第7話 小さき黄色い花

太陽の木漏れ日を

五月の太陽の木漏れ日を

寝転がって 浴びてみる


うとうと と 眠くなるのは気のせいか

耳の横にはホトケノザ

春の七草ではないホトケノザ


ここは山の中

青い草の香りと過ごす一日


「ずっとここに居てもいいですか?」

隣 ちょこんといる 小さき黄色い花に聞いてみる

「駄目! だって君 人間じゃん。

その内、ここも飽きちゃうよ。

君もね 仲間いないと飽きちゃうよ

私もね 私らの仲間がさ いるから楽しめる」


しばし 沈黙の時。

その時 携帯が鳴った

会社の友達からだった。

今日、飲み会あるから来ないか だと

お前が来ないとつまんない だと

そんな内容だった。

些細な内容だった。

でも うれしかった。

(俺も必要とされてるんだ)


俺は小さき黄色い花に言った。

「俺 行くよ」

小さき黄色い花は、

「たまにはここにも来て。

私が寂しいから」

そうして 風に吹かれて微笑んだ。


いつの間にか、夕日が射し込んでいた。

俺はその場を立ち去ろうと歩き出す。

未来へ向かって歩き出す。

振り返って、小さき黄色い花 

見ると……

涎垂らして 眠ってた

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