いつかの約束

勝利だギューちゃん

第1話

「ねえ、どうしたの?」

女の子が泣いている。

ナンパなんて、大それたものではない。

でも、怪我しているみたいで、ほっておけなかった。


「転んじゃって・・・」

女の子の膝から、血が出ている。

僕は、ハンカチを破いて、その子の膝に巻いた。


正しくない処置かもしれない。

でも、当時の僕には、それしか出来なかった。


「あのう・・・」

女の子が何か言っているようだが、僕はその場を後にした。

向こうから、女の子の親御さんと思う人が来たためだ。


後は、任せよう。


「ありがとう。いつか恩返しに行くからね」

女の子の声は、耳には届かなかった。


それから、10数年・・・


チュンチュン


朝、小鳥のさえずりで目が覚める。

自然の目覚まし時計。


窓を開ける。

「雀さん、おはよう」

気のせいか、雀も「おはよう」と言ってる気がした。


一階へ下りる。


家族はいない。

僕は1人暮らし。

天涯孤独ではない。


両親は揃って、海外へ転勤。

妹は全寮制の中学に入っている。


朝食は、それなりに作る。

体力は必要だ。


そして、ついでに昼に食べるお弁当も作る。

自分でいうのもなんだが、僕は女子力は高い。

お弁当を見ると、「女が作った」と、誤解される。


そのたびに、説明するのが面倒だ・・・

僕がクラスメイトと会話するのは、この時だけだ。


あまり友達がいないので、放課後はまっすぐ家に帰る。

そのあとで、買いだしに出かける。


買いだしをして、家に帰る。


「さてと、晩飯は何を作ろう」

「カレーなんかいいんじゃない?」

「今更、無理」

「じゃあ、ハンバーグ」

「昨日食べた」

「じゃあ、お鍋」

「よし、それで行こう」

・・・って、誰と話してるんだ?

僕は・・・


「やあ、お帰り」

眼の前の女性がいた。


「君は・・・誰だ?一体どうして・・・」

「気付くの、遅すぎ・・・相変わらず鈍いね、」

その女性は、古ぼけたハンカチを見せる。


「あっ、もしかして?」

「やっと、思い出した?私はあの時、助けてもらった精霊です」

「精霊ね・・・って、精霊?」

「うん。花の精霊。」

「どうして、その精霊さんが、ここに?」

精霊さんは、笑って答えた。


「言ったでしょ?恩返しに行くって」

「僕は何も・・・」

「ううん、私にとって君は、命の恩人だもん」

「そんな、大袈裟な」

確かに、大それた事はしていないが・・・


「だから、私が君と結婚します」

自分に自信があるのか、自意識過剰なのか・・・

あの頃とは、違っている・・・


「でも、なんで結婚なの?」

「それは、君を1人にさせないため」

「えっ?」

「一緒になれば、寂しくないでしょ?」

「あの・・・もしもし・・・」

「とにかく、決めたからね。旦那様」


こうして、精霊さんと暮らすことになった。

結婚と言っても、形だけだが、夫婦には違いない。


ちなみに僕は、18歳なので、ぎりぎりOK。


「わたしは、あやめ。君は?」

「僕は・・・」


こうして、ふたりで暮らす事となる。

とても、大変になってしまったが、それを楽しんでいる自分が、好きになった。


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いつかの約束 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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