マジックツール
にぃつな
兄に対する想いと悲劇
マジックツール
遥かイニシエノ時代から魔法はすべての生物に与えられた異能(ちから)。
温もりを与え、闇を照らす灯りとなる=炎。
生物に潤いを与え、時には頑固な物にも貫く=水。
臭いをみんなに与え、気候にも変化を与える=風。
はじける光は時には力になり、相手を傷つける=雷。
暗い場所でも聖なる力が温もりとともに清浄を与える=光。
明るい場所を淀ませ、死へと近寄せる病のもと=闇。
生物たちは各属性を選び、その力を使って繁栄と進化を貫いてきた。それを繰り返した結果、現代にいたる。
――魔法は古臭い。唱えるにも呂律が回らず発音できない。書くにも文字の書き込みミスったりついつい繋がったり汚い字になってしまったりと魔法が発動できなかったりと苦労する。
スマフォやタブレットとiPadなど主流となった現代では、データ上に書き込んだ文字や音声を読み込んで、魔法を発動するようになったが、上記の問題で不発に終わるケースが相次いでいた。
みんなみんな、声優のように発音が良い方でもなく、習字のように文字が上手いわけでもない。
そんな現代で苦労する者たちに助け舟が訪れた。
それが、マジックツール。
カードに登録した魔法をかざし、魔法名を唱えるだけで魔法が使えるという不思議で奇妙でアンビリバボー。魔法の生みの親である間包(まほう)海蔵(うみぞう)さんもびっくりだ。
マジックツールはいろんなところで活躍する。
通勤時間に間に合わず寝坊する社会人に風属性のマジックツールで絨毯に風力をかけ、浮かせ、モータボートのように扇風機に風の力を贈ることで=魔法の絨毯となり、会社までひとっ飛び!
工事現場で汗だぐになり、疲労慢心。
そんな時に水属性のツール。
喉の渇きや汗も水の浄化によって潤い、硬くてとうせんぼうする固い岩でも砕いてくれる。
暗記ができず困っている子供でも、水と風魔法の応用で単語や数式をジュースのように混ぜ合わせ、飲むことで直接頭に叩き込むことができるなど、独自のアイディアでマジックツールは瞬く間に吸い込まれていった。
そんなマジックツールに汚染されず昔のやり方を突き通し、今になれない者たちを〈古い魔法使い〉と呼んだ。
〈古い魔法使い〉は、現代流であるマジックツールを嫌い、昔のように描いたり読んだりするようにする集団だ。
過去と未来の技術が混ざることはない。どちらかでいざこざが起こり毎度のように喧嘩し、どちらかが破れ生き残る。
ガソリンを使って車を走らせる古来のやり方と電気や植物オイルを使って走らせる未来のやり方。ぶつかり合って結果、今でもガソリンを使った車が多い。電気や植物オイルでは燃料的に不足しているため、負けた。
当時、スマフォが出た時代、ノートPCの方が画面が広くてキーボードもついている。ポケットに入れたら割ってしまうかもしれないし、画面が小さくてキーボードという打ちにくいと言われていたのが、徐々にノートPCの存在が消えて行き、スマフォの時代がやってきた。
しかり、古来と技術と未来の技術、勝ち残るというよりも人々にどのように伝えられ、使われるのか、マジックツールの流行で、人々に与える影響はどうなるのか、それがこの物語である。
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