ろうそくの火が消えるその前に

勝利だギューちゃん

第1話 普通への憧れ

僕は病院にいる。

もう、かなり長い間入院している。

病室は、個室に移された。


「いよいよだな・・・」

覚悟は出来ていた。

死ぬのは怖くない。でも、強くない。


未練はないか?と訊かれれば、答えはNOだ。

ひとつだけ、やり残したことがある。

せめて、それだけは叶えたほしい・・・


「迎えにきたよ」

寝静まった病院に、黒服の女の子が現れた。


「君は?」

「私、私は・・・」

「死神・・・だね」

「うん、なら話は早いね」

「僕を連れていくんだね」

「うん、物分かりがよくて助かった。みんな抵抗するんだけどね」

「運命だ、覚悟は出来ていたよ。」

「じゃあ、早速行く?それとも思い残すことはある?」

僕は迷った挙句、その想いを口にした。


「ひとつだけあるよ」

「何?」

「少しの時間でいい。君のようなかわいい女の子とデートがしたい」

「それでいいの?」

「うん。僕も年頃の男だからね」

「OK.じゃあ行こうか」

「どこへ?」

「デートよ。さあ起きて」

僕はベットから起きた。


死神と名乗る女の子は、まじまじと見る。

「その格好じゃ、だめね。待ってて」

女の子が何かを唱えると、僕の服はとても、おしゃれな物となった。


「次は君の番」

「えっ」

「私にどんな格好をしてほしい?何でも答えるよ」

確かに黒服じゃ、らしくない。


僕は、自分の好みの服をリクエストした。

「それでいいの?」

「うん」

「欲がないね。わかったわ」


女の子は、再度呪文を唱える。

すると、僕のリクエストした格好の姿になった。


そう、それは今時の女子高生。

女子と肩を並べて下校して、放課後デートを楽しみたい。


その、夢が叶う時がきた。

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