第11話 乗り物と復讐と覚悟と自己紹介の話
「・・・出口だ」
月ノ城に案内がされるまま、道を進んでいくと、奥の方に光が見えてくる。
そして、俺たちは洞窟から、出る事ができた。
澄んだ空気が、身体に染み込んでくる。
上を見上げると、太陽が俺たちを歓迎するかのように、照らしていた。
ここ2週間の間はずっと、洞窟の中にいたせいか。
もの凄く眩しい、目が痛くなるぐらいに。
「眩しいな・・・」
「太陽・・・!」
アイリスはYの字に腕を広げて、太陽を拝んでいた。
どこかで見たことあるようなポーズだが、気にしないでおこう。
少し前に、月ノ城が立ち止まり、胸の懐から、何かを取り出す。
そのまま、洋紙を取り出し、広げる。
後ろか、覗くように見ると、それは世界地図だった。
「へえ、この世界の大陸ってこんな感じなんだな」
全体に的に、ひし形世界だった。
地図には、しっかりと、町の名前や王国の名前が書いてあり、真ん中にフィルネル王国と書いてある。
その名前を見ると、アイツのことを思い出し、不快になってくる。
しかし、軌光石があるのに、何故、洋紙の地図を使っているのかを聞くと「こっちの方が、慣れているんだ。軌光石はどうも、慣れん」と言う。
どうやら、機械系が苦手な、おじいちゃんみたいだ。
「これを見てくれ」
月ノ城は北側の方に、赤い丸がついてる場所に、ペンを取り出して叩く。
「俺たちは、今はこの場所にいる。そして、ここから西へと向かう。」
そう言って、月ノ城のペンを動かし、西へと指す。
結構距離がある。ここから、歩いて行くとなれば、3週程は掛かりそうだ。
「普通なら、3週間ほど掛かるが・・・移動手段あるから、問題ない。」
「移動手段とは?」
この世界なら、空を跳んだり、馬車を使ったりすると思えば、月ノ城はカプセルみたいな物を取り出した。
「それは?」
「ああ、これはだな・・・」
月ノ城はカプセルのボタンらしきものを押して、そこら辺の平野に投げる。
ドンッ!!!
煙がもくもくと立ち上がり
やがて、晴れていくとそこには・・・漆黒の刺々しいフォルムをした、自動車が現れた。
そして、俺は思う。
これ見たことあるやつだーー!?
てか、ドラ〇ン・〇ールじゃねぇか!!
思って以上に、現代的な移動手段に、少し夢が壊れた気がする。
俺たちに世界は魔法に憧れるように、同じかもしれない。
まあ、これは、これでありかもしれないけど・・・。
そして、月ノ城は決め顔で言う。
「ブラック・ブケファラスⅡ世だ」
「ブフッ・・」
吹きそうになり、口を塞ぐ。
そもそも、二世ってなんだよ。これは後継機なのか?
さりげなく、無駄に車がかっこいいから、色々酷いような気がする。
このネーミングセンスは、絶対に日本人しかいないだろう。
「どうした、黒杉?」
「な、なんでもない・・・!」
「まぁ、いい・・・さぁ、乗れ」
そう言って、車のドアは縦にスライドする。
無駄に、かっこよくて、男心をくすぐらせてくる。
そして、月ノ城が無表情だけど、何故か嬉しそうな顔してるような気がした。
雰囲気で伝わるというのは、こういうことなんだなって思う。
「ヨウイチ・・・これ乗っても大丈夫?」
アイリスは、不安げな顔で自動車を見つめる。
初めてみる、表情だったものだから、少しでも不安を和らげるために、説明する。
「あぁ、大丈夫だよ、俺の世界では当たり前の乗り物なんだ」
「そ、そう・・・」
それでも、躊躇うアイリス。
まるで、本能的に身の危険を感じているかのように、身を構える。
見た感じは、何処かが壊れている個所はない、なぜ警戒するのだろうか、アイリスにしか見えないものがあるだろうか?
それは、何か起きた時に、何とかしよう。
それよりも・・・。
「何故この乗り物がこの世界にあるんだ?」
「まぁ、それは乗りながら説明しようか」
そう言って、月ノ城は先に乗り込み、続いて、シルクも車の中へと飛び込みながら乗り込む、その姿は完全に猫だった。
「ほら、アイリスも行くぞ。大丈夫だって、月ノ城さんたちは、いつもこれで移動してるっぽいから、大丈夫だと思うぞ」
「う、うん・・・」
躊躇うアイリスの手を、引っ張り、そのまま一緒に車の中に乗り込む。
全員が揃ったところで、車を発進させる。
エンジン音が付いたことで、シルクが興奮するように、窓を張り付くように、外の景色を眺め始める。
「月ノ城さん、この乗り物は?」
「これは組織の一人の提案で作られた物だ。そして、そいつは転生者なんだ」
「転生者・・・」
転生者か・・・この車を作ったというなら、きっと俺と同じ世界の人なのかもしれない。
「なんでも、前の世界で記憶を引き継いで生まれ変わったらしい。」
「なるほどなぁ・・・」
この世界は、転生者がいる事がわかったことでも、良い情報だった。
召喚されること以外でも、この世界に行ける方法があるってことが分かえう。
ただ、それを知っても、それがどうしたって話になるんだけどな。
――――【2時間後】
「う、うぅ・・・」
何か、後ろでうめき声が聞こえると思えば、アイリスだった。
後ろを見てみると、シルクがアイリスの背中をさすっている。
成る程、だから、拒否反応したのだろう。
「ヨウイチぃ・・・」
「あーはいはい・・・もうちょっと我慢してくれ・・・な?」
そう言って、涙目になりながら我慢するアイリスであった。
どうやら、アイリスは乗り物系は苦手のようだ。
「あ、そうだ!!」
「どうしたんだ?シルクさん?」
「実は良いものがあるんですよ!!フッフッフ!!」
そういって、シルクは自分の鞄をガサゴソさせて、何かをとり出す。
「じゃじゃん!飴ちゃんです!!アイリスさん!これをなめてください!」
そういって、シルクはアイリスに渡して、その飴玉を舐めはじめる
そして、アイリスは目を閉じて、蒼くなっていた顔が、少しずつ引いていく。
「三日ぐらいだ、我慢してくれ。」
「わかった」
月ノ城の言葉で、アイリスは再び、うめき声が聞こえる。
こればかりは、我慢してもらうしかない。
ご愁傷さまだ・・・。
そう言って、外の景色を眺める。
やはり、ここの世界に車は似合わないなと思いつつ。
到着するのに、3日も掛かるそうだから、その間に月ノ城に聞きたいことを聞いてみようかと思った。
「なあ、月ノ城さん」
「なんだ?」
「俺のスキルなんだけどさ、分からないことがあるんだ」
「ふむ?スキルか・・・どれ、見せてみろ」
そう言って、軌光石を使って、成長スキルを見せる。
月ノ城は車を止めて、頷きながら見ている。
そのまま、画面を閉じて、黒杉に言う。
「成長スキルか・・・珍しいものを持ってるんだな」
「知ってるんですか?」
「ああ、知ってる」
良かった。
ようやく、スキルに詳しい人が出会える事ができた。
ハンドルを握りながら、口頭で話し始める
「その成長スキルは、自分の体を鍛えることによってステータスを上げることができる」
「き、鍛える?」
「簡単に言えば・・・筋トレだ」
「筋トレ!??」
衝撃の事実で、俺は勢いよく前に倒れそうになる。
まさか、筋トレするだけでステータスが上がるなんて、予想外だった。
「攻撃と素早さを、同時に上げるなら、重い物をもったりして走るといいぞ。器用さが微妙に高いってことは・・・モンスターを急所攻撃したり、料理とかしてたら上がったんじゃないか?成長スキルは、自分の日常動作にも影響するからな、細かい所を気にしてみると良いだろう」
「なるほど・・・ありがとうございます」
これで説明がつく、微妙にHPと器用さが高いのは、何度も魔物を攻撃を受けては回復したり、料理を作っていたからだ、自分がやっている事は、無駄にならないのは、大きなメリットだ。
「あと、成長スキルはもう一つ能力ある」
「そ、それは?」
思わず、俺は唾を飲み込む。
「それはだな・・・スキルを使うたびに、強くなっていくんだ」
「でも、それって普通じゃないですか?」
「少し違うな。通常スキルは、ステータスとパッシブ効果で、威力が上がる。だが、成長スキルは、スキル自体が成長するように、強くなっていくんだ。」
「んー・・・?」
ん、どういうことだ?ちょっとわからんな?
理解ができずに、頭を捻る。
そんな、黒杉の姿を見て、月ノ城は、もう一度説明をする。
「説明が下手で、申し訳ないな。例えば、通常だとLVが上がればステータスが上がると、威力も上がるだろ?」
「そうですね・・・この世界では、当たり前のこと」
「ああ、成長スキルは、そのスキルを使い続ける事で、LVが上がらなくてもスキルが強化されていくんだ。勿論、上限はあるけどな」
「なるほど」
なるほどな、そういう効果があったことに素直に感心した。
「戦ってた時に、違和感とか感じなかったか?攻撃した時に、いつもより、攻撃がうまくいったり、魔法が制御しやすくなったとか」
「・・・確かに、ありましたね」
黒杉はオロチとの戦いを思い出す。
『風圧』のコントロールや『加速』を使う度に、速くなってたような気がした。
まだ強くなれる可能性がある。それだけでも、安心できた。
「・・・もっと、強くなれる」
黒杉は、板野のことを思い出す。
その度に、刺された胸を触り、自分の使命を確認する。
目がぎらついた目で、ナイフを取り出して、見つめる。
そんな、月ノ城は黒杉の表情を伺うように話す。
「黒杉は強くなりたいのか?」
「・・・ああ、俺は強くなりたい。ならないといけないんだ」
俺は強くなってアイツに仕返しをしなければならない。
絶対に忘れない、この胸の事も、俺の友を傷つけようとしている事も、許されない。
すると、自分の考えを読まれるように、月ノ城が話す。
「・・・復讐を考えているなら、やめとけ」
「何故、わかるんです?それに、仮に復讐をするとしても、それは月ノ城さんには関係ないだろ?」
「・・・関係ないか」
月ノ城は黙る。
碧い瞳が、目の前の景色を真っすぐ見つめる。
何処か、思い詰めるような顔をして、やがて口を開く。
「確かに、お前の復讐には、俺には関係ないな」
「だろ?じゃあ・・・」
「だけどな・・・」
黒杉が、何か言おうとすると、月ノ城は割り込むように話し続けた。
「その復讐が正しくても、それが達成されても、満たされるとは限らないし、あっけないものだ」
「なんですかそれ・・・」
「さあな、ただ言えることが、あるなら・・・虚しくなるだけだな」
「・・・」
月ノ城は優しい眼をして、「あとは自分で考えろ」と言って、運転を再開する。
虚しくなる。
その言葉が、胸に深く突き刺さり、重く感じる。
過去に色々あったんだろうか、彼の姿は、過去に自分に懺悔するかのように、生きてるようにみええる。
「まあ、強くなりたいなら、協力はしよう」
「本当か?」
「ああ、その代わりに、俺たちの仕事を手伝ってもらうことになるが、大丈夫か?」
きっと、魔獣王の開放の事だろう。
だが、元の世界に帰る為には、避けては通れない道。
「ああ!強くなれるなら、やってやるさ」
「良い返事だ・・・期待してるぞ」
月ノ城は、再び静かに笑う。
これから、もっと厳しくなりそうだ。
「安心しろ、"俺たち"がお前を強くさせてやるさ」
「月ノ城さん・・・ありがとう」
「強くなってから言ってくれ、まず、それからだ」
―――――【三日後】
車を走らせて、三日が立つ。
そして、何もない平原に止まる。
見渡せば、一本の木が立ってるのと、周りに自分たちの3倍はあるだろうと、思われる岩が、そこら中に落ちていた。
「着いたぞ、今日からお前たちの住処だ。」
月ノ城は、後ろに寝てた二人を起こす。
「んー?もうついたんでふかー?」
「んー、よういちー?」
二人は寝ぼけていた。
眠そうな目を擦り、瞬きをして、そとの景色を見渡した。
「ほら、先行っちまうぞ」
「まってえー」
そう言って追いかける、アイリスとシルク。
外に出ると、風が当たり、空気が澄んでいた。
それだけでも、心が晴れやかになる。
ここの世界に来て、今のところ、良かったことは、空気がうまいぐらいしかなかった。
「着いたぞ」
しばらく歩くと、月ノ城が立ち止まる。
その場所は、先ほどと変わらない、平原と沢山の岩だった。
「月ノ城さん?ここには何も無いんですけども・・・」
「まあ、待ってろ」
月ノ城は近くの岩に触る。
魔力を込めて、何かをしているようだ。
すると、音を鳴らしながら、大きな岩が横にずれる。
ゴゴゴゴォ・・・
音が聞こえなくなると、同時に岩が止まる。
穴が見える。覗けば、そこには地下に続く階段だった。
「ようこそ、フヴェズルングへ、君たちを歓迎しよう」
俺たちは、月ノ城と一緒に地下の長い道を降りて行く。
地下は薄暗く、暑くはないが、狭い。
どれぐらい歩いたのだろうか?
「月ノ城さん、後どれぐらい歩くんですか?」
「もう少しだ」
そう言って、月ノ城は進み続ける。
――――15分後
「ここだ」
月ノ城は立ち止まる。
目の前には、岩壁にしか見えず、周りを見渡しても何もなかった。
「月ノ城さん、何もないんだが?」
「カモフラージュだ。ここには仕掛けがある」
そう言って、月ノ城は近くの壁のレンガを押した。
すると、鈍い音をたてながら、岩壁が動き出す。
現れたのは、ここの世界に相応しくない、頑丈そうな、鉄の扉があった。
「岩壁の後ろに・・・」
「万が一に備えて、普通の人には分からないように、扉に【隠蔽魔法】を付与させて、岩壁の後ろに隠してあるんだ。俺たちは、立場的に知られてはいけない存在だ。ここの世界の住人は、意外とこの世界の住人は敏感でな・・・こうでもしないとすぐにバレるんだ」
確かに、こんな平野の下に、基地があるとは考えにくいだろう。
それに、ここから先は、過去に色々あった者達が集まる場所。
ばれてしまえば、各国に狙われるには、間違いはない。
この場所は、人通りが少ないのか、隠れるのには最適な場所だろう。
月ノ城は、カードキーらしき物を、コート裏の胸ポケットから取り出してくる。
そのまま、カードを扉の隣に細長の溝をスライドさせると、鉄扉はピピッと音が鳴り開く。
前々から思った事あるが、あのコート裏は、四〇元ポケット見たいになっているだろうか?旅の途中、あのコートから、地図は、まだ分かる。調味料セットを取り出した時には、びっくりした。
「おぉー・・・」
黒杉にとっては、見慣れた光景だが、アイリスは物珍しそうに見ていた。
この世界には、機械的なものは、見たことないから、珍しいの普通だろう。
「さぁ、こっちだ」
月ノ城は手招きして、俺たちを連れて行く。
白い廊下、床も壁も鉄で出来ていて、研究所のイメージが、真っ先に思い浮かぶ。
しばらくして、先ほどの入り口よりも、一回り大きな扉が見えてくる。
その前まで歩くと、自動的に横に開く。
アイリスは、目を大きくして、見ている。
キョロキョロと見渡す。
その姿は、何もかもが初めてな、子供みたいな反応で、可愛らしく思ってしまう。
そして、扉の先には、人が立っていた。
「あ!ウサさんシルクさん、おかえりなさい!」
「おかえりなのー」
そう言って、月ノ城の帰って来たことに、気づいた二人の青年と少女が出迎えてくる。
青年の方は、サラっとした、黒漆の濡れたような美しい黒髪は耳と眉まで伸びている。
黒い瞳に、肌は健康的な肌色で、全体的に華奢で、服装は白ワイシャツと青ネクタイに、黒のスラックスと着ていた。
少女の方は、全体的に黒味がかった深い紫色と間から見える白色の布が見える、ゴスロリ服を着ていた。
銀の色のような上品で明るい鼠色の髪色、髪型はハーフアップツインテール、の温かみのある、淡い色した黄色の瞳、白百合のような黄色みのある、柔らかそうな肌。
そして、隣の青年と比べて、身長が低い。
見た感じ、小学5年生ぐらいだろうか?
「なんか、失礼なこと思われた気がする・・・なの」
とってつけたような語尾が、特徴的な少女は黒杉を睨む。
思わず、目をそらしてしまうが、「まあ、良いなの」と言って、月ノ城の方に向く。
身の危険を感じたが、なんとか回避することが出来た。
今度から、失礼な事を考えないように気を付けなければならないと、心に誓う。
黒髪の青年が、近づいて、月ノ城に聞いてくる。
「お客様でしょうか?」
「ああ、そんな感じだ」
「なら、長旅でお疲れの様ですから、お茶を入れきますね」
そう言って、青年は早歩きで、お茶を入れいく。
「ウサさん、そちらの方は誰なんですかー?」
もう一人のゴスロリ服を着た少女がトテトテと歩いてくる。
「ああ、こいつらは新しい仲間だよ」
「新規メンバーさんなんですねー」
少女はスカートを摘まんで、丁寧にお辞儀をする。
「私は源城(みなしろ)疾嘉(しつか)と言いますー、よろしくなの」
「あ、ご丁寧にどうも・・・」
「アイリスです、よろしくお願いします・・・」
綺麗なお辞儀だったのか、こちらもついお辞儀してしまう。
この少女も、日本人に似た名前をしていた。
やはり、この世界には、それに似たような国でも、あるのだろうか?
疾嘉と名乗る少女が話す。
「そんな、かしこまらなくていいなの、私も入ったばかり初心者なので・・・」
あぁ風嘉さんも同じ時期に入ったばかりの人なんだと思ったところで、月ノ城が疾嘉の頭に、優しくチョップする。
「こらこら、嘘つくな」
嘘なのかーい!!
何故、ここで嘘をついたのか・・・。
月ノ城は突っ込んだところで、疾嘉はあっけらんとした顔で言う。
「エッ?」
「えっ?じゃない」
俺とアイリスは困惑する。
しばらく、二人の口論が続く。
5分経ったところで、月ノ城がこちらに向く。
「すまんな、疾嘉ちゃんは冗談を言うのが好きなんだ」
「本当のことなのにー」
「話を紛らわしないでくれ・・・」
「ちぇー」
月ノ城は頭を抱えるが、その顔は微かに笑っていた。
そんな、二人を見て思うのが。
「お二人は、仲が良いんですね。まさか、付き合って・・・」
「それは、絶対にないなの」
「ないな」
バッサリを切り捨てられた。
「彼女とは長い付き合いの古い友人だよ。かれこれ、15年ぐらいだな」
「はいー」
「じゅ・・・う、五年?」
そう言われて、疾嘉の方を向こうとすると、再び身の危険を感じ、振り向くことが出来なかった。
すると、月ノ城が・・・。
「はいはい、立派なレディだもんな」
「分かってれば、良いなの」
先ほどまで感じた、殺気はすぐに収まる。
あのまま、放置されていたら、どうなっていたのだろうか・・・。
「さて、風嘉ちゃん、申し訳ないが、ここの制服と私服を用意してあげてくれ」
「了解・・・なの」
そういって、パタパタと歩き取りに行った。
「ここで、話すのもあれだから、移動しようか」
「あ、ああ・・・」
───【休憩室】
俺たちは椅子に座った。
それに向かいあうように、「よっこらしょ」と言って、月ノ城も座る。
たまにオジサン臭い・・・そういや、疾嘉さんの時も15年の付き合いといってたけど、見た目が明らかに20代前半にしか見えない・・・まさか。
考えていると、先ほどの青年がお茶を持って帰ってくる。
そのまま、丁寧にお辞儀して、部屋から出ていく。
「さて、まず何処から話そうか・・・」
そう言って、お茶をすすりながら、月ノ城が話す。
「黒杉は・・・強くなりたいんだっけか」
「はい」
月ノ城は「ふむ・・」と言って、顎に手を当てて、考え込む。
秒針の音が聞こえる。
そのまま、お茶を一気に飲み干したところで、口が開く。
「強くなりたい、その気持ちは・・・悪い事ではない、向上心がある事は良いことだ。それが人間の本能でもあり、性でもある。だが・・・」
その瞬間、ピリッとした、空気が充満する。
それに敏感なのか、シルクの猫耳帽子はペタンと怖がるように折れ曲がる。
アイリスも自分の事ではないが緊張が伝わり、冷や汗を掻く。
「君には、覚悟があるかい?」
「覚悟・・・?」
「ああ、覚悟だ。確かに、強くなることで得る物が多い。しかし、少なからず、失うものがある。失ったものは、戻ってこない。それに向き合う覚悟だ」
月ノ城は目を閉じ、淡々と語る。
「人は簡単に壊れる。たとえ、どんなに小さい出来事でも、それはいずれ大きくなる。そして、決まってロクなことにならない。堕ちる者がいれば、身を滅ぼす者もいた。」
月ノ城は、目を開けて自分の手のひらを見つめた後に、握り絞める。
「悲しいものだな・・・。黒杉、お前が強くなった時、必ず、その日がやってくる。ああ、絶対に・・・必ずな」
不確定な未来なのに、これから起こることが、分かっているようなことを言う。
月ノ城の悟るような眼と力強い言葉は、黒杉に心に突き刺さる。
それは、自分の復讐に向けての言葉なのだろうか、それとは別の何かなのかは、分からなかった。
「なぜ・・・そう思うんです?」
「・・・さあな、でも・・・心当たりはあるんだろ?ただ、俺は"永い"間、沢山を人を見てきただけだからな」
月ノ城さんの長くはどういう意味で言ったのであろうか?
見た目は、20代にしか見えなかった。
しかし、語る姿とその発言は、まるで、それ以上に生きてるかのような発言にも聞き取れる。
「もう一度聞くぞ。覚悟はできているか?」
更に空気が重くなる。
今でも、押しつぶされそうな勢いだ。
でも・・・俺はここで諦めるわけにはいけない。
俺は、元の世界に戻る為に強くならなきゃいけない。
親友と、またバカ騒ぎがしたい。そして・・・。
黒杉は、隣に座っている、アイリスを見る。
その視線に、気づいたのか、こちらを見上げる。
そのまま、優しく微笑んで、手を握る。
「大丈夫・・・」
ただ、一言だけだった。
だけど、その一言で、気持ちが軽くなる。
その時には、何かが滾ってくる。
「俺は戦う・・・戦わなきゃいけないんだ。強くなるんだ」
「・・・そうか」
「確かに、復讐もしたいとは思っている。これは本当の事だ・・・」
そっと息を吸って、吐き出す。
月ノ城の眼を、今度はこっちから、見つめる。
「でも、それ以上に俺は待ってくれる友がいるんだ・・・だから、元の世界にm帰らなきゃいけない、その為には神をぶっ倒さなきゃいけないんだろ?」
「あぁ、そうだ」
「なんとかしなきゃ、皆が死ぬんだろ?」
「そうだな」
そのまま、アイリスの頭を撫でる。
急に撫でられたせいなのか、身体が少し跳ねる。
「それに、俺はアイリスを連れて行くと言ったんだ。守られてばっかりじゃ・・・嫌なんだ」
黒杉は、もう片方の拳で、強く握りしめ言う
「だから、答えは一つだ。俺は覚悟ができている、お願いだ・・・俺を強くしてくれ」
月ノ城はッフと笑い、立ち上がる。
そのまま、一枚の紙を取り出し、テーブルに置いた。
去り際に、後ろ向きの状態で、空中にナイフを投げる。
ナイフは綺麗に曲線を描きながら回転して、先ほど置いて、紙に突き刺さる。
「これは?」
「誓約書だ。その紙に、お前の血を垂らせば、誓約は完了だ」
そう言って、そのまま手を振って、部屋から去っていく。
かくして、黒杉の修業が始まった。
――――――今回の後日談
そのあと、俺たちは基地を案内とメンバー紹介された。
先ほどの黒髪の青年はサンク=スレイというらしい。
レベルは96の遠距離武器の使い手
俺たちと、同じように、数カ月前に入ってばかりらしい。
次は源城 疾嘉(みなしろ しつか)
月ノ城さんの次に強いらしく
レベルは151 職業は大賢者
おっとりした性格をしていて、冗談がいうのが好きらしい。
身長と胸の話はNG
そして、驚くことに・・・。
「紹介するなの、私の妹たち・・・なの」
「ヒャッハア!」
「よろしくお願いします」
「ふええええぇぇぇぇ、よろしくですう」
疾嘉は四つ子の姉妹らしい
それぞれ個性的だが、流石姉妹って感じで全員似ている。
右から順番に・・・。
次女の紅嘉(こうか)
レベルは121の職業は剣聖。
いたずらっ子で月ノ城が手を焼いている子で、戦闘狂。
髪色は紅花で染めた濃い紅赤色、髪の長さは肩まで、くせっけが目立つ。
眼の色も深紅で、鎧など着てはおらず、革鎧に纏っていた。
三女の雷嘉(らいか)
レベルは111の職業は騎士王
仕事は真面目だが、それ以外はそうでもない。
髪色は明るい紅みのある紫、髪の毛の長さは紅嘉と同じぐらいだが、綺麗なストレートだ。眼の色は葵色で、こっちは正統派の騎士の鎧にミニスカ―トだった。
四女 水嘉(すいか)
レベルは101の職業は大聖女
気が弱い子で姉達に毎回、罪を擦り付けられて苦労人。
髪色は黄味を含んだ淡い水色で、髪の毛の長さはショートで、サラサラしている。眼の色は青藍色で、神官服を着ているけど、手には、メリケンサックを付けていた。まさかね・・・。
一応、色で見分けつくことができるが、全員同じ色だったら、見分けがつかないぐらい、姉妹の顔は似ている。
次に案内されたのは調理室。
そこには赤毛の黒い和服の女性が調理をしていた。誰かに入ってきたことに、気づきこちらに振り向く。
「おや?ウサさん、新人さんですか?」
「ああ、今は基地を案内しているところだ」
立花 百合(たちばな ゆり)
皆からは、何故か姉御と呼ばれている。
LV108の職業は魔剣士
彼女は唯一、デメリットなしで、魔剣と呪刀が使える存在らしい。
次に訓練所。
そこには、二人の女性が立っている。
お互いにすごい剣幕で睨みあう、あれは完全に殺し合いが、始まる合図だった。
その瞬間、動いたと思えば、目に負えないスピードで戦っている。
分かるのは、轟音がっているのと、空中で火花が飛んでいた。
青髪のハーフアップポニーの女性が
アクレア=メイソン
LVは117職業は双・聖騎士
二刀流で騎士らしい、二刀流の騎士って珍しいな・・・
真面目で洞察力が高く、研究家で、毎日自分の動きに何が悪いかを調べているととのこと。
セヌーア・ルシアナ
白髪の短髪少女
LVは128 職業はエンチャウンター・トレーサー
武器を複製して、それを強化して使って戦う
無〇の剣〇じゃねぇか!!!という突っ込みを心の中でするのであった。
もちろんユニーク職業らしい。
フヴェズルングの、もう一人の戦闘狂で純粋な戦闘なら月ノ城と互角に渡り合えるらしい。
次に研究所。
入ると、そこにいたのは、黄色い羽毛の被り物と白衣を着た、男性らしき人物いた。男は振り向くと、顔は鳥なのかそうじゃないのかハッキリしていなかった、つぶらな黒い瞳、くちばしについいて、頭に触覚が生えていた。
男は、薬が入っていると思われる物を、月ノ城に近づく。
「お!ウサさんじゃーん!今回は良い薬を作ったんッスよお!」
「飲まんぞ」
「まだ、何も・・・」
「飲まんぞ」
「ま・・・」
「飲まんぞ?なんども言わせるな?」
「アッハイ」
月ノ城の威圧で、小さく引っ込む研究者。
男の名前はアバダギ=モスラ
レベルは40 職業 研究者
話してみると、めっちゃ普通!!
被り物と名前以外は普通の人だった!!
謎の安心感。
テンションが高い研究者ですごく親しみやすい人だ。
その研究室で、こっそりと掃除してる少女
名前はフェレシア・メルティ
レベルは95の職業は殴り屋
殴り屋ってなんだ・・・・すげぇ職業だな・・・。
これもユニークスキルだった。
それ意外なら美少女にか見えなかった。
髪色が、亜麻を紡いだ糸の色のような黄色がかった薄茶色、髪型はアップヘア。
素直な子で皆に可愛がられる存在だった。
そして、最後にエンジニア室
金槌でひたすら鉄を叩く、一人の男がいた。
今は作業中の為、話しかけることが出来ず。
その姿を眺めていた。
彼の名前は、ハグレ=メダル。
俺はこれ以上突っ込まないぞ。
レベルは98の職業は 発明王。
主に、この人の提案で地下を作ってくれたらしい。
「さて、今日は疲れただろう。今回の案内はここまでだ」
そう言って、まだ人がいるらしいが。
ひとまず、ここで自己紹介はここで終わりらしい。
明日からは、本格的に始めることになる。
ることになる。
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