第4話ミドルシップ『V・A・A』

「ミスター・ポセイドン」


「はい、シスター・トリン」


「先ほど次世代ステルス回路の図面を確認しましたが」

「バイパス電力が一定の基準値に成るための」

「サブ・モーターコイルが正しく組み込まれていません」

「コンピュータ・チェックではハジかれてしまう原因です」

「私が接続をやり直してきますから」

「その間に、シグマ・ドライブのテストをするための」

「セットアップを済ませて下さい」


「シスター・トリン、お言葉ですが・・・」

「シグマ・ドライブは既にこの機体では何度も運用されています」

「いま、テストをする必要はないと思いますが」


「ポセイドン」

「他の存在が体験した実践データは、当てにはなりません」

「あなたを信用していない訳ではありませんが」

「私、トリンが実際に体験して確認しておきたいのです」

「イザという時は、自分しか頼りになりません」


「了解しました、シスター」

「実践テスト、初期値データを適用します」


「プラズマ・エンジンの出力を効率的に下げて下さい」

「長い航路に成ってもいいように」


「了解しました」


「シスター・トリン」


「はい、ミスター・ポセイドン」


「ワタクシの長い実践歴の中でも」

「あなたほどのマスターは初めてです」

「あなたへの呼称をキャプテン・トリンに変更する許可を下さい」


「許可します、ミスター・ポセイドン」


・・・・・・・・・

・・・・・・・・・


「シグマ・ドライブ、コイル接続完了しました」

「10秒後に出力臨界点に達します」

「キャプテン・トリン」

「シートに座ってエア・ベルトを固定して下さい」


「はい、ポセイドン」


・・・・・・・・

・・・・ブワッ・・・・

キュー・・ン・・


これがシグマ・ドライブ・・・


一瞬で空間を跳躍できるけれど、僅かな演算ミスで。

異空間に弾き飛ばされてしまう。その時は生還は出来ない。


「本当に大冒険ね・・・」


シュゥゥゥゥン・・・・


視界が正常に戻った。


「テストを確認しました。シグマ・ドライブ機関閉鎖」

「プラズマエンジンを起動して下さい」


「了解しましたキャプテン」


「私は、ボディメンテナスのためにメディカルルームに居ます」

「惑星ドーターに近づいたら私の頭脳サーキットに電信して下さい」


「了解しました、キャプテン・トリン」


・・・・・・・・


「500年・・・・」


私は既に、断片的に記憶を取り戻している。


「ペイン・・・・」


・・・・・・


なぜ涙がが出てくるの?


「LP45W・・・」


この名称は、私のデータベースに入っていた。

太古の昔の時代の、最初に造られた擬人。


「清くまっすぐに生き抜いた擬人・・・」

「私もそう生き抜きたい・・・」


また涙があふれだした。


ピィー・・・・・


「!」


もうメディカルチェックが済んだの?

全てのバイタルは正常値・・・

確かに、500年も眠っていたのだから。

リペアどころか、あらゆる機関が最新の装備に組み直されている。


「!」


ポセイドンが呼んでいるわ。

いよいよ大冒険の第一幕が始まるわね!



バシュンッ・・・


「キャプテン・トリン。ドーターが目視できましたが、どう・・」


「管制センターに進入許可を求めて下さい」

「許可されたら案内に従って大気圏突入」

「惑星のサイクルデータ・重力データは有りますね?」


「はい、キャプテン・トリン。指示どうりに実行します」


・・・・・・


これが惑星ドーター・・・

私の母星「チーズ」と同じように青く美しい。

ドーターとは「ムスメ」

女の子でなく、

息子と娘のムスメ。


「・・・・・・」


まさかね・・・・

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