くっそー異世界に行ったらいいんだろう!

梅干しおにぎり

第1話

「くっそー!わかった、わかったよ!異世界に行けばよいんだろう!」

僕は、空中に書いていた小説を霧散させた。


西木田蓮、小説家になりたくてこの次元世界についてから僕はそう名乗っていた。

もといた次元世界では、自由に職を決められる法律がなく、必死に貯めたお金で違う次元世界渡る力を手に入れた僕は意気揚々とこの世界にたどり着いた。

しかし、

「なんで、こんな物語に溢れてる世界なんだ!どれだけの小説があるんだここは!!!」

湯水のように毎時、毎日、毎月当たり前のように供給される物語の数に僕は辟易していた。

出版社、コンテスト、自由投稿サイトにも挑戦したが惨敗だった。特に自由にお披露目ができるならば簡単だ、と自信満々に登録した投稿サイトシステムは地獄だった。空気、ご飯とかと同じようなレベルで書かれては消費されていくのだ。

アクセス数0の小説が、ゴロゴロしているマイページが僕の心を抉る。

「もうこうなったら、主人公に僕がもといた世界を旅してもらう話を書くしかない。異世界人が、異世界のことを書くなど邪道でしかないが…」


とりあえず、有名にならないと、目につかないと、興味を持たれないとこの物語の滝には抗えないだろう。

僕は紙に書くのがもったいなくて、空中に書いていた文字を組み立て直して目をつぶった。


「プロット作りからやり直すか。はぁ、ここまで異世界ものが多いと流石に本物の異世界伝記とはバレないだろうが…」


頭で考えた内容やネタを、雲のように白いインクが勝手に書き連ねていく。


「んんんん、他の次元世界にもわたって、織り交ぜた話を作った方が面白いか?この間読んだ小説も僕がいた次元世界の話そっくりだったし」


想像で他の次元世界を言い当てるとか、エスパー集団の集まりとしか言いようがない。

最初読んだときは、

え?ここの文明進みすぎじゃない?は?どんだけ異世界を発見してるんだ!

と慄きもしたが。最早、想像力に特化した人類なのだと諦めた。


「だとしたら、やっぱり実体験に基づく話を出さないと勝てる気がしないな…」


そうして、僕がその先渡り歩いた次元世界が全て想像力特化人が作り上げたものだと知ったのは125年80日後のことであった。



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くっそー異世界に行ったらいいんだろう! 梅干しおにぎり @umeboshionigiri

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