第四話 魔術と魔法の違い

ルーの服が乾き座ってた俺達は立ち上がる。


乾かしている間俺はルーの使う魔術を見ていた。生活魔術なるものがあるらしい。


これは洗ったり乾かしたり、消臭したりと生活で使える魔術みたいで、誰でも使える便利な魔術と言っていた。


でも魔術ってどう発動してんだ? 魔術名を叫んだ時に手に何かの力が集中したけどこれがこの世界の魔力的な物?魔力に特に動きはなかったけど…


魔法と魔術は… 使うエネルギーが違う?? そんな考察をしているとルーが口を開く。


「…何かさっきの事思い出すと物凄く恥ずかしい、寝る時に思い出して恥ずかしくなりそう。」


「あーそういう経験俺にもあるわ、学校で一人本を… えっとー可愛い女の子とか一杯出てくるやつ… 読んでたんだけどさ、視界に女の子が入って来て俺に向かって「あー私もそれ大好きなんだよね!コア過ぎて誰も理解してくれないんだよ! どの子がよかったか聞かせてよ!」って言われて、我が同士よ!って感じでその子の元にダッシュで駆け寄ってからこの部分がカッコいいとか、その本に出てくる女の子のどこが可愛いとか、こういう瞬間にキュンキュンするよね?! とかこういうシチュエーションエロくね? とか熱い想いを早口で語って、仕上げに理解してくれる人がいるなんて驚きだわーって泣きながら握手したんだけどさ…」

俺の瞳からどんどん輝きが失われていく。


「実はその女の子、俺の後ろに居た子が持ってた一個ずつ形が違う可愛いくて珍しい食べ物が大好きでつい興奮して声出しちゃっただけなんだよねぇ… 引きつる顔の女の子、みんなの刺す様な視線… 自分の性癖を晒してしまう失態… 気づいたら俺のハートはブロークンしてたよ… 今でも寝る前に思い出すと飛び上がる位恥ずかし… あれ?なんでだろう涙が…」


「…ごめん私そこまでじゃなかった…なんていうかごめんね…」


物凄く引きつった顔でルーが言った。

ふふふ、どうだ?その程度で落ち込むなど我の前では無意味!全てを飲み込む我が負の波動!


小さな負の情念など食ろうてくれるわぁ! ふぁふぁふぁふぁふぁ!!!


…はっ?!いかん闇落ちしかけた…


「いや良いんだよ…ちょっと昔を思い出しただけで…」


「大丈夫。 私も恥ずかしかった。 ショウも恥ずかし辛かった事を教えてくれた。 二人で共有したらもう笑い話。辛くない辛くない。」


慈悲深い笑顔で背伸びしながら俺の頭をなでてくれる。 聖母ここに極まれり。


「お、おう!そ、それじゃあ行こうか!」

何とか声を絞り出し誤魔化した。


「うん、こっち。大体一時間も歩けばつく。【収納】」


ルーが言い終わると右手に持った大鎌が右中指に嵌めている指輪に吸い込まれた。


「その指輪!」

俺が思わず声を上げる


「これは古くから家に伝わる指輪。 物を収納することが出来る魔道具。」


「魔道具かぁ…」

小さくつぶやく

俺が右でルーが左で並んで歩き始める。


一時間…あの魔道具は空間魔法かな? ー色々情報集めてみるか、まず魔術だな。 魔法オタクの俺としては気になるんだよねぇ


「なぁルー魔術って何? 俺たちの世界だと炎を出したりするのは魔法って呼んでたんだけど」


「ショウのは魔術じゃないの? 魔術は魔素を使って詠唱で世界に呼びかけ力を貸してもらう術の事。 火魔術、水魔術、風魔術、土魔術が属性魔術と呼ばれ、白魔術、黒魔術、召喚術、神聖術、結界術、幻術、精霊術、固有魔術がある。 黒魔術と固有魔術以外何を使えるかは適性で決まり、私は火魔術しか適性がないから他は使えない。 何か質問ある?」


どうやら元居た世界とは結構違いがあるらしい。これはワクワクしてきた!


「なんとなく理解できたけど、白魔術、黒魔術、神聖術、精霊術、固有魔術って? そもそも魔素って何?」


「白魔術は体を癒す術、黒魔術は魔素そのものを扱う術、神聖術はアンデットに特化していて、精霊術は精霊と契約して力を借りる術、固有魔術は龍種が使う龍魔術、アンデットが使う死霊魔術………後…ァ…パィァが使う魅了なんかも有る… 魔素はこの世界なら何処にでもある力の源、空気と一緒。」


途中よく聞こえんかったけど… 龍種ってことはドラゴンいるのか!


出会いたくないけど一目でいいから見てみたい! ファンタジーの代表的存在を見ずして異世界は語れないでしょ!… いや隣にもファンタジーの代表いたわ…


「何処にでも魔素があるってことは使い放題って事?」


「それは違う、魔術は体の中に魔素を体に取り込んでそれを燃料に使う。 体の中の魔素を使い尽くしても回復していくけど魔素を取り込める早さは人によって違う」


大して魔力と変わらんな、魔力は取り込み式じゃなく自家発電だが。


「戦いの時に使ってたのは火魔術だよね?炎の斬撃が飛んでたけどあれも?

後その体にしては力とか凄いけどそれも魔術?」


「うん、武器に炎を纏わせる術。 あの鎌は特殊で炎の力を強める能力を持ってる。 私の切り札。 斬撃が飛んだのは【飛斬】を使ったから。 剣や刃物で使える技の一つ。 力が出るのは魔素をオーラに変えて纏ってるからで魔術じゃない。」


斬撃飛ばせるとかかっけぇ!マジパネェ!うんこれは覚えよう!武器なんて使ったことないけど…


オーラなるものは俺の使う身体強化とは違ってパワードスーツを着てるような感覚だろなきっと、ルーの体に纏わりついてたあれはオーラだったのか。


もしかして俺の身体強化とそのオーラ纏えばめっちゃ強いんじゃね? 今後の俺Tueeeeeeeeeeeeeeeに期待。


「そのオーラってすぐ覚えられる?」


「戦いの初歩だからすぐに覚えられる。」


「あ、でも俺魔素自体扱った事ないんだけど大丈夫かな?」


「大丈夫だと思う。 みんな子供のうちに覚えるし。ショウには私が教えてあげるね」

可憐な笑顔でそう告げる彼女に、胸が高鳴った。


「それはありがたい、この世界魔物とかもいるし戦い方学ばないと生き抜いて行けなんだろうなぁー」


「そうだね、でも街からでなければ安全だと思う。戦えない人も沢山いる」


「でも帰る方法も探さなきゃだし、何でこの世界に飛ばされたのか原因も気になるしなぁ。 どうせ違う世界に来たのなら世界中色々見て回りたいし!」


「…そっか…帰る方法捜さないとね…手伝える事あれば言ってね」

彼女は先程とは違うぎこちない笑顔を見せた


「ありがとう、頼りにしてるよルー」


お互い命を助け合い、ルーは自分の失態を受けれてもらえた事、ショウはルーの気持ちがわかり一歩踏み込んだ事で信頼関係が構築されつつあった。


「うん、それで私もショウに聞きたいんだけど、魔法って何?」


「魔法は体の中にある魔力使ってこんな感じに…」

右手を開き親指に火球、人差し指に水球、中指に小さな竜巻、指に小岩、小指に小さくスパークさせる。


魔法オタクの俺は地球で小さい頃から暇さえあれば魔法使って魔力操作鍛えたりしたからなーこれぐらいは余裕なのだ! 最大威力は… 想像したくない…


「ショウは全ての属性が使えるの? それにその小指… 雷? 詠唱は? 何で飛んでいかず指先で停滞してるの? 何故?!」


ルーは体をくるりとこちらに向け握り拳を二つ作り顔を近づけて聞いてくる


「近い近い!ルー近いよ!」

ふわっと香ったルーのいい匂いに、先程の婀娜やかなルーを思い出し頬が緩みかけて顔を背けた。


ルーがはっと冷静になり苦笑いする。


「ごめんなさい。驚きすぎてつい興奮した。」

俺も興奮した!違う意味で!


この子基本無表情のクールキャラ風だけど本当は結構子供っぽい子なんじゃないだろうか?


「じゃあ順番に答えて行くね、俺の世界のある魔法の種類は火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、雷魔法、光魔法、闇魔法、空間魔法、時魔法、重力魔法、再生魔法、無属性魔法、封印魔法。 これらは物事が起こる原理を理解してちゃんとイメージ出来れば使えるから適正とかはないよ。 小指のは、まぁ雷だね。 俺達の世界ではこれ電気と呼んで利用して夜を照らす光を生み出したり、物を動かす原動力にしたりして暮らしてたんだ!詠唱っていうのは特になくて、体の中の魔力を使うだけ。 指でこう停滞してるのは魔力を操作しているから、離れすぎちゃうと操作出来ないけど少しなら離しても自由に操作できるよ、ほら!」


五つの小さい魔法が体の周りとぐるぐると回り出し、パンッと手を叩いて全部消した。


「俺の世界の魔法と、この世界の魔術は根本的に違うみたいだね。」


「ショウの世界は凄いね、みんなそんな自由自在に扱えるの?」


抑揚はないが初めて手品をみた子供の用に目をキラキラ輝かせ聞いてくる。おい目が口ほどに物を言ってるぞ


「後同じようなものもあるけど、ちょっと待ってあまりに衝撃が大きい。 まず簡単そうな事から聞いて行くけど、光魔法、闇魔法、重力魔法、再生魔法、無属性魔法って何?」


「光魔法は名前の通り光を使う魔法だよ、単純に光で照らしたり、光を集めて膨大な熱を生み出したり、闇魔法は… 精神干渉する魔法だね、重力魔法は(重力知ってんのかな?)まぁ簡単にいうと重さを操る魔法、再生魔法は傷を治したりだね、無属性は魔術でいう所の黒魔法かな? 魔力その物を扱う魔法だよ」


闇魔法のところで明らかに顔をしかめてたけどスルースルー♪別に変な風に使ったりしないしー


「じゃ、じゃあ…」

ルーのゴクリと生唾を飲む音が聞こえる


「空間魔法、時魔法って…何?」

やっぱそれ気になるよねーわかるよ明らかにぶっ壊れ性能っぽいもんね


「空間魔法っていうのはその指輪みたいな物で、こんな感じ」


亜空間を開き必要ないであろうスマホを入れる。


「ルーの指輪と同じような物だね、俺は大した事できないけど、極めれば転移したり、空間を切り裂いたりできるらしいよ怖いよね」


両手で胸を抱きブルっと震えた演技する


「で時魔法だけど、まぁそのまま時間を操る魔法。俺が出来るのは物凄く小さい範囲を0.1秒位止める位なんだよね…」


そう俺は一時死ぬ気で時魔法を極めようと時間の概念のあらゆる文献を読み漁ったり練習したりした。


だが全魔力を使ってもこれが俺の限界。

何故だ! これさえ極めればリアルで時間停止物を楽しめるんだ! 夢のようではないか! そしてゆくゆくは時間停止と男の夢を売り物としている会社に就職し、時間停止物は九割が嘘! と叫ばれる現状に終止符った伝説の人物として成り上がるサクセスストーリーになるはずだった! だがしかし! 現実を知り、儚くも散った。 俺の脳だけは魔力使わないで中二で時間停止しているらしい。


「母親の話だと大昔には長い間世界の時間を止めたり、自分だけ流れる時間を変えて老化を軟化させたりしたらしいよ!」


ルーが驚愕で目を見開き口が開いていた。

あら?そんな顔もするのね、色んなルーちゃんが見れて嬉しい。


「後俺の世界じゃ魔物もいないし平和だったんだよ、魔法っていうのは空想上の物として扱われてるんだ。 だから魔法が使えるっていうのはかなり特殊で、俺の家族以外使える人に会った事がない、存在はしてるらしいんだけどね。 平和な世界なこんな力使えたら…ね?」


ルーは何とも言えない顔になる。

こちらの世界では強いのはウェルカムだろうけど、平和な世界じゃただの恐怖の対象。 人前で絶対使うなって言われてきた理由がわかるよ。


「…ショウ、絶対に街についてから魔法の事話しちゃだめ、それに異世界から来たって言うのも内緒」


「勿論そのつもりだよ、厄介事の匂いしかしないからね」


「ショウの魔法は力を持ちすぎている、それに計り知れない可能性も…あなたを利用しようとする輩が多すぎるとナイトのあなたを守り切れないから…後、私も魔法使えるかな?」


「この世界じゃ俺の魔法は異質だもんなぁ、ルーに迷惑かけたくないし大人しくしとくよ、ってナイトって守る側じゃないっけ?!」


こんな他愛のないやり取りがなんか嬉しい


「ルーの中にも魔力を感じるから大丈夫だと思うよ、お互いに教え合おうか! あ、森の向こうになんか見えてきた」


特に魔物に遭遇することなく歩き森の向こうに見えてきたのは遠くからでもわかる位高い壁が横にも長く広がっていた景色だった。


「わぁ!マジかよ!すげぇ!」

自分の語彙力のなさを改めて痛感する。


「あれがヴァンパイアの国リールモルト王国だよ」

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