第26話 明日への一歩
俺はスズカにお礼をいい、タイチ達へと向かう。どうやら気絶しているだけで大した怪我はなさそうだ。
「ソラ、私に任せて」
「任せてって何を……」
するとスズカの手のひらから白い光が発せられた。光に照らされたタイチ達の傷がみるみるうちに癒えていく。
「もしかして回復魔法? 」
「うん、多分レベルアップのおかげかな? 頭の中に言葉が響いていつのまにか使えるようになってたの」
「ん……スズカ? 」
「チエ、大丈夫? 」
「大丈夫……他のみんなは? 」
チエやタイチ達が眼を覚ます。全員多少の傷が残っているがスズカのおかげで元気になっている。
「みんな無事でよかった……だけどタイチ、そろそろ覚悟した方がいいかもしれない」
「何言ってんだよ、ソラ。覚悟って一体……あっ」
「あっ……」
俺の言葉でタイチとスズカがある事に気付いた。当の本人もようやく気がついたようだ。タイチの手がチエの胸を鷲掴みにしたいたのだ。
「待て、チエ! 不可抗力だ! 」
「ど、ど……どこ触ってるのよ! 」
チエの容赦ない一撃が回復したばかりのタイチへと襲いかかる。俺やスズカ、シロウ達は大笑いした。やっといつもの日常が帰ってきた。
「お前、せっかくスズカが回復してくれたのに……」
「うるさい、バカ、そのまま死んじゃえ! 」
いつもの痴話喧嘩が始まった。
「2人はいつ結婚するの? 」
「「結婚なんてしないから! 」」
「いつものが終わったところでそろそろ帰ろうか」
2人はまだ騒いでいるが俺たちは無視して館の外へと出る。そこにはヒカルやカケル、スイム達が待っていた。
不安だったのかヒカル達はタイチ達に飛びついた。涙を流しながら無事に帰ってきてくれた嬉しさで顔は笑っていた。
俺たちは全員で拠点へと帰る。色々な事がありすぎたせいで長い間離れていた気がする。
拠点へと帰るとピート達が出迎えてくれていた。途中助けた人たちも合流していて大所帯となっている。皆が感謝の言葉を俺たちへ向けてくれた。
驚きはそれだけではなかった。なんと近くに拠点を構えている他の神子達からの使者と名乗るモンスター達も訪れていた。
みんな奴らの噂を聞きつけて同盟を組もうという話だった。正直奴らの強さを経験したばかりだった為、とても有り難い提案だった。
俺たちはひとまず同盟を結ぶ事を約束して日を改める事にした。
俺たちは使者を見送り一息つく。すでに拠点宴モードとなっていてみんなが騒いでいる。気付けばあたりは真っ暗になっていたが、それでも俺は1人宴を抜け出して落ち着く。
川の流れる音が星明かりの中にBGMのように流れる。遠くからは宴の声が聞こえる。ふと草むらから物音がする。
「ソラ、また1人で考えごと? 」
「スズカこそこんな所でどうしたの? 」
「ソラが何処かへ行くのが見えたから後をつけちゃった。ダメだった? 」
「いいよ。今日のこと色々考えようと思ってね」
スズカは俺の横へと座り、肩を寄せ合う。俺たちは何も喋らないまま2人で空を見上げる。星達が輝き、夜の森を照らし出す。
俺はふとスズカを見ると、スズカもこちらを見ていて目が合う。俺はスズカの肩にそっと手をやり、抱き寄せる。
星や月明かりの中、俺たちはそっとキスをした。
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