終焉のファイナリスト
神崎 榎耶
始まり。
午後3時00分。
教室の窓の外に見える澄んだ空と、山を見てあくびを漏らす。
何も無い。いつもの日常。
英語の教師は、ひたすらに文法の解説をし、生徒は寝る者がいて、真剣に聞く者がいて、窓の外を眺める人もいる、そんな日常。
それはともかく、彼は眠たかった。
日々続く退屈な授業に。退屈な日常に。
彼は寝てしまった。
言い方に語弊があるかもしれない。
授業中に寝てしまうのはよくある事だ。
現代において、指摘するところではない。
だが、あえて言う。
彼は寝てしまった。
彼は知っていた。十分に理解していたはずだった。幸せの定義が曖昧であったとしても、終わりはこんな日常であるのだと。
***
「朝だよー起きてー!」
いったい朝からなんだ。いつもであったら、母さんが起こしに来ることは無いのに…。
ん?母さん?
今、俺に声をかけた人は間違いなく俺の知っている声ではない。
じぁ、誰だ?
あぁ。
夢なのだろう。
きっと、異性との恋愛関係をしばらく忌避していたがための欲求が、夢にまででてきたのだ。全く、頭の中がお花畑はごめんだぞ…。
俺は、夢から覚めたと考え、いつも通りドアを開け、洗面所へと向かった。
が。
足が重い。学校の身体測定では、痩せすぎでむしろ心配されていた腹が少し出ている。
なにより。
俺、誰だよ。
鏡を見た俺は、大人びた(童顔ではあるが)顔を見て第一に思った。
誰だよ、というのは現実逃避かもしれない。その顔は知っている。どんなにオシャレなどに興味がなかったとしても自分の顔を忘れた訳では無い。
そう、俺の顔なのだ。
正確には、俺が知っている顔の何年後、否、何十年後かの顔が鏡にうつっている。
問題なのはなんで俺が未来の俺であるのか。
これが彼、暁 瑞希がファイナリストに選ばれたことにきづく序章であった。
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