神子とモンスター達の異世界ライフ
チビスケ
第1話 神に選ばれた神子達
目がさめると薄暗いところにいた。
自分がなぜこんな所にいるのか……まったく思い出せない。
辺りを見渡してもうっすらと壁のようなものがあることしか分からない。
――あなたは死にました
急な声に驚き辺りを見渡すが何も見えない。
――名前は思い出せますか?
名前……自分の名前はソラだ。
それは思い出せる。
――あなたは事故に遭い、前の世界で死んでしまいました。
前の世界?死んだ?……徐々に思い出してきた。
確か大学へ行く途中、誰かと会って話してる所に後ろから沢山の人達の悲鳴が聞こえて……
――思い出せましたか?
「思い出した。でもここはどこで君は誰? 」
――もう少し待って……もう少しでみんな目覚めるから……
みんな? 他にもここに人がいるのか?
辺りを見渡してもやはり何も見えない。
とりあえず壁伝いに歩こうとした瞬間、大きな音と共に壁が崩れていった。
壁があったところには崩れた瓦礫が散乱し、暗闇に空いた穴から光が差し込んできた。
「ヤッホー! みんな元気?? 」
唐突な大声にビックリして身構えた。声の主を探すため辺りを見渡してみる。
すると辺りには沢山の人が同じように辺りを見渡しているのが目に入った。
「こっちこっち! 」
また、大きな声が響き渡る。
どうやら、ここは閉ざされた空間らしく声が反響して耳に突き刺さってくる。
ふと、横の人影が動き出す。その影の腕がゆっくりと空へと向けられる。
(上に何かあるのか……)
そっと上を向いてみる。
「ちゅうもーく! 皆さんは今新しい世界の初めての住人になってもらいます! 」
目の前に有り得ない光景が広がっていた。
小さな白い羽の生えた幼女とその後ろに背の高い女性が浮かんでいるのだ。
「ティア様、ちゃんと説明をしないと」
「めんどくさいなぁ、ベル代わりにお願い」
幼女から指示を受けた女性がため息をつき、話し始めた。
どうやら幼女の方が立場が上のようだ。
「我々はいわゆる神と呼ばれるものとでも思ってください。」
確かに見た目は完全に神様である。
もちろん背の高い女性のことだ。
幼女の方はどう見てもガ……やめておこう。
本当に神だとしたらバチが当たる。
「この度、神々の会議で新たに世界を10個作ることとなりました。」
「こちらにおられるティア様がその内の1つの世界の管理者となります。」
世界を作る? 管理者?
壮大すぎて頭がついていかない…
さらに別の理由でも集中できない。
(頼むからワンピース姿で空を飛ばないでくれ……)
「各世界は管理者のある程度好きなように作られるのですがティア様が作られる世界は……」
「いわゆるRPGの世界です! 」
ベルと呼ばれる女性に割り込んで幼女が叫んだ。
「色々悩んだんだよねー、んで暇つぶしにやってたゲームが感動してこれだ! ってなったよね! 」
暇つぶしでやってたゲームを参考に世界を作る神さまってどうなんだ?
部屋にいる全員がツッコミそうな勢いだった。
「迫り来るモンスターと戦ったり仲間と助け合ったり、感動だよね! 」
確かにゲーマーとしてはそんな世界一度でいいから行ってみたい。魔法を使ってみたり、モンスターを倒したり誰もが一度は想像しただろう。
「だからRPGみたいな世界を作ります! って言ったらベルにため息つかれたんだよねー」
「当たり前です。他の神は色々悩んでより良い世界を作ろうとしておられるのに」
「大丈夫! 絶対良い世界になるって! 」
「その根拠はどこから来るのやら……まあいいでしょう」
ベルという神は散々振り回されているんだろうな……
「と言うわけであなた方には神子としてその世界の住人となってもらいます」
「もちろん、神子ですから特別な力を与えまーす! 」
「ティア様は黙って下さい。私から説明します。」
幼女は落ち込んでいるが無視してベルは話し出した。
要約すると、次のような話だった。
――――――――
1つ、あなた達は不死身となります。ただし死なないと言うわけでなく生き返れるということです。
2つ、あなた方が生き返る方法は2種類です。
これからあなた方は2人組となってもらいます。
死んだ後、パートナーに触れてもらえばあなた方は生き返ります。
もう一つの方法は2人とも死んだ場合です。ただし、その際は2人に共通した記憶がランダムで消されます。
3つ、パートナーと一定距離離れるとあなた方は消滅します。
4つ、この世界には色々なモンスターがいますので上手く活用して下さい。
もちろん倒せば経験値となり、自身を強くすることもできます。
5つ、モンスターを倒すと稀にタマゴが手に入ります。タマゴからは倒したものと倒されたものの特性を持った新たなモンスターが生まれます。
――――――――
本当にRPG世界の住人になったようだ。
(自分も強く……それにモンスターのタマゴまであるのか! )
レベリングやモンスター育成は大好きだ。
地道にコツコツとやっていくのが自分には合っているのだろう。
「まあとりあえずのルールはこんな感じでおいおい足してくって感じで! 」
相変わらず適当だなと思いつつ、内心ワクワクしていた。
まさかゲームの世界に入れるとは……
「じゃあもう説明も飽きたしそろそろ行っとく? 」
そのセリフとともに今まであった床がなくなり、急な浮遊感が襲ってきた。
まさかそんな軽いノリでスタートするの?
「これもしかして落ちてる!? 」
慌ててどうにかしようとするが何もできない。
「やばいいきなり死ぬのか!? 」
下には大きな島が広がっている。
(結構広そう……じゃなくてどうする! )
地表の様子がだんだんと鮮明になっていく。
鮮明になるにつれ、恐怖が増してきた。
もう地面まで時間がない。
「死ぬ! 」
恐怖のあまり目を閉じた瞬間、体が止まった。
何が起こったから分からないまま、助かったことに安堵した。
「みんなびびった?? 不死身と言っても痛みはあるから気をつけてね?」
幼女の声が頭の中で響いた。
「あのガキ、いつか泣かしてやる」
少し涙ぐみながら負け惜しみを言ってみる。
まずは状況確認だ。
上から見る限り、ここはかなり広い森の中だった。
「森っていうと絶対モンスターいるよな……」
不安になりながらもとりあえず歩き出そうとした時、後ろの茂みからガサガサと音がした。
「誰かいるのか! 出てこい! 」
大声でとりあえず威嚇してみたが反応がない。
恐る恐る近づいてみる。
すると、茂みから何かが飛び出して襲いかかってきた。
(ああ、これは死んだな……)
そう思いながら俺はそっと目を閉じた……
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