機械天使の異世界旅行

熱物鍋敷

プロローグ 機械天使の目覚め

「さあ、目覚めよ! レヴェナンスXIII!」


 白衣を着た白髪混じりの男、間戸まど零時れいじはそう叫ぶと操作盤のボタンを拳で叩いた。部屋に駆動音が鳴り響き、カプセル内にいる少女の瞳に光が宿る。


「起動シークエンス開始」


 少女の口から無機質な機械音声が発せられる。


「出力回路安定、思考機能正常、姿勢制御装置作動」


 そう言うと、少女は背中まで伸びた銀色の髪を揺らしながら間戸の前まで歩み出る。


「初期動作完了。現在時刻を把握。おはようございますマスター。識別番号X-0013、レヴェナンスXIII正常に起動しました」

「素晴らしい! 完璧だ!」


 間戸は感嘆の声を上げる。


「イエス。私は完璧なマスターによって製造された完璧な存在です」


 レヴェナンスXIIIは無表情のまま淡々と答えた。


「レヴェナンスXIIIよ。お前の目的は分かっているな?」

「イエス。私の目的は、科学界からマスターを追放した者たちの抹殺です」

「そうだ! 私を馬鹿にした連中に研究の成果を見せつけてやるのだ!」

「言語データ参照。『それくらい朝飯前だ』……現在の状況に概ね合致と判断」

「う、うむ、そうだな。(ちょっと余計な機能つけすぎたかな?)」

「命令実行のため、空間転移を実施します。アルテマイトエネルギー充填開始」


 レヴェナンスXIIIの体が振動しながら青白く光りだす。徐々に体を覆う光が強くなっていく。


「おお……アルテマイトのエネルギー変換率が80%を超えるとは! これで理論上、空間転移も可能。やはりワシは正しかった!」

「アルテマイトエネルギー充填率、90%……100%……110%」

「あ、あれ? ちょっと出力が上がりすぎじゃ……」

「エネルギー充填120%。空間転移実施」

「ど、どわああああああ!!!」


 目もくらまんばかりの光を放ったレヴェナンスXIIIは、間戸の叫び声を飲み込みながら空間転移を実施した。

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