第28話:父に会いに、日本へ

 その後、2013年9月3日、塚田守は、父に会って来ると、奥さんに告げると、奥さんが、行ってらっしゃいと言い、留守は守るからと言ってくれ、リスボンから日本へ向かった。塚田守は、「父の所へ行って、助かって本当に良かった」と言うと、父が「あの時の声は、お前だ、と言い、救急車を呼べって言った」と驚いた様に思い出した。


 あまりに気味が悪いので、お母さんが、菩提寺の和尚さんに、その話をすると、稀に、そう言う事もあるようですと教えてくれた。それは、「息子さんの御両親への愛情が余程、強くて、どんなに離れていても、心が伝わる」という事ですと、説明してくれた。その話を聞いて、父が、「塚田守を近くに呼んで、本当にありがとう」と涙ながらに言った。


 そして、このお礼をすると言って、お前の今、使ってる銀行はと聞くと、三菱UFJ銀行リスボン支店と言うと、俺も三菱UFJ銀行だと言い、口座番号を書いておけと言い、昔、株で儲けた金の一部を送ると言ってくれた。


 そうして、塚田守は、「両親に、我が儘、言って、勝手に、ポルトガルに渡って、申し訳ない」と言うと、「向こうで、良い家庭を作って、子供を立派に教育して、一人前の素晴らしい大人に育て上げろ」と言ってくれた。


 その後、「申し訳ないけれど、ポルトガルに帰ります」と言って実家を後にした。そうして、2013年9月10日に、電話で、三菱UFJ銀行リスボン支店から、「日本から1億円の入金があったのですが、ご存知ですか、心当たりはありますか」と言うの、「あります、父、塚田一郎から送られたものです」と言うとわかりましたと答えた。


「マネーロンダリングにしっかり取り組むように」言われて、お尋ねしただけで、悪意はありませんので、ご了解下さいと、丁重に言いうので、大変ですねと伝えた。父の1億円の送金で、2013年9月に、5千万米ドルになり、残金が5千万米ドル、507万ユーロと7.1億円となった。


 2013年9月に、三男の辰男が高校3年生、次女・美恵子が高校2年、三女・貴子が高校1年になった。辰男は、アメリカの大学に進学したいといって、クラブ活動や、生徒会や、ボランティア活動を積極的にこなしていた。父のクルーザーヨットで、家族全員で、食料品や飲み物、ケーキを買い込んで、朝9時に、ヨットハーバーを出て、リスボンから北へ100kmのペ二シェ岬まで行く、クルーズ旅行に出かけた。


 次女・美恵子が、「思い起こせば、2011年3月11日の東日本大震災で完全に、茫然自失となり、地震大国、日本を離れる決意をした」。そうして、「父が、家族全員に、日本を離れる」と言いだし、「まさか、嘘と一瞬、思ったが、どんどん、ポルトガル移住の話を進めて、どうなるか、内心、心配していた」と話した。しかし、ポルトガルに来てみると、日本より、ゆっくりと時間が流れ、素晴らしい自然と気候に、いつの間にか、なじんで、好きになった。


 そうして、「ポルトガルの有名私立学校のカルルーチ・アメリカンスクールに入学させてもらい、良い環境で勉強ができて、友人達も素晴らしく、この国で、頑張っていこう」と決意し、「経済を勉強し、この国と自分達の発展のために、活躍したいと考えている」と、みんなに話した。最後に、父が、「じゃー、みんなグラスを持って」と言い、「これからの塚田家の前途を祝して、乾杯」と言った。

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