはんがいなくなってからうち、いきなり官長にされてもうて……。そんなんできへんよ。えるびすはんも、……えうろあはんもいなくなって。はーでぃはんまでいなくなったら、うち、もう生きていけへんよ」
ハーディはレイラの頭にただ優しくポン、と手を置いた。まるで泣いている子供をあやすかのように。
「泣くな!」
ハーディの怒声を聞いたレイラは袖で涙を拭きすぐにハーディと距離をとる。すでにその顔は無慈悲な女刑殺官、レイラ・チルアウトに戻っていた。
「なんか白けたわ。今日は帰らせてもらいます。その子は好きにしたらええ。せやけどな――」
レイラは細剣をハーディに向け、殺意を露わにし睨み付ける。
「はーでぃはん。次なんかしたらほんまにぶっ殺すで?」
ハーディは「やれるものならやってみろ」と言わんばかりにニヤリと笑い返す。
レイラはなにかが吹っ切れたのか、細剣を鞘に納め、マーリーの屋根へと飛び去って行き、その姿は見えなくなった。
「あーあ……。厳しいねえ。あんなかわいい嬢ちゃんなのに」
「ハッ。弱みを見せてる内はまだまだ半人前だ。それに、ホントに殺す気できていたなら、広場に出た瞬間死角から襲ってきていたはずだ。まだまだあいつも甘ぇ」
「よく言うぜ。あんた、その銀の銃も使ってねえくせによ」
「てめぇこそ。左利きじゃかったのかよ」
目的はララを守る事。レイラを傷つける理由などなかった二人は、肩に降りたほこりを払うが如く、一切の無駄を省いたのかもしれない。
それはレイラにも同じく言える事だった。
ハーディはレイラが得意とするあの奇襲を使ってこなかった事に、戦闘の始めから気付いていた。互いの腹の探り合いは、ケガをした二人が勝ち、至って無傷なレイラが負けると言う結果を招いた。
店の中から見守っていたキャリーとララが外に出てくる。
「あの! 二人とも大丈夫ですか!?」
「……ハーディ。血出てる」
「あれ!? ララちゃん! 俺も肩から血出てるけど見えないの!?」
キリシマは肩の傷口をララに精一杯アピールした。
だが、ララは「そんなの知らない」とまるで興味を示さない。
「なんにせよ、ララちゃんが刑殺官公認……いや、黙認になったところで、さっさとコンツェルトに行くとするか」
「ダメです!」
景気よく出発しようとしたキリシマをキャリーは止める。
不可解な面持ちを隠せなかったのはキリシマだけではない。
「二人とも血が出ていますよ。ちゃんと治療をしないと」
「かすり傷だ。ほっときゃ治る」
「俺の方も浅い。そんなには切れてねえよ」
平気だと言い張る二人であったが、キャリーは聞かない。
「あの、せめて包帯くらいは巻いてください!」
キリシマは「こりゃ聞かねえぜ」とアイコンタクトを送り、ハーディは「めんどくせえな」とため息をついた。
〇
キャリーはリップからマーリーの救急箱を借り、二人の傷に脱脂綿で消毒を施すと、その上から絆創膏を張り付けた。二人が自説したように、確かに出血こそしているものの、傷は浅く、なによりレイラが細剣をよく手入れしているのか、傷は綺麗なもので、どうやら跡も残らず治りそうなくらいだった。
「よし! あの、とりあえずこれで大丈夫です!」
「ハーディ、痛い?」
「あれぇ? ララちゃん! 俺は心配してくれないのかな!?」
ララは「うるさい」と言わんばかりの不機嫌面をした。
どうもキリシマを本能的に拒絶しているらしい。
「ララ。あんた男を見る目あるわよ。将来が楽しみね」
リップはララに嫌われるキリシマを笑いながら、椅子に座る二人の傷をパアンと叩いた。
「――っ!!」と、声にならない叫び声が二人分あがる。強がってはいるが、かなり痛そうだ。
「なにしやがる」と怒るハーディとは対照的に、キリシマは達観しているようで、傷口を抑えるばかりである。
「旦那達、今日は無理しねえで泊まってきゃあいいんじゃないですかぃ?」
「いや大丈夫だ。時間がもったいねぇ。おら、行くぞお前ら」
ポールの心配もよそに、ハーディは立ち上がると、先陣を切ってマーリーの扉を開けた。ビズキットの動きがわからない以上、遅れを取るのは適切とは言えず、さらに言えばエルビス、解放軍、そしてシシーもいつまで滞在しているのかわからないのである。旅は急を要しており、ハーディはその心配を危惧し、残る三人を引っ張るように広場へと躍り出たのである。
ハーディが広場を見やると、そこにはまたしても女が立っていた。その女は女刑殺官ではなかったが、ハーディはつい先ほど、レイラが立っていた時よりも更に衝撃を受け、ゆっくりと振り向いたその女と目が合った途端に、扉を勢いよく閉ざした。
「だ、だめだ! まだ傷が痛む! おいポール! 奥の部屋借りていいか!?」
マーリーから出たと思えば、直ぐに回れ右をしたハーディの顔は引きつっていたように見える。
「早くしろポール!」とハーディは急かしたものの、既にその頃には手遅れで、先ほど広場に立っていた女がカランカランとマーリーの扉を潜ってきた。
「やっぱり! ハーディ様! やっと見つけましたわよ!」
「ハーディ様ぁ!?」
キャリーが驚きの声をあげるが、その驚きの対象となったのは見た目も含めての事だった。
その女は刑務所には似つかわしくないワンピース調のドレスを着て、艶のある茶髪はしっかりと巻かれており、爪はピッカリと整えられていて唇には赤がさしてある。
どこからどうみても文句のつけようのない令嬢だと思わせたが、よく見ると右腕にはしっかりと腕途刑がされていたのだ。そしてなんと驚く事に巨乳のリップより更に胸が大きかった。
この時の衝撃を後にキリシマはガストロ襲撃と同程度であったと語るがその真偽は定かではない。
「……お、おう。久しぶりだな『メロウ・セレナーデ』。まだレクイエムにいたのか」
ハーディはメロウと顔を合わせたが、相変わらず顔が引きつり目は泳いでいた。今まで見たことのない表情を見せるハーディに一同は驚きを隠せずにいる。
「コンツェルトに居ましたら、風の噂でオラトリオでハーディ様を見たと聞きましたからここまで馬を走らせましたのよ! まさか本当にいらっしゃったなんて! なんと運が良いのでしょう! 今日は最高に幸運な日でしてよ!」
「あの、えっと……。ハーディさん、この方は?」
「あら、ハーディ様。なんですのこのペチャパイ小娘は? 私というものがありながらこんな小娘に手をかけてらして?」
「ぺ……ペチャパイ小娘ぇ!?」
「お嬢さん。俺はキリシマってもんだがな――」
いきなり店に入ってくるなり、なんの事情もわからないまま、仲間に好き放題言われてキリシマが黙っているわけがない。キリシマはサムライらしくきっとこの女に一言モノ申してくれる。
リップ以外の人間はそう信じたかった。
「あんたの胸、もしかしたらレクイエムで一番でかいんじゃないのか?」
全員が心の中で「ああ、忘れてた。こいつキリシマなんだった」と失望した。
「あーらお上手です事。でも失礼。私にはハーディ様がいますので。……ささ、ハーディ様。私とともにオンセンなどいかがでしょう? 実はもうコンツェルトに宿を取っていますのよ」
嬉しそうにメロウは固まるハーディの左腕に抱き着き、無機質な違和感に気付いた。目をみやると、そこには腕途刑が課されている。
「メロウ、俺は今や受刑者だ。てめぇとは立場が違う」
「まぁなんていうことですの!? しかしながらハーディ様。私はハーディ様とでしたらレクイエム暮らしでも構いませんことよ? 受刑者と管理者。身分の違い。いいではありませんか! 障害が多ければ多いほど、愛に磨きがかかると言うものですわ!」
「レクイエム暮らしも構わないって……。あの、だってメロウさんは既に管理者としてレクイエムで生活してるんですよねえ?」
キャリーの疑問に答えたのはハーディだ。
「メロウは仕入屋だ。レクイエムにいるのなんざ長くても一週間ってとこだ。外から持ってきた品を売りさばいたらまたすぐに外に帰っちまう」
「そうですのよ。昔仕事でこちらに訪れた私を金品目的で襲う輩がいまして……。その時! ハーディ様は私をお助けくださったんですの!」
襲われたのは金品目当てじゃなくてこの高飛車な性格にイライラしたからなんじゃ、と誰もが思ったが口にする者はいなかった。
「私は運命だと直感しましたわ! ハーディ様、是非今度は私を娶ってくださいまし!」
この唯我独尊な女に対抗する者が現れる。彼女はハーディの右腕にひっしと捕まり、放す素振りを見せなかった。
「ハーディ、渡さない」
「なんですの? このちびっ子は?」
「あーそいつぁ、ハーディの旦那がぁ――」
言いかけたポールをハーディは睨み黙らせる。出来れば部外者にララを拾ったなどと言わない方がいいと判断したためだ。もし他の人間が再びレイラに報告を入れでもしたら、レイラはまた、それに応じなければならないだろう。万が一見て見ぬふりをしたなんて噂が立てば、刑殺官としての箔が下がり、街の秩序の乱れに繋がってしまうからだ。
「ハーディ様の……。一体なんですの? まさか! 子供だとでも言うのですか!?」
メロウは目を見開きポールを睨む。
ハーディの時には耐えられたのに、あまりの眼力にポールは怯み、目を逸らしてしまった。
「えぇっと……。俺っちは情報屋だけどぉ……。なぁんにも知らないっていうか」
隙を見てララは強くハーディの右腕を引っ張った。
左腕にはメロウが、右腕にはララが。良くあるこの状況、最後は引っ張られた対象が真っ二つに、というのがお約束である。
「ハーディは私の。渡さない」
「このちびっ子! 離しなさい! いいんですのよハーディ様。例えあなたに子供がいたとしても。私は全然余裕でこれっぽっちも意に介しませんわ! あの方亡き今、ハーディ様のおそばには私の様な女が相応しいのではなくて? そうですわ! ねえちびっ子。三人で幸せな家庭を築きましょう! ささ、早速外に――」
「あ、あの……。ちょっとそれは不味いんじゃ」
「あんた、店に入ってきてから好き勝手言ってくれてるけど一体なんなのよ!? あんた誰――」
「あーら、なかなかどうしてあなたもいい胸をしてらっしゃいますわね。ま、それでも私ほどではありませんけど」
「なんだとごらあああああ!! 大きさより張りと形だろうがあああああああああ!」
「おいおいリップよぉ。頼むから店の中で暴れんじゃねぇぜぇ? まだ営業中なんだからよぉ!」
「お嬢さん、よかったら俺にその胸ちょっとだけでいいから……。なんなら刑期をお支払いしますから少しだけ……。ねっ? 一ッ分、いや! 十秒でいい! ……触れさせてもらえませんかね?」
「あんたその手つきやらしいのよ! いい加減にしなさいよこのドスケベ!」
「あの……。キリシマさん……」
「おいリップ! とりあえずその椅子を降ろせよぉ! 店を壊さないでくれぇ!!」
「わかった! 五秒! 五秒だけでいい! なっ? なっ? 先っちょだけでいいから!」
「ハーディは私のー」
「だから離しなさいこのおチビ!」
「いい加減にしやがれ!」
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