第5話 春
冬が終わって、春になったとさ。
タケノコ、ツンと澄まして、得意顔
「100年生きて 珍しい花を咲かすんだ」
竹達の祝福に包まれて
生まれたタケノコ、御曹司?
イヌノフグリ、
風に吹かれ踏まれながらも
可愛い花を咲かせます。
私はイヌノフグリと言う名ですけれども、
実は結構乙女なのです。
風に身を任す雲に憧れて、
隣の花と恋をする。
数日限りの……
だって私……
その為に生まれて来たんですから。
慎ましく生きるイヌノフグリを
タンポポ達は笑います。
俺たちゃさ
青春を謳歌する為、生まれて来たんだぜ。
スパイスのような黄色い花に太い茎!
俺達ちゃあ 春の代名詞!
ここは天国! 俺たちの!
そう、パラダイス!
そんな様子に桜の老木は微笑みます。
桜の風を吹かせながら……
毎年、新しいドラマが生まれるなと
桜は、思います。
友達のウグイスが言っていました。
ここはいい場所よ。
隣町なんかどうだい!
アスファルトってもんで覆われて、
木々の代わりに高層ビルがにょきにょきと。
話しかけてもうんともすんとも言わねえよ。
それに比べてここはいい場所さ。
みんなが笑ってる。話してる。
野性の香りであふれてる。
ちょいとギャングなスズメバチも居っけどね。
それもスパイスでいいもんさ。
ちょい悪おやじのウグイスはそう言いつつ
青い空にホケキョを一声
桜の老木、複雑な心境で聞いてます。
ここもいつかは……。
それでも今年も桜
薄い桃色花びら、散り終り
緑の衣をまといます。
初夏の清々しい香り、漂うようになりました。
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