【魔導剣士】鞘師アルフォンシーノの事件手帖―Episode0・Lost chain―
七四六明
ー Lost chain ー
【魔導剣士】
一時限目開始のチャイムが鳴ったとき、生徒達はすでに席についていなければならない。
それこそ、サインした契約書に書かれていることは律儀過ぎるほどに守る。律儀過ぎて、融通が利かないくらいである。
特に
彼女もまた例外ではなく、いやむしろ彼女こそ、契約の番人のような存在であるから、彼女の授業を受けたい生徒達は前の授業が終わると猛ダッシュで席を確保し、生理現象に苦しまぬようにお手洗いを済ませなければならない。
授業中の間食、居眠り、落書きは彼女の静かなる逆鱗に触れる。
そんな基本マナーすら守れない生徒は、彼女の授業を受けることすら許されず、無論どんな手練手管を駆使したところで、単位など取らされ貰えるはずもない。
彼女の授業を受けるならば、万全を期して、挑まなければならない。
それこそ、異世界の龍とでも対峙するかの如く。
「静粛に……と言う必要は、ありませんね?」
彼女のハイヒールの
玲瓏な声音が怒鳴る、もしくは叫んだところに遭遇した生徒はいない。
だからこそ怖い。
決して、陰険というわけではないのだが、誰よりも静謐のままに怒る彼女の心は誰にも掴み切れず、だからこそ彼女の逆鱗に触れたとき、誰よりも怖く思えるのは生徒達に限った話ではない。
彼女の名は
黒を基調とした意匠に、六本もの刀剣を携えた、貴族令嬢じみて落ち着いた雰囲気をまとう美しい女性。
声音も玲瓏。容姿端麗。才色兼備と褒め文句の揃った完璧超人であり、彼女がミスをしているところを誰も見たことがないというのは、彼女のことをちゃんと見ていない上辺だけの人間の間で交わされる話。
彼女を知る人曰く、彼女にもちゃんと弱点が存在し、ミスだってするし天然なところだってあるとのことだが、それ以外の人には完璧に見えてしまうほど、彼女という人間はできていた。
「それでは、授業を始めさせていただきます」
文字通り、寂しいくらい静かな静寂の中、始まる彼女の授業に集まる熱い視線。
彼女の授業を受けて将来立派になった者も多いため、皆必死だ。
実際にこの
そしてその教え子は今、彼女の旦那だ。
これはその旦那とアルフォンシーノが、初めて向かった仕事先での話。
二人が惹かれ合うきっかけとなった、事件の記録。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます