墾田永年私財法

 庭の整理が好きだった

 雨が降っても雪が降っても

 どんな季節でも

 何か種をまいていれば必ず何か咲いたから


 僕は墾田永年私財法を作ったんだ

 それが僕の初めての小さな場所

 誰にも気づかれなかった


 僕の墾田永年私財法は次第にみんなに知られていった

 いつだって何かしら咲いていたから


 ある日別の墾田永年私財法を持っている大人が来て

 この法律は僕には早いと言い出した

 でも僕は何もわからなかった


 季節が廻り花が咲く

 僕にはそれだけでよかったんだ


 季節が廻り花が咲く

 僕がしたいことはたったそれだけ


 季節が廻り花が咲く

 嵐の年も吹雪の時もあるだろう


 季節が廻り花が咲く

 でもいつだって種を蒔かないわけにはいかないんだ


 季節が廻り花が咲く

 また花が咲けばそれだけでいいんだ




 季節が廻り、たくさんの庭を知った

 墾田永年私財法はたくさんあった

 庭の数ほど法律があった

 それを眺めることは好きだった


 長いものも短いものも

 手入れされているものも勢いに任せたものも

 全部全部愛おしくて

 ただここをずっと翔けていたい

 


 僕の合言葉はたった一言

 

 


 「こんなんでええねん私財宝」

 




 季節が廻り花が咲く

 嵐の年も吹雪の時もあるだろう


 季節が廻り花が咲く

 でもいつだって種を蒔かないわけにはいかないんだ


 季節が廻り花が咲く

 また花が咲けばそれだけでいいんだ


 季節が廻り花が咲く

 どんなに他人の花が綺麗に見えたって


 季節が廻り花が咲く

 どんなに嵐に巻き込まれたって


 季節が廻り花が咲く

 種を蒔いて水をやろうよ


 季節が廻り花が咲く

 本当はたったそれだけのことなんだから



 こんなんでええねん私財宝



 


 ねえここに来てもいいけど花を荒らさないで



 

 





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