第一幕
第1話
「
転校初日、重要文化財級の古い木造校舎の教室で、真新しい学生服に身を包んだ俺は新しいクラスメイト達の前で挨拶した。
時期外れの編入、それも都会の中心からやってきた、というだけで否応なく注目される。
俺は
机の間を移動したとき、ふと二つの視線が気になった。
一つは長い髪の優しそうな顔の女の子の、少し戸惑うような思いつめたようなもの。
もう一つは──髪こそざっくりとショートカットにしているが──先の女の子と瓜二つの顔立ちの子からのもの。
男子向けのデザインのスクールシャツを身につけているところを見ると、この子は男らしい。
──双子……? 俺は漠然とそう思うと同時に、この子の視線から、敵意のようなものを感じていた。
* *
わたし──…
──コウちゃんだ……。でも、ほんとうにコウちゃんなんだろうか……。
コウちゃんなら気付くはず……、気付いてくれるはず……。
そう思って向ける目線の先の彼の顔には、何の動きも浮かんでいない。わたしの心は苦しくなった。
ふと、彼と視線が逢ってしまった。その顔には、わたしの知っている彼の面影が、しっかりと残っていた。
でも、その目の表情には反応が薄い。だから……視線を外されてしまうより前に、わたしの方から外してしまっていた。
──わたしのこと、ほんとに忘れちゃったの……。
* *
──なんで戻ってきたんだ……。
ここを捨てて出ていったのはお前だろ?
茜やオレを裏切ったのは、お前じゃないか──いまさら何で戻ってこれるんだよ……!
蒼は、そんな感情がまだ整理できていなかったことにあらためて気付き、苛つく自分を抑えるのに必死となる。
* *
そんな二人を気遣うような視線もある。クラスの委員長を務める
* *
もう一人……
──あれから七年だっけ……。結局、コウちゃんは帰ってきたんだ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます