第37話:加納幸夫さんの前立腺癌

 2007年3月、加納幸夫さんに前立腺癌が見つかったと言う話を、平成芙蓉会

の会合の時、石津三千子に、加納夫妻が相談に来たが、進行の程度がわからないと、

なんとも言えないと、話すと、次回の病院の診察の時に、ついてきて欲しいと言わ

れて断れず、石津夫妻でついて行き、泌尿器科の先生と加納夫妻と、一緒に診察室

に入り、話を聞くと、前立腺癌が、大きすぎて、手術の適応ではないと、言われ、

女性ホルモン療法で、進行を抑えるしかないと言われた。


 奥さんが、あと何年くらい持ちますかと、質問すると、何年とは言い難いけれど、

それ程、長くない、奥さんが10年と聞くと、それは厳しいと言い、5年ですかと

聞くと、それ位と考えた方が良いと答えた。後は転移しない様に、願うしかないと

言った。釣りは続けて良いですかと聞くと、身体がきつくなければ何をしても良い

と言い、薬を欠かさずに使って下さいと言うだけだった。診察を終えて、出て来て、石津三千子は何も言えずに、黙っていると、奥さんがたまらず、今度どうやって生きていったら良いのでしょうかと、聞いてきたので、今まで通りに、できるだけ、人生を楽しむしかないし、現在、ひどい症状があるわけではないのだから、趣味や、小旅行も、できますと言った。釣りも良いのですかねと聞くと、先生も言われたように、基本的に身体がきつくなければ、制限はないと言ったとおりに、人生を楽しむしかないのではと助言した。


 その話を聞いて、加納幸夫さんは、カラマラン・クルーザーに乗って、近くの海

を走ったり、釣りをしたりして、行こうと話した。奥さんが、私たちには、子供も

いないし、故郷と遠く離れて、親しい親類が、1人もいませんので、気は楽ですが

余命5年と言われたら、どうしたら良いか、迷ってしまうと言うと、石津三千子は、

それは当然です。残された自分達の人生を精一杯、楽しんで生きることを心がける

べきでしょうと励ました。加納幸夫さんは、吹っ切れたように、石津健之助に、

また、いっぱい、大きな魚を釣って、刺身、塩焼き、煮付けにして、食べましょう

ねと言い、肩をたたくと、石津健之助の目に涙が、たまり、やがて、流れ落ちた。

その後、石津健之助は、気を取り直し、加納幸夫さんの手をしっかり握り、精一杯、

楽しんで生きようというと、2組の夫婦が、涙を流しながら、がっちりと握手を交

わした。


その後、2週に1回程度、釣りに同行するようになり、釣ってきた魚を、石津健之助がさばいて、石津、加納夫妻の4人で食べて楽しんだ。そうして、ある日、加納幸夫さんが、石津健之助に、一級小型船舶操縦士の免許を取れよと言い、俺が死んだら、あんたに、この船を任せるから、外洋までいけるように、是非、取ってくれと頼まれた。その話を聞いて、わかりました、一級小型船舶操縦士の免許を取りますと言った。その後、参考書を買いに行こうと言い、小田原の大きな本屋で、参考

書を買い、勉強を初めた。


 2007年4月からヤマハの教室に入り、カラマラン・クルーザーヨットの運転

を習い始めて、2回目の実技試験、2007年10月20日、念願の一級小型船舶

操縦士の免許を取った。その晩は、加納幸夫さんと石津健之助は、加納さんのマン

ションで、祝賀会を開き、いつになく、ビールを飲んで、喜んだ。


 為替の方では、2007年になり豪ドルが急上昇して、2007年10月2日に

1豪ドル107円になり、200万豪ドルが年利6%で7年で50%の利子がつい

て300万豪ドルになり、1豪ドル107で、両替して3億2千万円となり、税引

き後利益1.6億円となり残金2.2億円と合計して、3.8億円となった。

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