救助と合流 そして俺は志す
石造りの小部屋に出ると、外の気配が穏やかになってた。
それに外からの明かりが、あの部屋に行く前よりも強く感じる。
「ちょっと様子を見てみる。後ろで待ってて」
「見るだけよ? 出たら危険だからね?」
随分ビビってるな。
ここは安全だってのに。
……ここに落ちてきた時とは明らかに違ってた。
誰かがたいまつを灯して、同じ感覚で壁にかけてある。
「お? エッジか?! フォールスはいるか!」
教官の声だ。
助けに来てくれたらしい。
「はいっ! 俺、エッジも、フォールスも無事です!」
「そうか! ……お、そこにいたか。無事で何よりだ。おーい! 救助者の無事、確認―!」
他の教官たちも俺のところに駆けつけてきてくれた。
フォールスはその声を聞いて通路に顔を出した。
「きょ、教官~!」
いつも気丈なフォールスが教官に泣きついていった。
いや、いくらなんでも……。
「うん、もう大丈夫だ。あれくらいの魔物なら、俺達には何の問題もない。エッジもよく辛抱したな」
「はい……あの……」
「ん? どうした? エッジ」
「俺……、別にフォールスに乱暴とかしてませんから」
「……お前なぁ……」
「はい?」
……俺、何か変な事言ったか?
※
教官たちに保護されて、クラスメイトと合流してからが大変だった。
「お前らっ! 静かにせんか! ダンジョンの外で安全だと言っても、騒ぎを聞いてダンジョンから出てくる魔物達だっているんだぞ!」
「騒ぎが屋外に響けば、歩いてここまで来れる距離じゃないがそこに住んでる人達の迷惑になるんだぞ!」
クラス全員がフォールスの無事を喜んでいる。
教官たちはその歓喜の感情を抑え込んで、何とか学校に戻ることができた。
フォールスはクラスで一番の実力を持ち、クラスで一番の実力を持つグループの一人。
学校に戻っても、みんなは彼女の無事を喜んでいる。
魔物を倒して教官達と戻ってきたことへの称賛が止まらない。
考えてみりゃ、こいつも特定の誰かと仲良しって訳じゃない。
かと言って、特定の誰かを嫌ってるわけでもない。
でも、孤独とか孤高というようなことでもない。
クラスメイトに相談を持ち掛けられたのを見たことはあるが、突き放すようなこともせず、かといって感情移入するようすもなく、なんかこう、事務的に対応してるような感じだった。
相談者がその場から去る時には、すっきりした気分のようだった。
つまり誰にでも同じような接し方をしてる、と思う。
だから、こいつにはアンチがいない。
ということは……。
精神的支柱って感じがする。
同じクラスだけど、別格って感じがするんだな。
俺はというと……。
俺はほら……魔力ゼロだし、ただの荷物管理と伝令の雑用係だし。
でも、フォールスを中心とした人だかりの中から時々聞こえてくる。
「あいつなんかほっときゃ、フォールスのことだからすぐに戻って来れたでしょうに。フォールスって……優しいんだね」
だと。
けど……。
そうだよ。
もっと俺を嫌え。
嫌っている相手にも効果を持つおにぎりを、多分あの人は作り続けてるんだ。
あの人と同じくらいに誰からも有り難がられるおにぎりを作ることができたなら、多分俺は父さんと肩を並べられると思うんだ。
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