#067:露骨な(あるいは、水野兄弟)

「準備が整ったようです!! 今回はブース内でやると手狭なので、外のオープンスペースに対局場を用意させていただきました!!」


 オーソドックス黄緑実況少女(『池田リア』と申しますっ、とのこと)の進行で、僕らはこれまでと異なり、グラウンド内に設置された大掛かりな設備がある所まで案内を受ける。


 辺りを見渡してみると、午前中には20数個あったブースのあらかたは既に撤去されており、グラウンドの内野あたりにひとつ、外野のセンター付近にひとつ、鋼鉄の何やら物々しげな装置が鎮座していた。四方からのスポットライトに照らされたそれは、中心となる支点から、六方向に鋼鉄の脚が放射状に張り出している姿をしている。


 それらの脚の先端にはどうやら人が乗るらしき自転車のサドルのような座席+ペダル、およびその前にはCの字に曲がったハンドルが付けられていた。遊園地によくある、ぐるぐる回るアトラクションにエアロバイクを取り付けたような……。あれにチーム3人が乗り込むというわけですね。うん、まったくの想定外。


「な、なんじゃありゃああぁぁぁっ!!」


 想定通りの驚きの咆哮を上げる丸男だが、いやしかしこれはほんとに何なの。


「……こんなのはじめてー」


 アオナギも力無くそうつぶやくばかりで、もはやこの強引な展開は諦めている様子だ。


「ルール説明ですっ!! 各チーム3名全員、こちらの『エアロニカルバイクロッサ』に乗っていただきます。そして対局開始と同時にペダルを思いっきりこいでください。『平均時速15km以上』の時のみ、着手が可能となります」


 ええー、体力を使うの。この面子じゃ不利じゃないか。


「元老院だ。露骨に来やがったな」


 隣のアオナギがいまいましげにそう言う。いやあ考えすぎじゃあ。条件は相手も同じなんだし……と、装置の対面にいる相手チームを見やると、全員、サイクリングに適してます風の、ヘルメット、ウェア、プロテクターに身を包んでいたすらっとした御姿なのであったわけで。お、おう、露骨に来ましたなあ。


「着手ごとに評点がつけられるのは通常通りですが、今回はチーム戦であるため、『ボルティック』も3等分されます。ただし!右ハンドルに『請負ボタン』と呼ばれるものがあります! これを押し続けた分だけ、仲間のボルティックを自分に集め、引き受けることができます。うまく利用して、チームで乗り切ってください!」


 「請負ボタン」。使いたくない機能が何故ある? 今のところ用途不明だが、でも押した分だけ仲間に分配されるボタンが無くて良かった。そんなものあったら、僕の仲間2名は渾身の力で押し続けて来るはずだから。

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