第25話心のシールド

今朝、このミドルシップに星間タキオン宅配便が届いた。


「まいど~」


「ご苦労さまです」



マザー・レインからの物だった。

同梱されているチップとともに。紙の封筒が同封されていた。

紙の便せんに印刷文字で長い手紙が書かれていた。



判明した事がいっぱいあった。

まず、私たちの行動や情報が漏れている事。

マザー・レインの名前とアドレスを使ってニセのメールが送られてくる事。

マルさんの偽物、透明部長1号の陰謀により。

私たち擬人の生命線である、シールドを無効化された事で。

惑星カニメシで保証を使って修繕するのも危険だという事。

トリンホトニクスもヤミに狙われている。

当然、あの会社の人達の生命も危険。



「うわああ・・・何これ?」

「こんな長い手紙読んだの産まれて初めて」


シャムロッドとサクラは驚いてるけど、ケイトには良く判らないみたい。

透明部長1号にも、ハニカミシステムが組み込まれている筈だから・・・

マザー・レインの居る、母星チーズへ帰りなさい。ですって。

イタチゴッコに成らないように、全てを入れ替えるみたいね。

同梱のチップは、暗号解読チップ「ワニグマ」

シップのフロアパネル・カード・スロットにブっ挿した。



「シスター・トリン」


「うわ、マザー・レイン」


「いいですか?これは過去の記録です」

「リアル生交信ではありません」

「しかしリアルな生交信にすり替わる場合もあります」


「はい、マザー」


「今すぐ惑星チーズへ戻って来なさい」

「あなた達には、ヤミの勢力に打ち勝つ装備が必要です」


「でもベースが・・・」


「大丈夫、新しく完成していますよ、何処かに」


「・・・・」


「長い交信は危険です」

「今すぐ切断しなさい、シスター・トリン」


「はいマザー」


ブツン・・・


「あ、あれ?」


「向こうから切ったわよ?おねーさま」


「うーん、やっぱマザーだけあるわね」

「私たちよりも未来に居るわ」




結局、母星チーズへ向かうことになった。


「うわあ、惑星チーズへ行けるんだ!」

「あたしも社会勉強が出来るわ」


「やっぱ女子高生ね、タダで修学旅行する気ね?」


「違います!チーズはあたしの星系じゃ有名なんですよ?」

「コードLPシリーズ発祥の地だから」


「え、そうなの?」


「トリンさま宇宙一の有名シスター・・・」


ポッ・・・



母星チーズの星系を離れて別の外縁星系にまで来てしまったから。

ジャンプを駆使しても、戻るには何十年もかかる。

トラブルを避ける為に、

コールドスリープ・マシン「冷凍冬眠装置」で寝るんですって。

仮死状態になるけど、人間のケイトには必要な事。

ケイトが可愛そうだから、みんなで寝るんですって。


ジャンプを繰り返して、タキオンの旅になる・・・




「いい?一回死ぬのよ?」

「仮死状態だから生き還れるけど」

「電子マニュアルには『蘇生時に感涙がある』・・ですって」


「艦長殿」

「自分は全身麻酔の経験があるから大丈夫であります」


「ケイトちゃん、手術でもした事あるの?」


「はい、大手術でした」

「小さな子供の頃でしたが・・・」

「だからいまだにうちは貧乏なんです」

「高額医療費を払うために家を売ったくらいですから」


「・・・女子高生も苦労してるのね、苦学生」


「ケイトちゃん、私たちを家族だと思ってね?」


「・・・照れくさいですよ、艦長殿」


「ケイトちゃん、あなたは少し年を取るだけだけど」

「あなたの家族に二度と会えなくなるのよ?」


「家出する時に覚悟は決めました」

「言いっこなしですよ・・・艦長殿」


「ケイトちゃん・・・」


「おねーさま、スリープの時間よ!」




私たちは死ぬ。

自らの意志で。

この宇宙は壮大で雄大で、全てを包み込む。

宇宙は海。

海へ帰る。

流星の私たちは、止まる事が出来ない。

光が失われることはない。

自らが輝き続けるから・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る