第29話 リアル:情報の整理
「問題編としてはこのページあたりまでと思うんだけど、本格モノと呼ぶにはだいぶ苦しいかな。ずいぶん簡単な問題だし。」
「問題の難易度やフェアであるかどうかで、どちらが書いたものかを判別出来るとは思いませんがね。」
「そうかな? すずにゃんだったらミステリの基礎くらいはしっかり頭に入ってるだろうが、ふな子さんの方は完全にニワカだろ? フェアのなんたるかを把握しているかどうかは怪しいと思うけどな。」
「それは成立しませんよ、鈴さんはミステリ研究会じゃないですか。」
「UMAね、そう言われりゃそうだ。彼女なら論理なんか蹴倒していくな。」
「論理的な推論が組み立てられるかどうかを焦点とするのが本格ミステリである、という立場を取るならこの作中作の部分だけならかろうじて本格と呼んでいいのかも知れませんが……いいんですよね?」
「俺に振る!?」
「だって本格の規格なんて詳しくないですもん。」
「俺だってテキトーだよ、その辺は!」
自慢じゃないが、(UMAの方の)ミス研会長だよ!?と坂井はボヤいた。
「よし、整理して考えてみよう。以下に提示された条件を箇条書きに羅列してみる。」
「フェアであるかどうかは問題解決になんら貢献はしないと思いますけど。」
「いいから!」
1,魔法のある世界が舞台であるが、額縁小説の体裁を取った場合は文章で言及された内容以外は考慮しないものとするお約束が発動される。
1,前記を踏まえて、作中のゴーレムは事件現場の密室状態を保証するギミックとして働く他、なんらかのトリックに使用された可能性をも示唆する。
1,同じく、作中に登場した魔法のアイテムや魔法世界特有と思われる設定も、文章で言及されている以上の事柄は考慮する必要はなく、現実の法則で考えてよいものとする。
1,額縁小説の特徴として、叙述トリックの一つと捉えても良いため、どこからどこまでという範囲の明言は必要がない。
「あとは、決定的な情報の記述が欠けていても常識的な推論で答えを導き出せるならば、それで叙述トリックは成立するという特徴を踏まえているかどうかだな。」
「だからそういうことではこの問題の答えは出てきませんって。」
「フェアじゃないミステリの犯人はすべてUMAなのだ! みたいなことはさすがにすずにゃんも言わないと思う……思いたい、いや、そう信じたい。」
「無理ですね。」
言い出しかねないことは二人とも十全に承知だった。
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