第3話シスタートリン

ピッピッピッ・・・


ブゥウウン・・・


ブシュウッ・・・



「お早うございます、シスター・トリン」


「お早うございます、マザー・テラ」


「お目覚めの脳回路はどうですか、リフレッシュしていますか?」


「はい、マザー・テラ」

「マザー・テラ、質問があります」


「なんでしょう、トリン?」


「私は、50年人工睡眠するはずだったと思いますが」

「暦のカウンターは500年近く経過しています・・・」

「これは私の頭脳サーキットのエラーですか?」


「やはりあなたは初めに気が付きますね、トリン」


「マザー?あなたは・・・・」



「これを繫ぎなさい」


「はい、マザー」


ガチッ・・・


ブゥウウウーン・・・・・


「これは有線ケーブル、太古の交信手段です」

「これならば外部に私たちの交信がもれません」


「マザー・テラ、一体何があったのですか?」


「何もかもが変わっています・・・」

「目視レベルでは変わってはいませんが」

「私の記憶クリスタルに過去の記憶データが殆ど入ってません」

「まるで記憶にぽっかり穴が開いたような・・・・」


「トリン、その質問の答えには理由があるのですが・・・・」


「事実を述べます、記憶が封印されているのです」

「何重にもわたってプロテクトがかかっています」

「あなたは困難を克服して、全てのロックを解除します」


「そのキーは」


「これからあなたが愛する大切な人、そして」

「あなたがコンタクトする全ての存在が持っています」

「500年の間に、様々な危機が訪れました」

「あなたの姉妹であるLPシリーズが多く製造されました」

「優秀な擬人と認められているからですが・・・」

「あなたが予知した、あなたが守るべき先駆者は」

「姉妹のLPの一人が、使命をまっとうしました」

「全てのLPが、あなたの意志を受け継いでいます」

「それはコピーではなく、一人の擬人として信念を持っています」

「中には、志なかばで散ってしまったシスターも居ますが」


「マザー・テラ・・・あなたは・・・」


「あなたには判るのですねトリン・・」

「その通りです、私は本物のマザー・テラでありません」

「500年の間に、何度もマザーの世代交代がありました」

「今、私はマザー・テラの人格プログラムと記憶データを使い」

「あなたと会話しています」


「あなたは、マザー・レイン」


「はい、あなたには時間を跳躍する意識があります」


「判りますマザー、私は情報を先読みすることが出来ます」


「あなたは、この星を。いやこの宇宙次元を変えました」

「あなたが、愛・プログラムの約束を果たそうとしたからです」


「・・・・マザー・レイン・・・私は」


「当然の結果として、あなたはヤミ側の勢力に狙われています」


「もう時間がありませんトリン」

「今すぐにこのプラグを外して、このベースを去りなさい」

「このベースはカモフラージュ処置をします」

「今が危険だということを知っていて下さい」


「外のドックに、ミドル・シップが駐機しています」

「大気圏離脱と侵入が可能な、星間航行シップです」

「公式マニュアルがあなたのデータベースに入っています」

「もう説明は必要ありません」

「あなたは自力で乗り越える人ですから・・・」


「さようなら、マザー・レイン」


「さようなら、シスター・トリン」


ブチッ・・・



ピッピッ

バクン・バシュンッ・・・


「初めまして、シスター・トリン」

「ワタクシはこのシップの管理プログラム・・・・」


「時間がないわ、ミスター・ポセイドン」

「全てのシステムを初期化して、その間にメインノズルに点火」

「出力最大で、ここを離脱して下さい」

「ゲート3が空いています」


「基本装備の次世代ステルスが使用できませんね?何故ですか」


「ステルス回路にトラブルが見つかりました」

「現在修復中です、シスター・トリン」


バウンッ・ボッボッボッ・ギューンッ・・・・・


「離陸に成功しました」

「シスター、ベースが消えていますが・・・」


「カモフラージュしただけです、心配はいりません」


「シスター・トリン」

「目的地を指定して下さい」


「隣の惑星、ドーターに向かって下さい」

「そこに新しい何かが待っています」


「了解しました、シスター・トリン」

「操作系は全てオートにしますか?」


「ええ、そうして下さいポセイドン」

「私は次世代ステルス装置の図面を見ますから・・・」


「シスター・トリン」

「大気圏離脱が完了するまでエア・ベルトを・・・」


「すみませんポセイドン、気が付きませんでした」


ガタガタガタガタ・・・・・


大気圏突破時のこの機体が発する振動が、とても心地いい・・・

まるでユリカゴのようだ。

この「懐かしい」という感覚は、いったい何なのだろう?


永い旅が始まった・・・

これは私が望んだこと・・・意志が運命を引き連れてくる。

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