第10話

脳に刻まれた快感を

消すことは出来ない

ニューロンが直結する

あの快感は

確かに 私の脳に刻まれている


綺麗な海を見て

心から綺麗と言いたい

そよぐ風を感じて

心から心地よいと言いたい

肌寒い日に暖かな陽射しを感じ

心から太陽に感謝したい

偶然のような出来事に神を感じ

心から神を信じたい


地上を巡回するもの

ほうぼうを歩き回るものの

甘言に負けず

今日という日 明日という日に


歪むことなく

真っ直ぐ前を向いて歩きたい


小さな袋に入った結晶

オレンジや赤や白色のキャップをつけた

注射器の群れは

私の心を不安定にする

脳に刻まれたあの快感が

鼓動を歪め両手を震わせ

私の目は閉じてしまう

心の底から 水に溶けた偽りの薬を

餓えを無くし 天地をつなげる

白く見える結晶苦い薬に溺れたい


消えることのない快感の記憶が

私を苦しめている

私の人生を食いつぶしていく


今 私にはそれが見えた


目が開かれていく

自分の醜さが見えてくる

欠けた心 奪い盗む手

覚せい剤を入れるための左手

覚醒剤を射つための右手

呪われた手

呪われた体

呪われた脳

歪み続ける世間


神よ

私の立ち直りはあるのでしょうか

私はあなたに縋ります

この身を委ねます


私の脳と精神に

平安が来ますように

私のまわりの人々が

笑顔でいられますように

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