第2話

オレが取り憑かれている狂気

狂気の正体に

オレ自身も気付いている

気付いたふりをしているのか

本当は何も見えていないのに

オレ自身の作り続けている

幻影にただ踊らされているのか

今 目の前に見えているのは

本当にそこにあるのか

オレの左手

オレの右手

肌の上をはしる風は本物か

どこからか聴こえる鳥の声

暖かく俺を包む日差しと

太陽の熱は本物か?


感じている空腹

血の滲んだレアなステーキ


優しい声

細い指先

鼻をくすぐる彼女の甘い息


狂気の自分を知っているから

オレはオレを信じられない


方程式と幾何学を学び

ユングとフロイトを読み

天文を量り星座を追いかけ

聖書を開いた

人体の急所を学び

悪魔的な錬金に手を出し

そして覚醒剤を知った


乖離という言葉の意味を理解した

不調和と混同

結晶を通してしか

リアルを感じられない不自由

0.4gに嘘をつく狂気

水が無いときに

便所の水で注射する狂気

世間を逆恨みする狂気

暗い自室で

物音も立てず

目ばかりをギラギラと光らせ

壁に耳をあてる

狂気

暗くした自室

カーテンの隙間

誰かが覗いている

狂気

玄関のそと

誰かがこちらを伺っている

狂気

玄関のドアスコープ

外を覗いたまま動けない

狂気

ヤラれる前にヤレと

包丁を手にする狂気


世界の全てが

警察とグルになって

オレを監視している


覚醒剤 狂気の薬

オレの薬

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