第5話 旅立ちと洞窟の話
一週間後――――
この日がやってきた。
僕たちの1ヶ月の訓練を終えて、魔獣討伐の日がやってきた。
長旅が予想して、クラスメイトの皆は武器やら回復薬など準備をする。
支度を終えて、旅立つ前に国王に挨拶することになった。
「ふむ、見違えたな」
国王は高い位置に玉座の前に立ち上がり、顎の髭を触りながら言う。
その顔はどこか感心するかのように、クラスメイト達を眺めるように見みつめる。
「勇者達よ!今こそ旅立ちの日だ!君達には期待をしている。同時に、幼い君たちに全てを背負わせた、不甲斐ない私を許してくれ。」
国王は激励と謝罪した。
それを聞いた御剣は前に出て国王に言う。
「国王様!必ずしも、魔獣王を倒して見せましょう!この国に平和をもたらす為に、この剣に誓って!」
御剣は長剣を取り出し、上に向けてかがけたのだ。
その長剣は白く淡く光だし、樋は平たく紋章なような物が書かれていて、神々しい。
取り出したあの剣は聖剣だった。
御剣のレベルが上がったことによって、新しい加護が付いてできた物だ。
いや、詳しく言えばスキルが進化したのだった。
『剣の加護』から『聖剣の加護』に変わったのだ。
加護が進化したことによって、同時に聖剣が御剣の手から光だし、出てきたのだ。
聖剣の名は『光剣レイアード』斬った物を浄化させる効果を持つ。
「うむ、期待をしているぞ。」
その姿を見た、国王は安心して座り、アルバードの方に期待した顔で向ける。
「アルバードよ、お前も1ヶ月の間、勇者たちの鍛錬と面倒を見て、ご苦労だ。いい報告を期待しておる。」
「ッハ!必ずも成果を持ち帰って見せましょう!」
アルバートは国王の前に膝まずく。
かくして、僕たちの初めての遠征が始まったのだった。
王国からでると、王国の皆は僕たちの遠征を見ようとして集まってくる
まるで、パレードの様に、その派手さと豪華さは王国の豊かさを表してくれるほどであった。
そして黒杉達は王国から旅立つ。
向うのは北、雪の都スノーガーデンへ。
道中には魔物が出てくるが、大したことはなかった、ゴブリンやオークなど
下級魔物ばっかりだった。
初めて出てきたときは生徒達は戸惑っていたが。
「怯むな!この程度は厳しい訓練と比べたら、簡単な事だ!」
御剣の掛け声ですぐに体勢を立て直すことが出来た。
大した強さはないが、油断はしないことだだった。
ゴブリンやオークでも群れで来られてもひとたまりもないからだ。
それで村がいくつか壊滅した事例もあるらしい、だから下級魔物でも油断してはならない。
そんなクラスメイト達が倒したモンスターは、ちゃんと死んでいるかどうかを確認する為に、黒杉は短刀を取り出して、ゴブリンやオークの死骸に首元を短刀で突き立てる。
それだけでも、経験値は少しは入るからひたすら短刀で突き刺す。
ただ、下手に刺すと血が飛び散り服や顔に付着する。魔物の血は腐臭が凄い。
「うっわあ、コイツくっせえ!!」
「ほんとだ、くっせええ」
「臭杉くん、くっせえ」
魔物の血が付くたびに、板野とその友達に「くっせえ!」「臭杉くん」とか馬鹿にされる。
クラスメイトの安全を守る為に、やっている事なのに、何故、馬鹿にされなきゃいけないのかが分からなかった。
その度に近くの川まで言って洗い流すの日課になっていた。
そして、この世界に来てからは生き物を殺すことに抵抗が無くなってくることに気づく、僕達は少しずつ感覚が狂って来ているような気がして何だか不安になってきた。
だけど旅を続けなければ元の世界には戻れない、だから黒杉たちは魔物であれば殺し続けた。
そうして、旅にでて1週間。
地道に魔物を倒した結果、レベルは15まで上がった。
黒杉はとある、スキルに疑問を抱いた。
「(しかし、成長・Ⅰというスキルはなんだろう?、経験値が増えているわけでもないし、レベルが上がってステータスが急上昇するわけでもないのに必要あるのか?)」
つくづく、スキルに恵まれていないことを実感する。
だけど普通の村人にはついていないこと。
ただ、違和感あるとしたら体力と器用さが高いってぐらいで
他のステータスは平均50ぐらいで前までは素早さの方が高かったのに今は器用さの方が高い。
何か条件があるのか、思考を巡らせ考える。
「なに、難しいこと考えているんだ、楊一?」
黒杉が難しい顔をしていると、一樹が話しかけてきた。
一樹は黒杉に近づいて、肩を組みながら話をする。
「いや、僕のスキルの事で考えてたんだ。これ本当に必要な物なのかなって思ってさ」
「なるほどな、確かに楊一のスキルはわけがわからないものが多いよな、表示されないスキルや成長って書いてあるのにまったく成長しないスキルとか、違和感しかねぇよなぁ」
そう言って、黒杉から離れて肩を組むように一樹も一緒に難しい顔をして考え始める。
「だから、条件をどうやって満たす事ができるのかを考えているんだ。」
「なるほどな、条件が分からなければ発動もわからないからな、言葉を発して叫ぶスキルとは違って、パッシブは自動発動みたいなもんだからな。」
基本的、この世界での【スキル】は技術や必殺技に該当する。
例えば、魔法なら詠唱が必要だし、剣で攻撃は正しい構え方が必要になる。
そして、スキルは必ず魔力を消費する。
レベルが必要としない、【ユニークスキル】、【ウェポンズスキル】、【イマジナリティスキル】が存在する。
【ユニークスキル】は特定職業でしか、覚えられないスキル。例えば御剣の天命剣がその一つで、勇者しか覚える事ができない。
【ウェポンズスキル】、武器事態にスキルが付与されている事で、この世界に魔剣とか存在しているらしいので、その類が武器が発動できると聞いた。
そして【イマジナリティスキル】、流派や自分の作り出したスキルの事を指す、簡単言えば、オリジナルのスキルの事だ。
本来は存在しない架空スキルのため、覚える為には誰かに教えてもらうか、自分の想像力とそれ相応の努力が必要となる。
【パッシブ】は自身の身体能力を向上させ、自動的に発動する。
基本的、自分の魔力量に比例して、強くなるのもあるし、剣を使った事にないのにうまく扱えるようになる。
【剣使い】と【剣の加護】がその例で、そういう身体強化系統のパッシブは使っている間は魔力は消費される。
その為、能力を使わないときはONOFFの切り替えが可能。
中には、魔力を消費しないパッシブもあるが、多分、黒杉のスキルがその系統に入る。
そんな、村人かつ、石投げしか覚えてない黒杉には無縁な話だ。
何故なら、魔剣を手に入れても、使いこなせる自信もないし、イマジナリティスキルを覚えようとしても、貧弱な村人の身体では魔力がすぐに空っぽになってしまう。
だからって、強くなることを諦めるつもりはなく、他の可能性を探し続けた。
「そうだね、それに少しでも強くなりたいからね」
「楊一は相変わらずだな」
一樹は空を見上げて、昔の事を思い出していた。
それは黒杉との出会った時の事を。
「(楊一のそういう所は昔から変わらない、だから一生コイツの友になりたいと思えるんだ)」
一樹はどんな状況になっても諦めない所を逆境に陥っても、折れない心を持つようになったのは黒杉のおかげだった。
昔の一樹は小学校の頃は良くいじめられていた。
その理由は目つきが悪いからという単純な事だった。
その為、喧嘩を売られていると毎回勘違いされ、酷い時には口から血が流れていた。
しかし、毎回いじめられる一樹は、ある時に偶然通りかかった楊一が守ってくれた。
昔の黒杉はいじめっ子相手に、水をぶっかけたり、犬の糞を投げつけたりなど、容赦はしないタイプだった。
ある時、自分よりも二つ上の学年の人に、黒杉は目をつけられてしまった。
力の差はあったが、それでも諦めずに抵抗した。
楊一はボコボコにやられてしまったが、黒杉の威圧にびびったのか、それ以降は誰も一樹の事をいじめる奴はいなかった。
しかし、ヘイトを買ってしまった黒杉は、いじめの対象が今度は一樹から黒杉へとなってしまう。
平気な振りをして、空笑いして『大丈夫だから』とか言っていたけど、一樹はそれに見るに耐えられなかった。
そのこときっかけで一樹は格闘技を始めた、今度は自分が守る側なんだと。
そして、今に至るのだ。
黒杉は大分丸くなったけど、諦めないって事に関しては変わっていなかった。
「一樹?どうしたんだい、僕の顔を見て?」
「いや、なんでもねぇよ」
そう言って、ニカッと笑う一樹。
変な奴だ、でもそれが心地よかったの。
そう思っているうちに北の洞窟『嘆きの洞窟』辿りに着いた。
「ここを抜ければ、スノーガーデンだ!、皆の衆!洞窟には気をつけろ!普通よりつ
よい魔物が沢山出てくる!気を引き締めて、挑むんだ!」
アルバートの声で、皆の背中がピシャリと真っすぐになる。
先頭はアルバート、その隣に続いて、御剣が歩き、クラスメイトはその二人に続くように洞窟の中へと入っていく。
――――――北の嘆きの洞窟
洞窟の中に入れば、すぐに暗くなる。
一人の生徒が精霊を呼び出して、洞窟を照らしたのだった。
明るくすると、壁が見えるようになる、しかし壁を見ると、人の顔がらしきものが見える。
よく見てみると、石が人の顔に見えているだけだった。人の頭位の丸い石が壁にアーチ状に埋め込められていた。
何かに削られた後だろうか、その壁のついている、顔はすべて嘆いているように見える。
とにかく不気味で、周りの人たちは「何あれ・・・」「こわい」と怖がる者がいるが、御剣が「大丈夫だよ」って言って、皆はミツルギコールしながら平常心に戻った。
その度に御剣の目が、死んでいくような気がした。
流石に洞窟の中でミツルギコールをしたせいか、アルバートが怖い顔して。
『お前ら!うるさいぞ!洞窟な中で叫ぶな、響くだろ!魔物が集まってきたらどうする!』
怒鳴り声が洞窟に響く、ごもっともだが、アルバートの声が一番響いたの言うまでもなかった。
流石に怒られたので、クラスメイトの皆はシュンとなって大人しくなる。
そのまま、順調に奥の方へと進んでいく。
奥に行くほど、洞窟の温度が下がっていき、皆の白い吐息が目立つ。
「寒いわね・・・」
美空は白い息を漏らしながら、小さく呟く。
身体を小刻みに震わせるのが見える。
寒さに強い美空でも、寒いって言わせるぐらいなのだから。
黒杉が鞄から何か取り出す。
取り出したのは、赤い液体が入った瓶。
瓶の中には色が抜けた赤い薬草や木の実、果実が入っていた。
「ほら、これ飲んで」
「これは?」
瓶の中身を不思議そうに見つめる。
見た目はそんな悪くない筈。
「ホット〇リンクだよ」
「モン〇ンかな?」
そう言って、しぶしぶと瓶に入った赤い飲み物を飲む。
その瞬間、さっきまで寒かったのが身体の奥からじんわりと滲むに暖かくなってくる。
「なにこれ、美味しい、フルーツの甘味が効いて、後味がスッキリしてて飲みやすい!しかも、身体が暖かくなってきた」
「それは良かった、自分で作ったんだ」
この世界にある【アッタカ草】という薬草を使った飲み物だ。身体を温かくする作用があって、寒い地域で冒険する時はこれを噛んで寒さを凌ぐらしい。
だけど、この薬草を試しに噛んだ結果、苦すぎてすぐに吐いた。
このままじゃ、飲み込めないので、薬草を漬けて、甘みの強いの木の実とフルーツを入れるて苦味を軽減させて作った、黒杉のお手製ドリンクである。
「へー、料理できたんだ」
「まあね」
他のクラスメイトの視線が突き刺さるが、あえて無視することにした。
何故なら、そんな用意をする事ができなかったから、いざとなった時にしか使わないにした。
そして、何よりも板野達みたいに、馬鹿にしてくる人には渡したいとは思わない。
それから、道中には魔物が出てくる、やはり今までの出会ってきた魔物はとは違って手ごわくなっている。
魔物の大きさと強さが違ったのだ。
特にコウモリ型の魔物【ビックバット】は空を飛んだりしてるため、攻撃が当てにくい。
地上では、水色の鱗を纏った、人型のトカゲ【アイスリザードマン】が槍と盾を持って立ちふさがる。
アイスリザードマンは舌を出し、フシューと音を出しながら、舌を出し威嚇をする。
それに怖気づいてしまう生徒がいたが。
「怯むな!今まで通りにやれば大丈夫だ!魔法隊は火炎魔法の詠唱をしてくれ!」
御剣の言葉によって、陣形が崩れることはなかった。
魔法組の方は横に一列になる、初級魔法・炎を詠唱する。
詠唱中を始めると赤いオーラが体から滲み出る。
「「「紅波の呑まれよ!"過炎"≪ディ・カペス・フラン≫」」」
クラスメイトから放たれる、炎は魔物の群れを巻き込むよう一掃する。
魔物は炎によって、黒焦げになりそのままパラパラと消えていく。
一人の初級なら効果は薄かったが、束となれば中級魔法に匹敵するだろう。
魔物を一掃したところで、更に奥へと進んでいく。
奥に進むほど、魔物数は増えていく上に強くなっていく、それでも魔力の消費を抑える為に初級魔法で対抗していくのであったが、そうもいっていられなくなってきた。
洞窟に潜ってから、4時間経過して所で、魔物が急に強くなっている。
「っく・・・」
御剣はリザードマンの攻撃を受け止め、そのまま、押し出して切り裂いていく。
先ほどのリザードマンの攻撃を受けた止めきれなかったか、御剣の片腕に傷があった。
「斎藤さん、御剣君の右腕に怪我をしているから、手当てしてあげて!」
「わ、分かりました!」
ヒーラーの一人が御剣に回復をしに行く。
御剣の傷は少しずつ回復していく。
しかし、回復仕切る前に、どんどん増えていく。
「おかしい・・・あまりにも多すぎる」
アルバートは違和感を感じた。
魔物があまりにも多すぎるという違和感を感じた。
前に来た時は、ここまで酷くはなかった。
嫌な予感がして、アルバートは一旦撤退をさせようとするが。
「大丈夫です!まだいけます!」
「しかし、だな・・・」
アルバートが何か言う前に、御剣の剣が眩く光り出しスキルを唱える。
唱えると、剣が刀身に光が集まって、刃の形になって伸びる。
なびく金の髪と光の剣が皆を見惚れさせてしまう。
その姿はさながら、勇者と相応しい。
「輝くよう綾なせ!断裁の光!『クロス・ジャッジメント』!!」
御剣は奥義を放つ、十字に斬りつけ光の斬撃が真っすぐ飛ぶ。
十字に斬りつけた放つ光は魔物を黒から光へと粒子になって、次々と浄化させていくの。
その代償に、多大なMPを消費していく。
御剣は技を放った後に、憔悴した顔で膝を付いた。
皆が見惚れている中で僕は咄嗟に、鞄から青い瓶を取り出す。
これは魔力回復薬だ。
膝を付くのがやっとのなのか、横にさせて飲ませる。
飲ませたおかげで、御剣の表情が少し柔らかくなる。
「御剣君、大丈夫かい?」
「黒杉くん、ありがとう助かる」
そう言って、御剣が黒杉の目を何故か真っすぐ見つめる。
それが何だか恥ずかしくそっぽを向く。
「ハハ、僕にはこれしかできないので.」
「そんなことないさ、君のサポートは的確で助かる。」
そう言って、微笑む御剣
微笑む笑顔だけで、輝くとかイケメン過ぎる。
くっそうー!イケメンだなぁ!この野郎!と思いながら治療続けた。
かくして、御剣のおかげでなんとか、山を越える事ができた。
しかし、この調子の流石に御剣を戦わせるのも危ないという事で、クラスメイトとアルバートは一旦休憩することになった。
休憩が終わったが、未だに、疲れている人もいれば、眠そうな人もいた。
御剣がせっかく開いた道だから、無駄にするわけ行けないと、地を踏む。
しかし、この後起きる悲劇の事を知らずに、勇者たちは奥へと進む。
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