15話 期待に胸を躍らせて

「その船、泥舟じゃないといいな」


笑いながら、腰に手を当て踏ん反り返るリアに冷や水をさす。

すると、ムッとした顔を隠そうともせず、むしろ見せつけてくるように前屈みになりながら顔を近づけてきた。


「なんじゃアマネ、レベルの高い妾にみっともなくも嫉妬かの?妬んでもレベルは上がらんぞ?」


近づけられた顔に、少したじろぎながら念話をする。


『あんまり調子に乗ってると痛い目見るぞ』


『ふん、魔族は穢らわしい馬鹿だなんだと言ってる奴らが魔女である妾にぺこぺこする様は見ていて気分がよいのじゃ!』


『それもそうだな!』


結構ストレスが溜まっていたらしいリアの念話での発言に思わず即同意してしまう。

結局は似たもの同士なのだ。


3人で表明は他愛ない話をしながら、各部屋まで向かっていると前方から男子数名が腕組みしながら道を塞いでいる。

嫌な予感がしていると、大きい声でこちらに話しかけてきた。


「代音!」

「ちょーとツラ貸せよ」

「ケヒヒヒヒッ」


うわぁ、出たぁ…

と思ったのが顔に出ていたのか、3人組が苛立ちを浮かべる。


「てめぇ桜衣さんだけじゃなくリアちゃんに天音さんにまで手を出すなんて」

「ふざけてやがる」

「ブッコローブッコロー」


ああ、やっぱりリア達のファンね、それもかなり熱狂的な。

というか、なんか最後のやつだけおかしくない?

反応がキチってない?


「一応俺も普さんなんだけど?」


俺が俺に手を出せるわけなくない?

というニュアンスで煽ってみるとみるみる顔が真っ赤に染まっていった。

瞬間湯沸かし器かな?君たちは


「てっめぇ!ふざけてんじゃねぇよ」


1人が殴りかかろうと足を踏み出したが、リアと柚姫が前に立ち塞がった。


「ちょっと!いきなり殴ってこようとするとか何考えてんの⁈」


「仕置きが必要かの?」


俺を背に庇いながら果敢に男子3人に立ち向かう女子に守られる俺。

客観的にみてちょっと、情けないね。


「お前女子2人に守られて恥ずかしくねーのかよ!」

「ヘタレが!」

「おうちに帰ってママの背中にでも隠れてな!」


捨て台詞を吐きながら逃げていく3人を見送って、ホッと息をつく柚姫とフンッと息をつくリアという対照的な2人にお礼を言いながら帰路に着く。


「じゃあまた明日ね!明日頑張ろうね!」


「おう、また明日」


「楽しみにしてるのじゃ!」


女子と男子では部屋の階が違うため、階段の前で別れる。


そして、自分に割り当てられた部屋に入ると思考を巡らせる。

明日のダンジョン探索では何かが起こるだろう。

あちら側にとっては、使えない奴を手を汚さずに処分出来る良いチャンスだから。


「ああ、楽しみだ」


撒いた種が芽吹くまで、あと少し。

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