俺があの部屋に迷い込んでから戻って来て、下校してからの家でのこと
※
「ただいまー……って、今日は俺が先に帰ってきたか」
ちょうどいい。
おにぎり、誰にでも同じような気持ちを持ちながら作ってみるか。
俺と母さんの昼飯の分もいれて、か。
しかも、作り続けて疲れてきても、同じ気持ちで……。
確かにあの人のように無愛想に、そして父さんもつまらなそうにおにぎりを作ってたと母さんは言ってた。
でもそれで出来上がった物が喜ばれてるとするなら……。
余計な力を込めず、余計な感情を込めず、最初から最後まで、握ってみよう。
でも具になる物はたくさんないから、塩おにぎりにしてみるか。
「ただいま……あら。父さん張りにおにぎり作り? 頑張ってるわね。手伝おうか?」
「……いや、いい」
母さんが帰ってきた。
でも、なぜか話しかけられるのが何となくうっとおしく感じた。
俺のために頑張って働いてきてるのは分かるけど。
……何か言ってたみたいだったけど、そんなことよりも同じ調子で作り終えることが最優先。
とりあえず、八十個出来上がった。
「ふぅ……こんなもんか」
「お疲れ様。クラス全員分作ったの?」
「あ、あぁ、お帰り、母さん」
「え? 今頃?」
母さんはぷっと噴き出して笑った。
「晩ご飯、用意出来てるよ。母さんのしてることも気付かないで熱心におにぎり作ってたわね。お父さんそっくりよ」
俺は母さんに心配をかけたくはなかったんだけど……。
俺の人生の分岐点だ。
正直に今日起こった出来事を話した。
「……まったく……無理が一番危ないんだから。……でも……そっか。あなたが決めたのならいいと思う。応援するよ」
「でも、みんながこれを素直に食べてくれるかどうか分からないから、それだけが心配かな」
「そんなの、先生にお願いして、先生が作ったことにして配ってもらえばいいじゃない」
「先生じゃなくて教官ね」
※
母さんからの助言がなければ、ここまでうまく事が進まなかったよ。
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