神戸踏青



 火柱は予想より小さかった。

 思うように燃えない。風は少しだけ吹いている。うまく燃えない。

 普通のワトソン紙であればよかったのだけれど、あいにくボードだった。四苦八苦しながら僕は絵を焼いていった。

 火種は次第に大きくなり、それを包み込んでいった。その様子をひたすら眺めた。

 あたたかい。燃えているからではない。灰になっていくその光景が、妙にあたたかく感じられる。安堵とは少し違う。満たされていくという風だ。

 夕暮れが外で全てを享受している。僕は校舎の陰で絵を焼いている。ちょっとまっていてと、すぐ行くと言った。けれど夕暮れは待っていてはくれない気がして、僕はできるだけ急いだ。

 灰の中から、燃え損なった小さな欠片を取り上げた。なんにでもなくなったものを取り上げた。何でもないそれに満足して夕暮れに戻っていった。



 うわの空だ。

 全ての授業が終わった後、職員室に呼び出されたからだ。そのまま進路指導室まで連れて行かれたからだ。部屋のテーブルに僕の提出した白紙の進路調査票が置かれていたからだ。説教を受けた。教師は満足そうにして、僕は指導室を出た。

 部室へ向かい、うわの空のまま絵を描きはじめてしまったからだ。または、それがしたかった。いずれにしろ、そのせいで僕は失態を演じた。

「悪い、勝手に見て」

 言葉の後、静けさがやけに鮮明だった。

 冷静な風な声がよけいに怖く感じられた。隠すように絵を抱えたまま、おそるおそるその生徒の顔を見上げると、やはりました表情でいて、いよいよ僕は気を保つのに精一杯だった。

 絵を見られた。僕はその時死にたいとさえ思った。もしくはこの同級生が死んでしまえばいいと思っていた。汗が噴き出していたけれど、それさえも恐怖した。僕の中の泥のような濁ったものが、その汗に混じって外へ漏れ出ているような、そしてそのことを同級生は勘づいて指摘してくるんじゃないかと思った。知っている顔だった。

「なにか用事?」

 いかにも何でもないといった態度を装った。出来は悪かった。あまりに演技が酷すぎて、もう喋るまいと口をつぐむことに決めた。が、ダメだった。

「べつに。絵、見せてくれない?」

 よりいっそう強く、絵を抱え込んだ。

 僕はその場から逃走した、かった。その想像が一瞬だけ頭をよぎって、けれど無理だった。身体は硬直していて、変に足の力は抜けていた。ただ、目の前の同級生の言葉が恐ろしくてしょうがなかった。それだけは聞きたくなかった。

「ごめん、あんまり。完成もしてないし」

「それでもいい」

 いい。よくない。未完成だって、完成していたって、ずっと見せる気はない。僕以外、この絵を誰も見ることはない。学校でだって、本当は描く気はなかった。うわの空でなければ、空しくなんてなければ描く気はなかった。

「悪いけど、見せられない」

 否定することは苦手だった。けれど今回は仕方がなかった。否定することより、恐ろしい事態に直面してしまったのだから。暴かれてしまうからだ。

 口の中が乾く。ないはずの唾液を飲み込む。なぜか、正体のわからないばつの悪さがあった。

「そうか。わかった」

 同級生――鈴木は顔色を変えずそう言った。わかっているようには見えなかった。

 鈴木とは同じ学年だが、クラスは別だった。けれど存在は知っていた。素行の悪さが有名なのだ。だからこの部室、美術室にいること自体がそもそもよくわからなかった。何のためにここにいるのかわからなかった。そういえば、僕もわからなかった。

「ちょっと聞きたいんだけど、それ、空の絵?」

 今度こそ、つばを飲み込んだ。一気に戦慄せんりつした。まさしくその通りだった。

「そうだけど」

「あの空の? あの窓から見た?」

「そう」

「今か? 今見て描いた?」

「そうだ」

 僕と鈴木は部室の窓から見える奥の風景を、同じ風景を見てそう会話した。日が落ちる途中の風景だ。根掘り葉掘り聞かれることに抵抗があったが、僕はすべて肯定した。なぜか正直に答えていた。そのうち、なんとなく答えなければよかったと、曖昧あいまいなものに変わっていた。

「化け物が」

 額から腹の底に、ひやっと冷たいものが落ちていった。深い、真っ暗な谷へ落とされた風だ。

 鈴木は、本気でそう言ったみたいだった。僕はというと、もうどうにかなりそうだった。なりそう、というのは、実際にはそうはならなかった。鈴木が笑っていたからだ。純粋に笑っていた。いたずらっぽく笑ってた。悪意のないものだった。

「おまえ、あれが、そんな風に見えてんのか」

 鈴木は僕が抱えている絵の方へ目を向けたまま、背後の窓を指で示した。僕は、ああ、とかなんとか言った気がした。そんなことはどうでもよかった。少し気を取られた時に、鈴木は僕の手から絵を奪い取っていた。

「おい、かえせっ」

 人生で一番と思うくらい焦っていた。涙目にさえなっていたと思う。忘れた。

 ただ、鈴木は狼狽ろうばいする僕をお構いなしに部室をはしゃぎまわっていた。こちらの存在など眼中にないといった様相だった。夢中に絵に食いつき、外を眺めたあと、また絵を見だしたり、動き回っていたかと思えば突然立ち止まり、長いため息を吐いたりした。

「嘘ついたな」

 鈴木は僕の方へぐるっと顔だけ向けると、にやっと一回、口元を動かした。そのまま絵をこちらへ見せ、一部を指さした。

「ここ。まだ今日、塗りつぶしてないとこ。塗りつぶす前の絵のとこ、やっぱり上手い。美術の吉野に褒められてただろ。でも上書きしてる。なぜ? それは、おまえが本当はこんな――」

「うるさい」

 絵を奪った。案外、すんなり取り返すことができた。そして鈴木も特に追いかけることもしなかった。いたって普通の様子で、余裕な態度だった。

「それ完成したら売ってくれよ」

「何言ってんだよ、バカか?」

「バカは絵を買っちゃいけないのか? 七万円。これ以上はちょっと厳しいわ」

「七万って」

 疲れていた。めっきり僕は疲弊していた。進路とか、説教とか、絵とか、鈴木とか、色々と僕をひっぱったりつかんだりするからだ。けれど、どうしてか不思議と、次第に自分が落ち着いていくのがわかった。鈴木に絵を見られたことは、さほど重大な、危険なことではないのだと、僕は潜在的に理解していく風だった。

 鈴木は僕と似たようなものを見ているのだとわかった日だ。今日という日は、僕が暴かれた日だ。



 ある一件を経て、状況は少しだけ変わっている気がした。または、僕自身がそう思いたかったかのどちらかだ。

 僕は絵を描くのをやめた。それまで描いていたものは全て処分した。もとより、もう三年生の夏だ。引退自体、すぐそこであって、何の伝統もない廃部寸前の美術部に固執こしつする理由はなかった。また、逆も同じで偉大な由緒があったとして、こだわる理由もなかった。ただ絵を描くことをやめた。

 それでいてなお部室にいるのは、途中にしては乱暴すぎる絵を終わらせるためだった。あの風景を切り取って、形にして取っておきたいと思ったからだ。完成させるまではここに来ようと思った。

 単純に鈴木は美術部の幽霊部員だった。部活動への所属が原則なため、無断欠席の許されそうな文芸部を狙っての入部かと思っていた。鈴木は「そうだよ」と笑っていたけれど、半分は嘘だと感じている。

 彼は僕の知る誰よりも事情や物事に対して真面目だった。絵だけでなく、音楽や詩や本も好んでいるようだった。好んでいるというより、そのもの。よくわからないけれど、鈴木はそいうものと一緒に息をしている風だ。

 完成した絵は鈴木にあげようと思った。買うだとか、言っていたけれどそれは断った。そんな価値のあるものではない。けれど、鈴木いわく、絵の価値は買い手が決めるものとのことだった。僕はそうは思わなかった。

 とにかく、こうしてまだ絵を描いているわけだった。

「進路?」

 僕らは結果的に迷子だ。鈴木は次に、知らない、わからないと言った。そして、適当でいいだろ、とも言った。それには頷く他なかった。

 彼も進路調査票は白紙だという。彼が調査票を配られた時、その場で紙を食べてしまったという話を聞いて、僕はありえないほど呆れた。その後ありえないほど笑った。鈴木は、おまえが笑っているのは気持ち悪いと顔をしかめていた。

「実際、何がしたいかって、わからない」「鈴木はなりたいものとか、就きたい職業とかないの」「ない。あ、街からでたいとは思ってる」「フリーター?」「いやいやそうじゃなくて。この街から出る、という行動、そのものをしたいだけ」

 鈴木とは取り留めのない話をよくした。誰にも話したことのないような話をした。他の誰にも話したくない話をした。おそらく、彼も僕以外には喋らないようなことを言っていた。今まで隠してきて、そっとしまっておいたものを僕らは腹の中からおずおずと互いに持ち出して、少しずつ並べたりして、風景などの話をした。

「とりあえず俺はおまえが描いている絵を待っている。それをしている。それ以外に俺は何もない」

 不意に動かしていた筆が止まった。鈴木に気がつかれる前に僕はまた筆を動かし始めた。僕もまた、鈴木のように何もなかった。

 最近、こういったことを考えることが増えている。先日から、それは顕著けんちょだった。

 戸惑とまどっているようにも思う。困り果てている。いくら考えても、まとまらないし、そもそも何をどう決めたらいいのかがわからなかった。中学生の僕はこんな感じか、高校生の僕はこんな感じか、そう漠然ばくぜんと想像できていたものが、この頃になって途端に消えはじめた。行く末が見えなくなってきていた。

 進路調査票が書けない。別に調査票じゃなくたっていい。僕は、僕を決めるときに何一つ明確に書くことはできないと思う。不明につき依然いぜんとして誰でもない。

 なんでもないことのように何かを取り決めて、さっさと先へ進んでいく同級生たちが、化け物に見えてきたのはこの頃からだ。

「しょうがないって。だって、しょうがないだろ」「え?」

 僕が少し驚いた後で鈴木は進路、と付け足した。

「そんなんは、どうだっていい。それより、絵、もう描かないのか?」「なんで?」「今までのやつ、全部捨ててただろ。乾かしてた途中の油絵も」

 僕は鈴木に絵をやめることを伝えていなかった。それにしても、彼は僕のことを注視しているようだった。

「描かないよ」「なぜ」「描いたからって、どうにもならない」「まあ、うん。そうか。最後の、その絵を手にできるだけでも御の字だな」

 鈴木はもっと食ってかかってくるかと思っていけれど、予想に反してずっと大人しかった。

「はじめの頃、その絵、見せたがらなかったよな」「うん。単純に、変でしょ。なんか暗いし、綺麗じゃない」「嘘つけ。そんな適当な理由であんなに慌てるかよ」「なんだっていいだろ」

 少しだけ、しんどくなった。今日はもう帰りたいと思っていた。

「それがおまえの本心だからじゃないのか」

 二度目だ。僕は今度こそ筆を止めた。

「純粋におまえが描いた絵だからだ。その絵はおまえだからだ」

 顔を上げると、鈴木が僕を澄ました表情で見ていた。けれど、悪意は少しもなかった。それから彼があくびを大きくしたので、僕はいつの間にか全身に入っていた力を意識しながら抜いた。

「暴かれるのが怖いからさ」

 僕はそれだけ言って、再び筆を取った。鈴木は何も尋ねては来なかった。

 化けの皮は上出来だ。それは自負していた。けれど、それを意識したのは中学生の時だった。何がきっかけかは忘れたけれど、担任の教師から素直で良い子だと褒められた時だ。別に僕は素直で良い子などではなかった。なんとなく、大人が喜びそうなことを言ったり、周りに同調したりすることを意識して暮らしているだけだった。それまで、いかにも普通にそれが当然だった。本当のところ、今でもそう思っている節はある。でも、違うことに気がついた。それから僕は自分を見失う感覚を背負う羽目になった。

 それらに付随ふずいして、人との齟齬そごが目立つようになった。誰も立ち止まらないところで動けなくなったりした。徐々に同級生たちが遠くに感じられるようになった。空のあった風景が思い出せなくなった。

「ちょっと休憩しようぜ」

 鈴木が椅子から立ち上がって言った。ぐらっとした頭を抑えて、僕も席を立つ。今日はもう、これ以上は描けないなと思った。

「休憩って、鈴木は何もしてないだろ」「座ってるだけってのも、疲れるんだよ」「じゃあ見てないで帰ればいいのに」「惚れた絵の作成過程だ。見ないでどうする」「気持ち悪いなそれ」「おまえ自身じゃねえよバカ」

 部室を出てから自動販売機に寄って、それから屋上へと向かった。教室棟の屋上と違い、部室棟の屋上は常時開放されていた。使用する生徒はほぼいなかったけれど、人気のない方が都合が良かった。前からその場所がわりと好きだった。

 夏の匂いの中にコーヒーの香りが混じった。鈴木は缶コーヒーを買っていたようだ。僕はオレンジジュースにした。わかりやすい、単純っぽい甘さだ。なんというかそういう気分だった。

 僕らは喉を鳴らしながら、夕暮れを見たり下の方の街を見たり、時に上の方を見て息を漏らしたりする。適当なことを喋って、適当に時間を過ごした。けれどそれが多分大切だった。

 鈴木は煙草を吸い出し、柵から手を伸ばして中庭へ灰を落とした。僕はそれを、目をすがめて見ていた。それから、半分くらいの長さになった煙草を、火種を残したまま同じく落とした。

「どうなっても知らないよ」「どうにもならねえよ。それより、勝負する」「は?」「あの吸殻が最後まで燃え尽きたら俺らの勝ち。その前に生徒か教師に見つかったら負けだ」

 意味がわからない、ということは言わないでおこうと思った。それが、すごく楽しいことのような気がしたからだ。

 夕暮れが僕らを掴み、離しを繰り返していた。しばらくこのままでいることにした。この風景の中に隠されて、自分が見えなくなっていくのを想像して、たまに夏の匂いを吸い込んだりした。

 もう夏休みが、夏が鼻の先にある、ない。わからない。



 夏休みに入る直前くらいだ。絵がずっと完成しないものだと思っていたわけではない。ただなんとなくそれはずっとそういうものだとばかり、うっすらと感じていたのだった。

 完成したそれを見て、なんだかあっけないようで、僕は無言のまま部室を出て、トイレの鏡の前で顔を洗った。部室に戻ると鈴木が絵を見ていた。じっと静かに見ていた。その姿に、僕は少しだけ恐怖を感じた。

「終わった。持って行っていいよ」

 鈴木は、ああ、とだけ言い、また絵を黙って見ていた。このままここにいてもしょうがないと感じて、彼を残し僕は部室をあとにした。

 目的があるでもなく校舎を歩き回った。空しさが校内のそこらじゅうに沈んでいた。このオレンジは(オレンジのようなもの)空しく、どこまでも追いかけてくる。完成させたのは、いいことだろうか。しんどい。ただしんどいだけだった。

 廊下の途中で僕はついにどこへ行けばいいのかわからなくなった。何がしたいのかもわからない。足が止まった。そこにいるという状態を維持するのでやっとだ。余力で壁の方へ近づいていき、背を預けてずるずると座り込んだ。そして完全に動けなくなった。

 何かを考えることをやめた。しんどい思いをするだけだからだ。けれど考えることを強要される。学校はそういう場所だ。背中を押されて進まなければならなかった。ぼやけた視界の中、ピントのずれた風景の中を頼りもなく歩いていくしかなかった。

 昔の風景が思い出せなかった。途中まで、ある程度まではそれなりに歩いてこれたけれど、この先は無謀だった。軽々とみんなは進んでいくけれど、僕はその微かな足跡の上をおっかなびっくり辿っていくだけだ。

 何かが決定的に足りていない。年齢が高くなれば、おのずとわかっていく。わからない。

 子供が大人になっていく過程かていの話だ。僕がそれをしくじった話だ。今まさにつまづいている話だ。

 調査票には進学と書こう。みんなと同じ、誰でも入れるような大学だ。今からでも入れるような地元の。鈴木には、滑稽こっけいと思われても仕方がないと思った。

 しんどいから、もうやめにしよう。しばらくそのままそうしていた。つま先にかかった空しさから足を引いてうずくまった。

 どれくらい経ったかはわからないけれど、そう長い時間ではない気がした。いつの間にか腰を上げて、部室まで戻ってきていた。扉を開けると鈴木がいて、進路指導の教師がいた。なにか口論をしているようだった。僕らの間に紛れ込んだ、ちりのような、闖入者ちんにゅうしゃみたいな、邪魔をされている風だ。その光景を見てなんとなくそう思った。

 鈴木が僕の絵を隠すように抱えていた。部室に入ってきた僕を教師が見つけた。

 見つけて、鈴木の手から絵を奪い取った。彼以外の人に、僕の絵はさらされた。

「なんだ、おまえ芸術家にでもなるのか」

 教師は少しだけ笑って僕を一瞥いちべつした。悪意のある笑いだった。僕は僕で、この人はなぜ急にそんなことを言い出したんだろうかと思っていた。なぜ、それが道の話になるのかと、不思議でしかなかった。胃液がこみ上げてくる。

 鈴木はその教師を殴った。それにはかなり驚いたけれど、彼がすぐに絵を引っつかみ、僕の方へ差し出し、ごめん、と謝った。もうあげたものだからいいのにとか、謝る必要はないとか考えていたけれど、なぜだろうか僕は絵をひったくり駆け出していた。夕暮れの空の方へ駆け出した。

 「僕はこれが全てだ。なぜ、いけないんだ。なぜ怒るかわからない。これが僕だ。これしかない」「なりたいものとか人とかわからない。目の前の景色をみて、綺麗だと思うことだけじゃだめなのだろうか」「人は何かにならなければならない。何かに向かわなくちゃいけない。僕には無理だ。前に、道はないもの」「ずっと僕はこの黒い夕暮れの、景色の中に取り残されたままだ。みんな、置いて先に行ってしまった」

 臆病になりながら鈴木と話したことを思い出していた。彼に謝りながら駆けていった。彼を残してきたことに謝った。



 消し炭になった絵を見て僕は満たされる気持ちになった。よかったと思えた。

 灰だ。灰になった。

 土になって消える、煙になって消える、風になって消える、ものとなって消える。

 一匹の蟻が向こうからやってきて、灰の上を渡る。僕の足元へと来たそれを、踏み潰した。意味もなく踏み潰した。

 絵が灰になる。満たされていく。心地が良い。もともと、この絵はこうなることが前から決まっていたように思う。しっくりと、その燃える様は馴染む。灰になり、何者でもなくなるその様子に、風に消える光景に心酔しんすいする他なかった。

 がらが残る。燃え損ないが残った。絵でも灰でもない、なんにでもないものが残った。それを手に取って、夕暮れへ帰ろうと振り返る。夕暮れが待っている。

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神戸踏青 @kanbetosei

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