第3話 舘谷葵はやっぱりわからない


「なあ、舘谷って結局どっちなんだ?」


別の男子にこう聞かれたことがある。俺は女子の制服に混ざる葵を横目で視認しつつ呟いた。


「俺も知らねーよ」


葵はやはりこうやって好奇心むき出しの目を向けられることが多い。



葵がトイレに行くのを尾けた奴がいるらしい。

でも葵はまわりの視線なんか気にせず、堂々と男女共用の、多機能トイレへ入っていったそうだ。



「え、ルー、幼馴染じゃねーの?」


「そうだけど、知らない」


女子と何かの話で盛り上がっている葵の制服姿を見てみる。


スラリと長い足。


胸も出てない。元からないのか、小さいだけなのか…



「ルー、何ジロジロ見てんの」


あ、バレた。


「あ、いや」


「へんたーい」


葵は他の女子とクスクス笑うと、俺から視線を外した。



「でも、可愛いよな。女だったら狙うわ」


「それで男だったパターンだよな」


「うわ、しんど」


他の男子の笑い声を他所に、また葵を見てみた。


振り返った葵と目が合う。



にっこり笑って、左手の中指を立ててきた。


「ハッ」


俺は右手の親指を下に向けた。

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