ぼくのサンタクロース
usagi
第1話 サンタクロース
いとこのユキちゃんが言うには、サンタクロースは白いひげを生やしたおじいさんなんだそうだ。
「わたし、2歳のときにサンタさんのひざの上で一緒に写真をとったもん。」
と言っていた。
ばかだなあ。
あれは、ショッピング・モールでやとわれた飲んだくれのおっさんがつけひげをしていただけなのに。
本物のサンタクロースはね、、、。
実はぼくと一緒の日本人の小学1年生で、ぼくは名前まで知っていた。
それは「ユキオ」というとにかく感じの悪い子どもだった。
その子が本当にサンタクロースだ、という証拠もあった。
だってユキオは歳をとらなかったから。それは後でわかることなんだけどね。
ぼくが初めてユキオに会ったのは、4歳のときのクリスマス・イブだった。
寝る前、お父さんとお母さんに、「今晩、サンタクロース来るかなあ?」と何度も言われたせいか、その夜僕は先入観たっぷりにベッドに入ったことを覚えている。
夜中に鈴の音が聞こえてきた。
「シャン、シャン」という、サンタのトナカイがつけている鈴のような華やかな感じではなく、それは「チリン、チリン」という、猫のおもちゃのような安っぽい音だった。音はツリーの下の方から聞こえてきた。
ぼくはお母さんに気づかれないように、(まだそのときお母さんと一緒に寝ていたから)、そっと音をたてないように気をつけながらツリーまで歩いて行った。
ツリーの下をみると、そこには小さな木の箱が置かれていた。
鈴の音はその中で鳴っているようだった。
その音はチリチリと耳障りだったし、大きすぎた。どうしてお父さんやお母さんが目を覚まさないのか不思議なくらいだった。
「やべえ、気づかれた。」
と、突然後ろから声が聞こえてきた。
見るとそこには小さなサンタクロースが立っていた。
きちんと赤いガウンと、白いポンポンの付いた赤いぼうしをかぶっていたから、サンタクロースで間違いなかった。だいたいその日はもうクリスマスだったから。
そんなことを言わなければ、まったく気がつかなかったのに、とぼくは思った。思えばユキオは最初からばかなやつだった。
小さなサンタクロース、ではあったけど、そのときのぼくからはだいぶ大きく見えた。
ぼくはその子とは初めて会ったはずなのに、どこかで見たような目をしているな、と思った。
「もう、これやらねえからな。」
サンタクロースは、鈴の音を放ってしいた小さな箱を大事にかかえながら言った。
箱は金色の包み紙できれいにくるまっていて、白いリボンと飾りがついていた。
「これ、青葉の!」
ぼくは、それに反応し思わず声をあげてた。
やらねぇってことはぼくがもらうはずだったものだと思ったから。そのときぼくは、なぜかその箱がどうしても欲しくなってしまっていた。
ぼくはその箱をうばいとろうと一生懸命ひっぱった。向こうにぐいと強い力で引かれ、ぼくはドン、としりもちをついてしまった。
「やらねえったら、やらねえってば!」
サンタクロースはもっと大きな声で叫んだ。
「じゃあ、バイバイ。」
「一応、メリー・クリスマス、ということで。」
その子は勝手に怒り、捨て台詞を残してさっさと玄関まで歩いていった。そのままギイとドアを開けて出て行くと、ガチャンと外から鍵のかかる音が聞こえた。
ぼくはとても悲しくなり、とぼとぼ歩いてベッドにもぐりこんだ。泣きながらお母さんの体にくっついていると、いつの間にか寝てしまった。
そしてクリスマスの朝、ぼくは起きるとすぐにツリーの下を見に行った。
でも、やっぱりあの金色の箱は見当たらなかった。
「なんで、昨日の夜はあの箱が欲しくなっちゃったんだろう?」
思い出しながらぼくは思った。
別につまらない鈴なんかいらなかったのに。
本物のクリスマスプレゼントとしてもらったものは、サンタさんには悪いけど今ではもう覚えていない。
「サンタクロースきたんだ!よかったね。」
という、笑顔たっぷりのお父さんの声だけは覚えている。
ちっちゃなサンタクロースはあんな、大きな箱を持ていなかった。大人のサンタクロースが来てくれたんだとは思うんだけど、、、。ぼくは小さいながらも複雑な気分になった。
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