HEautosco(L)Py

銃を持って 走る 走る 手が冷たくて

ナイフがいい? そんなの知ってるよ

だから銃を持って 走る 走る 手が冷たくて

セーフティ かちゃり 両手 脇を閉めて

乾いた音が響いた

ああ ああ 手が 腕が 耳が 目が

痛い 痛い 痛い 痛い ざまあみろ


僕を追って 走る 走る 足が棒だ

先行する 僕が銃を持ってるよ

本当に やるの? 本当に 殺すの?

もう後戻りはできない


ああ 死んでいるの

ああ 血が流れているの


殺したい相手がいるって 普通のことだと思う

毎日 毎日 家族や会社やすれ違う人を殺したい

そして僕も死ねないか悩んでる


そんなある日に渡された拳銃一つ 掌に

「これで殺しておいでよ」と彼は言った

そして誰を殺そうか悩んでる


ねえ なんで銃なのさ

ああ 銃が確実さ

ねえ なんでナイフじゃない?

ああ 殺せないかも、だろ?


彼は笑う 微笑む なんてことない

「これで殺しておいでよ」と彼は言った

彼が誰かを殺せと言うから


僕は 走る 追って 誰かを 追って

銃は 冷たい 冷たい 重くて 冷たい

乾いた音が響いた

手から銃が零れ落ちた

回転 止まって 銃口が向いている

なぜか 手が 暖かく

ああ、血のせいか と気づいた

ああ、死ぬのか と気づいた

ここは走って走って走って見知らぬ場所


僕は「人殺し」になんてなりたくない

だって自分が大好きだから

後ろ指なんて刺されるもんか

罵詈雑言 ありも なしも ぐちゃぐちゃ遺言

「お前らが人殺しだ」だなんて書いといた


ああ 目が霞んでく

ねえ 確実だったろう

ああ 血が流れてく

ねえ 殺せただろう


彼は「結末」に微笑んだ

――「人殺しができてよかったね」

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